学問の地平から
教員が語る、研究の最前線
第5回 経済学
本学の教員は、教育者であると同時に、各分野の第一線で活躍する研究者でもあります。このシリーズでは、多彩な教員陣へのインタビューをもとに、最新の研究とその分野の魅力を紹介していきます。
第5回 経済学 経済学部経済学科 田中茉莉子 准教授
経済学者としての知的好奇心を追求し、新たな分野を開拓
研究者としてのあゆみ
金融危機への疑問から、経済学の道へ
もともと、小中学生の頃から、社会に対する関心の高い子どもでした。父が銀行に勤めており、仕事のことや関連する世の中の動きを、家でよく話してくれた影響だと思います。
その社会全般への興味が、特に経済という分野に向けられたのは、中学3年生の時期です。当時、日本は金融危機の渦中にあり、北海道拓殖銀行や山一證券の破綻のニュースが、テレビで繰り返し報じられていました。山一證券の社長の会見など、今も強く印象に残っています。父と同じ業界の出来事でしたので、「みんな一生懸命働いているのに、どうしてこんなことになってしまうのだろうか」という疑問が、経済学を志すきっかけになりました。
その後、大学に入学したのとほぼ時を同じくして小泉政権が誕生し、今度は構造改革というキーワードが世の中を席巻しました。その時代に大学時代の前半を過ごしたことが、経済学の中でも、経済政策という分野を意識するきっかけになったと思います。
金融危機への疑問から、経済学の道へ

株式や債券の話題が身近な環境で、社会への関心が育まれた

数学的な面白さに魅了される
ただ、研究を仕事としたいという漠然としたイメージはあったと思いますが、明確に研究者を志望して大学に進んだわけではありませんでした。具体的に進路として意識したのは、学部時代にゼミに所属してからです。非常に自由な雰囲気の中で、先輩たちが活発に議論を交わしている、そんな環境に惹かれて、経済学研究をライフワークにすることを決めました。
子どもの頃から、わからないことを知りたい、興味のあることを追求したいという性格だったためか、学部・大学院時代も様々なテーマに取り組みました。加えて、経済学の数学的な側面にも興味があったようで、サーチ理論や世代重複モデルといった新しい分析手法を取り入れ、自分の研究テーマに活用したいと考えていました。
大学院修了後は、日本政策投資銀行設備投資研究所で非常勤研究員として企業の流動性や資金調達の研究をしたり、東京大学の特任研究員や学術支援専門職員(Research Associate)として通貨や経済成長の研究に取り組んだり、今につながる経験を積むことができました。
日本政策投資銀行設備投資研究所 非常勤研究員時代の論文(のちに改訂したもの)

日本政策投資銀行設備投資研究所 非常勤研究員時代の論文(のちに改訂したもの)

今後の展望
政策形成の基礎となる先行研究を
マクロ経済学の研究をしていて面白いと感じるところは、経済というものが、単純に私たちの活動を拡大したものにはならないというところです。一人だけの人生なら、それまでの歩みやその人の考え方、方向性がわかれば、ある程度は予想がつくかもしれません。しかし、大勢の人や組織が関係すればするほど、予測は困難となり、予期しないことが起こります。
その前提に立ちながらも、これからの日本経済や国際経済がどうなるのだろうという原点の疑問に対し、素直に研究を進めていきたいと思います。当面は、現在のテーマを基礎として、どうすれば経済成長を実現することが可能なのかということ、統合の可能性も含めたアジア地域の通貨の動向、この2つを追いかけていくつもりです。政策の提言ということはあまり考えていませんが、政策形成の基礎となるような先行研究を、いくつか形にできればと考えています。
また、学生を育てるということにも、より力を入れていきたいと思っています。ゼミの学生との議論は楽しいですし、経済学に興味を持って主体的に学んでくれるようになると、本当にうれしいですね。
ゼミの学生たちと

ゼミの学生たちと

読者へのメッセージ
経済学、特にマクロ経済学の場合、お話が抽象的になってしまいがちで、親しみを抱いていただくのが難しい面があります。
しかし、経済というものを非常にシンプルに考えれば、私たち一人ひとりの活動が全体に影響を与え、それが私たちの暮らしや仕事など日常に戻ってきているという、一連の流れだということができます。
急速な技術革新が進む現代、AIやビッグデータをはじめ、具体的なイメージを掴みにくい言葉が飛び交っています。しかし、それらが日常にどう関わり、逆に日常がそれらの技術開発にどう影響を与えているのかという視点で捉えていただくと、面白いのではないでしょうか。
また、経済学は、一つの答えを提供してくれるものではありません。前提や条件が異なれば、分析の結果も異なってきます。まず基準を立て、そして分析するというアプローチは、情報があふれ選択肢の多さに困るようなこの現在の社会にこそ、必要な考え方であると思います。ぜひ、身近な関心や疑問を入り口に、経済学の価値に目を向けていただけたら幸いです。(※4)
田中茉莉子 准教授
取材時(2017年12月)から掲載(2018年5月)までの期間に、下記の追加情報がありました。

(※4)「夢ナビライブ2018」という高校生対象の進学イベントにおいて今年7月に講義ライブを実施予定です。
 ・タイトル:「少子高齢化でも日本が繁栄するための秘策」
  日本の経済成長における教育およびリカレント教育の役割について、30分の講義を行う予定です。
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