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トレインメッセージ

Message94:仕事をたくさん依頼される部下に。

掲出期間:2012.2.1〜2.29

洞口 光由 Mitsuyoshi Horaguchi
武蔵野大学 教授・キャリア開発部長

関西学院大学法学部卒業。
近畿日本鉄道(株)都ホテル東京、(株)ホテル西洋銀座取締役支配人、 (株)ロッテ「ロッテワールド東京」プロジェクト・ホテル担当ディレクター等を経て平成15年武蔵野大学准教授、平成20年よりキャリア開発部長。著書に「五つ星のサービス・マインド」、「日本のホテル新サービス産業革命 ―「和」のホスピタリティ論」など。

パーソナリティ:鈴木 美佳(武蔵野大学キャリア開発科目講師)

鈴木
大学での担当科目は?

洞口:
大学ではキャリア開発科目群の中で「ホスピタリティマインド概論・各論」を担当しています。「ホスピタリティ」という言葉はあまり馴染みのない言葉だと思いますが、大学でも未だ研究が浅い分野だと言えます。授業では、サービス産業の進化を経てホスピタリティ精神が問われるその理由と今後の発展を分かりやすく解説して講義を進めています。

鈴木
これまで築いてきたキャリアについて教えてください。

洞口:
大学卒業後、鉄道会社に入社し、ホテル部門に入りました。現在に至るきっかけは初めてホテルの仕事で「ドアマン」を担当したときのある経験です。

出立するお客様から「M社の車を呼んでください」というリクエストが多く、依頼通りM社の車を電話で呼んでいました。しかし、ホテル玄関にはホテルと同じグループのタクシーが並んでいます。M社タクシーばかりを電話で呼ぶことから待っている運転手に怒られました。企業側の論理で言えば同じ系列のタクシーを勧めるべきなのでしょうが、お客様が指定されることですから仕方がありません。そこでなぜ「M社タクシー」が指定されるのか、休日に町へ出て「M社タクシー」に乗ってみたのです。正に目から鱗でした。接客態度がタクシーとは思えないほど凄く良かったのです。「なる程、お客様は知っているのだなあ」と実感しました。この経験で「ゲストオリエンティッド」の重要性を認識したのです。

その後、大手流通グループ会社から「日本最高級ホテルのプロジェクト」へ、という誘いがあり最高級ホテルを創る絶好の機会を得ました。このプロジェクトが自分を変えたのです。現在こうして大学の仕事に携わっているのもこのホテルプロジェクトに参加し、開業後支配人としての実務を担当したことにあります。「スモールラグジュアリーホテル」としては日本最初のホテルでした。そのサービス内容は既存のホテルでは考えられないもので、例えば、お客様を玄関でお迎えする、と決めたのです。従って毎日玄関にルームキーを持って待たなければなりません。何時にどのようにホテルにやってくるのか?を事前に知らなければならないのです。予約を承る段階で、到着時間と、歩いてくるのか、タクシー、それともマイカーで、ということを尋ねなければなりません。他のホテルでは電話番号と名前で予約が取れるのに、面倒な事を強いる訳です。しかしこの拘りが大きな成果をもたらしました。「玄関で出迎えてくれるホテル」という評判が広まり、イメージ向上に繋がりました。

鈴木
今、サービス産業で求められていることは?

洞口:
景気の低迷が続く中、価格抑制のしわ寄せで人件費やサービスが削減され、サービス産業も質の劣化が言われ始めています。その中で、欧米の合理主義的なマニュアルサービスとは別に、心に響く、人との触れ合いを大切にする日本人の「おもてなし」が日本の観光資源として価値ある存在になっています。快いおもてなし(ホスピタリティ)でお迎えすることでお客様の心が癒され、「また訪れたいね」と思うのではないでしょうか。日本人はそうした期待に応え得る素晴らしい感性と心を持つ国民だと言えます。

鈴木
サービスの質を高めるポイントを教えてください。

洞口:
「スキル」ではなくて「マインド(心)」を重視することだと考えます。
昨年、米国金融専門誌が毎年行っている「世界のベストホテル」で第1位の栄冠に輝いたホテルが日本橋のMホテルでした。このホテルのスタッフからこんな言葉を聞きました。「お客様からの要望が年々増加し、忙しくなるばかりです。最近は外国人客に加え日本のお客様もリクエストが増えて多忙を極めています。重要なことは、たとえ素人的であったとしても一つひとつの要望に誠意をもって取り組むことです。」

このMホテルのスタッフの言葉が意味することは、ホテルの評価はハードウエアではなく、ヒューマンウエアにある、と明言している点です。お客様が依頼や質問に対してホテルスタッフに快く応対してほしいと思うのは当たり前です。Mホテルが今回世界No.1の栄冠を得た理由は正にスタッフが快く面倒な要望にも応じてくれるホテル、という噂が浸透されているからではないでしょうか。 

鈴木
グローバル化の中で多くの外国人が来日されるようになりましたが、今後どのようなサービスが求められるようになるのでしょうか?

洞口:
私はこれからのホテルは単に宿泊する機能だけを提供する時代ではない、と考えています。20年前に銀座に「国際エグゼクティブ」を主要ターゲットにしたホテルに携わったことがありますが、外国人ビジネス客のニーズは「ビジネスサポート」にありました。実際に開業前からゲストニーズを予測してホテルではコンセプトを「あなたのオフィスと、ご自宅の寛ぎを提供します」としました。それが的中しました。異国である日本に来た目的はビジネスです。従ってビジネスを成功させなければなりません。そのサポートをすることが最も喜ばれるサービスなのです。現在では「コンシェルジュ」という名称で多くのホテルが要望を承るようになりました。今後もし新たなホテルプロジェクトに携わる機会があれば、ぜひとも「ビジネスサポート」を拡充したスタイルのホテルを開業させたい、と思っています。グローバル化が進行すればするほど、ゲストニーズはビジネスサポートへとシフトします。日本のビジネス拠点がホテルに変わる時代がもうそこまで来ていると思います。 

鈴木
就職支援として学生に伝えていることは?

洞口:
「決してあきらめない、ネバーギブアップの精神が大事だ」と伝えています。本学では、4年間にわたってきめ細かな就職支援をしており、航空会社やホテルを志す学生には個別指導も行っています。

鈴木
卒業していく学生に、メッセージをお願いします。

洞口:
新卒に拘ることなく本当に目指す仕事に向けて卒業後も努力して欲しいです。
私の母は私が大学の先生になることを夢見ていました。私は大学院へ行くほど勉強をしていませんでしたので民間企業へ進みました。しかし、心のどこかで「もし機会があれば大学の先生になりたい」と思っていたことは確かです。その気持ちを持ち続けることでホテルビジネスに携わっていても、ホテルだけではなく周辺のサービス関連企業に対していろいろな課題を提案したり、サービスの考え方を講演することで自分自身の勉強に役立てたり、ホテル外の企業と幅広くお付き合いをするように心がけました。ホテルの新たなサービスプログラムを立案する努力も惜しみませんでした。常に広い視野をもって仕事に取り組むことで課題と改革意識は入社以来ずっと持ち続けていました。大学の教員になるまで約25年の歩みがありましたが、その長い歩みが実務経験として大学での教育と研究に大いに貢献していることは確かです。これからの社会は新卒採用時代から既卒が主流となることが十分推測されます。そして「職歴」即ち「キャリア」が問われる時代が到来していることを忘れてはなりません。「個の能力」が問われてきていることから、パソコンのスキルや英語力を高めることも必要です。

また、どんな仕事でも辛抱しながら精神力を養うことが大切です。どんな仕事も楽ではありません。辛抱することも若い時は率先して取り組んで欲しいです。私も電鉄会社でしたので入社直後には駅の勤務でした。駅の勤務は24時間交替制で厳しいものでした。しかし経験しなければ将来駅員さんの気持ちが理解できないことになります。下積みの大切さは「精神力」を養うことにあると思います。

そして、卒業時に、希望する会社や仕事に就けなくても決してあきらめず、中・長期的な展望を持ってください。そのためには、自分自身のキャリアプランを作成し、実践することです。ある経営者が言っていました。「わが社にはサラリーマンは要らない」と。この意味は企業にぶら下がる人材は要らない、ということです。企業は商品生命が短かくなってきていることから結果を直ぐに求めてきます。こうした企業に対して期待に応える人材にならなければならないのです。そのために「考える力」を養うことです。

また、どのような仕事に携わるにしても「石の上にも3年」と言われるとおり3年は辛抱するべきと考えます。ただし、本来希望する仕事に「既卒採用」で挑戦するのであればそれは是としますが。そして、仕事をたくさん依頼される部下になってください。それは上司から信頼されている証です。



キャリアレポート 先輩社会人からのメッセージ

笹木 好美 さん
[H20年度 武蔵野大学 社会福祉学科 卒業]
−航空会社勤務−

―現在、どのようなお仕事をなさっていますか?
国内線の客室乗務員として働いています。客室乗務員の仕事には飲食物提供や機内販売といったサービスだけでなく、緊急時の対応や急病人の処置といった保安要因としての役割もあり、安全を基本として業務を行っています。

―大学での印象的な授業または活動を1つ教えてください。
アメリカへの研修において、他学科・他学年の方と約1ヶ月間過ごすことで様々な考え方・目標を聞くことができ、よい経験になったと思います。

―大学で学んだことがどのように仕事に役立っていますか?
洞口先生のホスピタリティマインドで「設備などのハード面とホスピタリティとしてのソフト面で最大限のサービスが作り出せる」という考え方を学び、現在仕事をする上で常に考えながら仕事をしています。

―今の仕事のやりがいを教えてください。
お客様が「楽しかった」「ありがとう」と言ってくれたり笑顔を見せてくださったりした時は本当に嬉しく思います。短い時間の中で一人ひとりのお客様に接する時間は少ないですが、有意義で楽しく寛げるフライトにしていただきたいので、できる限りお客様と接する機会を作り、要望を聞きだしたり不安を取り除けるように努めています。

―将来はどのような仕事や活動を行っていきたいですか?
客室乗務員のスキルアップとして国際線乗務資格を取得したり、乗務以外の地上での勤務を任されるようになったとしても、お客様からも同僚からも接しやすく信頼される身近な存在でいたいと思っています。入社当時から「気さくで親しみやすい客室乗務員」を目標にしており、今もそれは変わっていません。サービスの知識だけでなく、様々な地域の知識や空港内の情報など+αの知識に対する学びも深めていきたいです。

―在学生に一言メッセージをお願いします。
現在学んでいることは将来に関係ないと思わずに一生懸命取り組んでほしいと思います。
接客業をする上で知識豊富なことはコミュニケーション能力にもつながります。また、何事にも全力で取り組む姿勢は大切だと思います。