学問の地平から
教員が語る、研究の最前線
第3回 刑法学
本学の教員は、教育者であると同時に、各分野の第一線で活躍する研究者でもあります。このシリーズでは、多彩な教員陣へのインタビューをもとに、最新の研究とその分野の魅力を紹介していきます。
第3回 法学部法律学科 林 弘正 教授
新たな社会的課題へのアプローチを通して、刑法学の領域を拡大
研究者としてのあゆみ
タテではなく、ヨコの世界を目指して
私の場合、他の先生方のように、子どもの頃から研究者を志していたわけではありません。もとを辿れば、親の影響というものは確かにありましたが、親と違う道に進みたいという少々ネガティブな理由と社会に貢献したいとの願いがありました。
私の父はサラリーマンだったのですが、常にタテのプレッシャーにさらされて、苦労をしているようでした。そこで、弁護士など法律の世界であれば、企業のタテ社会に比べればだいぶフラットであろうと考えて、中央大学の法学部に進学したのです。
しかし、学部の2年次に自主ゼミと出会ったことで、司法試験受験という道から、研究者の道にシフトすることになります。博士課程の先輩が、学部生10名くらいを指導してくれるのですが、ここでの学びが楽しく、留年して6年も在籍しました。
当時は授業料が年間3万円と格安だったからできたことです。講義には出席するものの、卒業要件を満たさないよう「単位を付けないでください」と先生に頭を下げる、変わった学生でした。
法を司るとされた古代中国の伝説の動物「獬(カイ)」。著作の挿絵にも用いている

法を司るとされた古代中国の伝説の動物「獬(カイ)」。
著作の挿絵にも用いている

42歳で専任教員に
その後、修士課程、博士課程を経て、大学で専任ポストを得たのは42歳になってからです。当時は、学部修了後にすぐに助手になるケースもありましたから、研究者としてはかなり遅咲きです。
ただ、自主ゼミ終了後もマンツーマンで指導してくださった研究者の先輩から、ストレートに専任教員になるパターンではない場合、いわば「苦節10年の道」の心構えというものを教え込まれていましたので、挫折せずに乗り切ることができました。それは、「自分の能力に自信を持つこと」、「経済的基盤を確立すること」の2つです。大学の非常勤講師として研究と教育に携わることで前者の、個人で塾を運営することで後者の課題を乗り越えることができました。
また、研究に傾注しつつも、他に楽しみを持っていたことも、苦しい時代をうまく乗り切れた理由だと思っています。陶芸、染織、漆芸などの美術の世界、寺社仏閣、お茶、日本酒など、様々なことに興味を持ち、専任教員になって研究と教育、学事に追われるようになってからも、続けています。
研究室の来訪者には、自らお茶を点てる

研究室の来訪者には、自らお茶を点てる

今後の展望
研究成果を教育にフィードバック
今年度いっぱいで定年を迎えますが、今の研究テーマを追い続けるとともに、その成果をきちんと教育にフィードバックし続けていきたいと考えています。
これまでは、ある程度の年齢になると、新たな論文を書くことなく、教育にシフトするようなスタイルもまま見られました。しかし、私は継続的に新しいテーマに取り組み、得た知見や刺激を自分の学生に還元していくということに、愚直に取り組んできたつもりです。
例えば、裁判員裁判に関しては、学生全員に傍聴とレポートを課しました。それにより、単に法律的な学びを深めるだけではなく、いつ裁判員に選任されるかわからないという実感や法律を学んだ者としての心構えを持ってもらうことができました。
これからも、従来の研究テーマや、この7年来研究している先端医療と刑事法の交錯領域についての研究を続けつつ、教育にも還元していきたいと思います。
道を示してくれた恩師の著作

道を示してくれた恩師の著作

読者へのメッセージ
私は、研究者人生において、研究のニーズや必要性といったことではなく、あくまで「自分の問題意識」を追い続け、そこで見出した課題を世に問うということを繰り返してきました。
そうすると、分野横断で知見が広がり、ネットワークができ、そこから次の「問題意識」が生まれてきます。
そうして現実に生起する社会の課題に向き合い、研究を進めれば進めるほど、多くの矛盾に直面し、ただ一つの正解などないということを実感させられます。
しかしながら、そこで矛盾を自覚しつつ、一方で考えることをやめないことが、研究者だけではなく、社会を生きる私たちに必要なことではないかと考えます。
世の多くの人に、「自分の問題意識」に向き合い続けることの価値を認識していただけたら幸いです。
林 弘正 教授
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