学問の地平から
教員が語る、研究の最前線
第23回 政治学・アメリカ政治
本学の教員は、教育者であると同時に、第一線で活躍する研究者でもあります。本企画では、多彩な教員陣へのインタビューをもとに、最新の研究と各分野の魅力を紹介していきます。
第23回 政治学・アメリカ政治法学部 政治学科 杉野 綾子 准教授
アメリカの大統領権限と政策実現過程を追う
今後の展望
アメリカ政治の変化を捉えて現実に生かす
ご存知の通り、アメリカは4年ごとに大統領選挙があり、そのたびに政治が大きく変化します。「候補者が違うだけで、民主党と共和党の候補者が争うのは毎回同じでしょう?」と思う方もいるかもしれませんが、政党の性格や支持者の層はどんどん変化しており、研究者として大統領選挙には毎回違う難しさと面白みを感じています。その変化を捉えながらその時々のアメリカ政治、エネルギー・環境政策の研究に取り組み、日本企業や官公庁の活動に役立つ研究をしていきたいと考えています。

アメリカは長きにわたり国際社会で存在感を持ち続ける国です。しかし昨今、中国の台頭などによって相対的に国力が低下し、内向きの国になりつつあります。アメリカが今後、国際社会の中でどのようなポジションになっていくのか、研究を深めていきたいと思っています。
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教育
人間関係があるところには政治がある
政治学と聞くと、「難しそう」と感じる学生が多いようです。確かに、新聞の政治欄を読むと、過去からの経緯を知らないと理解できない複雑な問題が多いですが、国会で行われていることだけが政治ではありません。政治は私たち一人ひとりにとって身近なもので、人間関係の中で意見や利害の対立があれば、そこにはすでに政治が存在します。たとえば、幼稚園児が外で元気に遊ぶ声を聞いて「にぎやかで地域が明るくなる。どんどん外遊びをさせるべきだ」と考える人と「うるさいから外遊びをやめさせてほしい」と訴える人がいれば、それはもう地域の“政治問題”です。上司と部下でも、学校の友達同士でも、人間関係のあるところに政治はあります。特に1、2年生の授業では、そうした政治学の間口の広さや面白さを伝えるように努めています。
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もう一つ、学生に伝えたいと思っているのは「とにかく仕事は面白い」ということ。授業で自分の専門であるアメリカ政治の話をする時は、たぶん喜々として話しているのですが、そんなところから研究(仕事)を楽しんでいるんだな、と感じてもらえればと思っています。学生は「やっぱり大学の先生って変わってるな」と引いているかもしれませんが…(笑)。仕事を始めて、はじめはあまり興味が持てない業務でも「やってみたら新しい発見があって意外と楽しい」と感じた経験がある方は多いのではないでしょうか。授業を通じて学生に「政治って何がそんなに面白いんだろう」と興味をもってもらい、さらには授業の課題やレポートで「やってみたら案外楽しかったな」と感じる経験をして仕事を前向きに面白がる社会人になってほしいと思っています。
人となり
シンクタンク勤務から学究の道へ
私が政治学の道に進んだのは子どものころに天安門事件や冷戦終結をテレビで見て、何かすごいものを見たと感じたのがきっかけです。そこから社会科の勉強がとにかく好きになり、ずっとこれを勉強したいという一心で大学では政治学を専攻しました。大学卒業後、エネルギー問題を研究するシンクタンクに勤務し、そこでアメリカの調査を任されたことが現在の研究の出発点です。

シンクタンクでは企業や官公庁のお客様からよく「アメリカはこの先どうなるか」という予測を求められました。ただ、当時は日々アメリカのニュースを追うだけで精一杯。先のことまでは自信を持って回答できないこともありました。どうすればいいか悩みましたが、アメリカの政治の仕組みを理解すれば少なくとも「この先起こらないこと」は分かるようになるだろうと考え、働きながら大学院の博士課程で学びを深めることに決めました。

博士論文の執筆を進めながらどんどん細かいところへ、またその背後にある歴史的経緯や思想へと政治の仕組みをきちんと理解すると、ニュースを見て重要な内容かそうでないかの判断が早くなり、仕事の効率や処理速度が格段に上がりました。社会人のみなさんには仕事に行き詰まったら、ぜひ大学や大学院での学び直しをおすすめします。すごく良い経験になると思いますよ。
ハマり続けているアラ汁作り
前の職場が築地市場の目の前だったので、何年も前から魚のアラ汁作りにハマっています。アラはめちゃくちゃ優秀な食材で、魚屋さんでちょっと買い物をするとおまけでくれたりするし、アラだけを買っても一袋100円ぐらいですよね。あとはネギさえあればアラ汁が作れて簡単でおいしい。アラ汁作りのコツはお湯を先に沸騰させておいて、アラを少しずつ入れることです。そうすると生臭くならないんですよ。

私はアラの中でも中骨のアラ汁が好きなので、魚屋さんやデパートの鮮魚売り場に行くとどんなアラがあるかチェックして中骨のアラが多いお店を選んで買っています。今までいろいろな魚でアラ汁を試して2種類の魚を組み合わせてみたりもしたのですが、一番好きなのはやっぱり鯛のアラ汁。ヒラマサもおいしかったですね。それにハマグリを入れたらもう最高です(笑)。
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―読者へのメッセージ―
学生時代は大人から「卒業後の進路のこと、自分が何に興味があってどんな仕事がしたいのか、そのために何をしておくべきかはよく考えなさい。4年間は短いよ。」と、散々言われた記憶があります。しかし振り返ってみると全然計画性が無く、「なにこれ、面白い!」と思えることがあれば本を読んで詳しそうな人にいきなり電話して話を聞きに行き、満足したら「次いこ、次!」という感じでした。ある意味図太かったわけですけれど、今度はそういう学生の図太さに振り回されることを楽しんでいきたいと思っています。
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取材日:2022年5月