数学を探せ!
「エネルギーで楽をする話」
自然は、可能であればエネルギーをできるだけ使わない状態、低エネルギー状態をとろうとすることが知られています。例えば、針金で作った丸い枠に石鹸で膜を張ってみましょう。水平にして横から見ると、重力で中心部が少し下がっていることに気がつきます。頑張って下がらないように引っ張っているのですが、あのくらいの姿勢が一番楽なのです。
板の両端をもって曲げてみましょう。緩やかなカーブを描いて全体が曲がります。一部分だけが大きく曲がるより、板にとってはそのほうが楽なのです。
これらをエネルギーとして考えてみましょう。ばねは、引っ張ると引っ張られた長さの2乗に比例してエネルギー(弾性エネルギー)が蓄えられます。板が板ばねだと考えると、変形するにつれてどんどんエネルギーが蓄えられていくことになります。このとき全体では一番エネルギー的に低い曲がり方をすることで「楽」な形に変形しようとしているのです。
さて、板を無理に曲げようとすると割れてしまう場合もあります。割れる際のき裂の入り方は様々ですが、なぜそのような割れ方をしたのでしょうか。割れる=切り離されると考えると、我慢しきれないくらい力がかかったために割れてしまうと考えることもできますが、板全体での割れ方を考えると、エネルギー的に低くなるように割れていくと考えることができます。このとき割れるためにエネルギーを必要とするので、シンプルに考えると、全体で
ところが、途中に割れづらい場所があったらどうなるでしょうか。その場所を通ろうとすると割れるときにたくさんのエネルギーが必要になるので、できるだけ迂回して割れていこうとします。皆さんもナッツの入ったクッキーなどを割ってみると確認することができます。エネルギー的に「楽」をしようとして割れた結果なのです。
これはどの領域の話か
数式を用いた解説
担当教員プロフィール
教授 高石 武史
1962年新潟県生まれ。材料にき裂がどのように生じるか、数理モデルを使って考えていますが、実際の様子を調べるためにはコンピュータでシミュレーションを行います。身の回りで面白いものを見つけたら、すぐに試して結果をグラフやCGにして見ることができるのがコンピュータシミュレーションの楽しいところです。高校までは物理や数学がどちらかというと得意かなという程度だったのですが、大学に入って数式で物理の様々な問題が解けるようになると、いろんなことに興味がわいてきました。研究以外でも、コンピュータとセンサーを使ったアプリを作ったり、簡単な電子工作で IoT 機器を作ったりしています。