
御手洗スタジオ 課題 1
「アリスの家」
数学者ルイス・キャロルによって描き出されている物語、「不思議の国のアリス」。その原理を深く読み込んでいく
と、この世界の本質には幾何学や物理現象をベースとしたダイナミズムが見え隠れしているように思えてならない。
冒頭のシーンでは、重力と時間と距離の相対的な関係によって世界を切り取ることを試み、アリスの身体が拡大・
縮小を繰り返すシーンでは、スケールと物質単位と機能の関係を炙り出している。さらに自己と他者といった思考
や扉を隔てた内外の境界の反転の描写は、世界を相対的に位置付けようとしているようにも見える。またストーリ
ーは過剰に断片化された多中心の世界として描かれ、その言葉の連なりが韻やリズムを踏むことで意味が漂白され、
構成自体の組み換えにまで迫っている。
私はここに建築の世界観を見ずにはいられないのである。さて、みなさんにはこの「不思議の国のアリス」を建築
的な視点で再読し、現実世界に新しく、豊かな建築を立ち上げてもらいたい。機能から解放され、物の原理から立
ち上がり、ダイナミズムに満ちた「アリスの家」である。そこには光が差し込み、風が抜け、暖かさがある。新た
に立ち上がる空間が、人間の生きる本質的な喜びを描き出していくことを期待している。
佐藤優月 中野宗壮
野澤沙帆 小松香穂
斎藤史菜乃 小林由芽
恒吉ののか 原佳央理
水谷スタジオ 課題 1
「空間創作 : ジギー・スターダスト」
「スーパースターの家」シリーズで 20 年(コロナ禍で 1 年飛ばしたので、今回が 19 課題目)続いたこの課題。
もともとこの課題のオリジナルは『わがスーパースターたちのいえ』 というコンペの課題である。2022 年までは、
スパースター(アーティスト)を対象としてきたが、昨年度からアーティストの作品自体を課題の素材としてい
る。新しい建築の可能性を提案してもらいたい。対象作品は、『The Rise And Fall Of Ziggy Stardust And The
Spiders From Mars( ジギー・スターダスト )』(デヴィッド・ボウイ)とするこの課題は、『ジギー・スターダスト』
を(“ 音楽→建築 ” という世界を通して)再解釈することにより、建築的な思考や概念を再構築し、それによって
創作し得る空間や建築は、どのようなかたちで表現することができるのか、時間や空間を超えた構想力豊かな新し
い建築提案を期待している。
伊藤尚輝 清水優太
白石大翔 梅田皓亮
久保池祐朱
高野泰地 竹田結
Mu No.21 2024
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Mu No.21 2024
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