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2021.02.01

新しいフィールド・スタディーズのかたち:オンライン実地体験授業2020年度1年生FS 「作陶における伝統の創造」【教養教育部会・小川桂一郎教授レポート】

2020年度フィールド・スタディーズ(FS)プログラムは、新型コロナウイルス感染予防のためにフィールドに出かける企画はすべて中止され、オンライン授業に変更されました。そのなかで、オンライン授業でありながら実地体験を実現したプログラムがあります。その一つが、化学者である私と陶芸家の伊藤麻沙人客員教授による「作陶における伝統の創造」です。

学生は自宅に送られた粘土と道具一式を使い、動画とテキストを見ながら器を製作。その器を伊藤先生がアトリエで素焼き、施釉、本焼きを経て完成させ、学生の自宅に返送しました。事前オンライン授業では、学生・教員の自己紹介と製作動画の補足説明を行ない、事後オンライン授業では、「陶磁史」(伊藤)と「陶芸の化学」(小川)の講義、および動画による各自の作品紹介を行いました。
 
対面での指導をまったく行わずに、作陶初心者(ほとんどが初めて)の学生がはたして形を作れるのだろうか。出来はともかく破損せずにアトリエまで届くのであろうか。途中で嫌になって放り出してしまう学生も出るのではないか。元の形を保ったまま本焼きを終えられるのがどのくらい残るのだろうか。私たちは、当初、そのような心配をしていました。しかし、これはまったくの杞憂でした。
 
学生全員が器を作り、一つも割れることなくアトリエに届きました。どの作品からも、学生の自由な発想と創作への情熱が感じられます。伊藤先生が事前授業で指示をしたのは、直径12 cm・高さ17 cm程度の簡素な花瓶ないしキャンドルスタンドを作ることでした。ところが、多くの学生がその指示を通り越して、自分の作りたいものを作り、個性溢れる作品を生み出しました。
撮影 - 伊藤麻沙人

経済学部経済学科1年 石井恭平 「縄文風土器」 撮影-伊藤麻沙人

経済学部経済学科1年 石井恭平 「縄文風土器」

文学部日本文学文化学科1年 宮脇英巳 「夏休みの痕跡2020」 撮影-伊藤麻沙人

文学部日本文学文化学科1年 宮脇英巳 「夏休みの痕跡2020」
このような面白い作品が生まれたのは、各自が自宅に閉じ籠もって制作に没入したからでしょう。もし、従来のようにアトリエに集まって制作をしていれば、時間の制限があるため自分の納得のゆくまで手を入れることはできません。また、学生は教員を頼り、教員も学生に過剰な注意をしがちになります。それは破綻のない作品を確実に作るためには必要ですが、今回のような面白い作品は生まれないのではないでしょうか。
 
事後オンライン授業では学生たちが動画で互いの陶器を鑑賞しました。個性溢れる作品に触れて、多くの学生が感動しました。それぞれが一人自分に向き合って作り上げる体験をしたからこそ、他者と深く分かり合える喜びのあることを知ったに違いありません。
 
ただ一人繰り返し動画を参考にしながら作陶することによって、学生たちは純粋に自らの内なる表現すべきものを発見し、自らの思索とものづくりへの興味を深めてくれました。その手ごたえを充分に確認することができたのは、指導に当たった私たちにとっても大きな喜びでした。

担当教員

小川桂一郎

小川桂一郎
教養教育部会 教授
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