2011年に明治大学でスタートした国際総合研究所は本年4月1日より長期的な発展の礎を有明の武蔵野大学に置き活動を行っていくことといたしました。その設立の問題意識・精神、主要メンバー、研究活動の内容などを継承し、発展させていくこととしています。具体的には、次のようなことを考えつつ運営していきたいと考えています。
前世紀の後半から加速度的に進行した技術革新とグローバリゼーションは、世界の経済秩序・安全保障秩序を大きく変えてきました。それは多くの国において急速な経済的繁栄をもたらすとともに、金融リスクの巨大化、エネルギー消費の急拡大、経済格差の増大、技術と制度の不整合、社会保障の負担と給付の不均衡などの不安定化要因も拡大させました。安全保障面では、冷戦を終結させると同時に、地域紛争、テロ、内戦の危機を引き起こし、大量破壊兵器の拡散やサイバーテロのような新たな問題を生じさせています。
その中にあって、世界が持続可能な成長を通じ平和と繁栄を享受するためには、さまざまな経済リスクの制御、外交・安全保障環境の安定化、更なる技術革新とその制御、グローバルな企業経営の規律などの諸問題の解決策を見つけていくことが必要であります。これらの諸課題は、日本を含め各国各々が解決に向かって努力することが必要な領域であるとともに、国の枠組みを超えての知恵の結集が切望されている課題でもあります。
他方日本は、ようやく1990年以降の経済の停滞からは脱却しつつあるものの、世界第3位の経済大国でありながら、経済活動、知的交流を含む多くの分野において、それにふさわしい世界への貢献の形を確立できたとは言えません。
今後、ますますGlobal化が進む世界において、孤立化を避け、経済的・知的に世界の有力な一翼を担い続けるためには、日本と世界との交流を活発化するための基盤を強化することが不可欠であります。日本がまだ魅力的と評価されるところがあるこの時期に、日本において世界的な諸課題について世界の研究者、実務者とともに考え発信していく場を作る緊要性はきわめて大きいと思っています。
本研究所では、世界経済、外交・安全保障、社会保障、技術革新、コーポレートガバナンスの分野で先進国のみならず、アジア・太平洋・中東の新興国、途上国の実務家・研究者をとともに、今われわれの直面する世界では何が問題なのか、国際社会としてどう向き合っていけば良いのかを考えていく場を提供できればと思っています。
国際総合研究所長
林 良造