トップ 一般の相談 一般相談のご案内

一般相談部門では、おおむね10代前半からシニア世代まで、はば広い年代の皆様を対象とした心の相談に取り組んでおります。1999年に開設され、多くの皆様にご利用いただいている相談室です。
 
一般相談部門の相談の柱は、大きく分けて2つあります。

一般相談部門における心の相談

心身の不調や不登校、ひきこもり、性格の悩み、学業や仕事関係の悩み、対人関係や家庭生活の悩み、発達に関する問題など、様々な心の相談をお受けしております。
 
詳しくは、下にございます「ご相談内容」中の ① 一般相談部門における心の相談 をご覧ください。

その他のご相談

犯罪被害、事故、災害など、被害にあわれた方のご相談、恐ろしい目にあい、心に傷を負われた、身近な方を亡くされた、など、トラウマ(心の傷)に関する専門的な相談機関です。
 
詳しくは、下にございます ご相談内容・②~⑤ をご参考になさってください。
ひとりで抱えこまず、どうぞご相談ください。
心の問題は一人ひとり違い、進むべき道も1つではありません。私たちはそれぞれの方の感じ方、考え方を大切にして、相談を進めてまいります。また、ご家族や身近な方からのご相談もお受けします。秘密は厳守します。


ご相談内容

①一般相談部門における心の相談

一般相談部門における心の相談

一般相談部門では、おおむね10代前半からシニア世代まで、幅広い年代の皆様の心のご相談に取り組んでおります。心身の悩みや困りごとを人に話すのは、恥ずかしい気持ちがしたり、不安を感じたりすることがあります。また、誰にも相談できない、どうせわかってもらえない、と思うこともあるかも知れません。私たちは、おひとりおひとりの悩みや苦しみに寄り添い、ともに考え、より良い方向へ向かうことを目指します。

<ご相談内容の例>

  • 眠れない
  • 心配や不安が強い
  • 気分が沈む
  • 無気力
  • イライラする
  • 人の目が気になる
  • 過食や拒食
  • こだわりが強い
  • 潔癖症
  • 不登校
  • いじめ
  • ひきこもり
  • 家庭内暴力
  • 気になるクセ(チック、髪の毛を抜く、爪かみなど)
  • 性格の悩み
  • 人間関係の悩み
  • 学業や仕事の問題
  • 異性関係や夫婦関係の悩み
  • 結婚や子育て
  • 親子関係など家庭についての悩み
  • 将来への不安
  • 老後の不安など
*このほかにも、様々なご相談をお受けしております。また、親子面接や夫婦面接、学校の先生からのご相談などもお受けしております。

<援助の方法>

  • 対話によるカウンセリング
  • 認知行動療法
  • 箱庭・描画などの芸術療法
  • 支持的心理療法
  • 力動的心理療法
 など
②被害者・被災者・遺族とのカウンセリング

被害者・被災者・遺族とのカウンセリング

武蔵野大学心理臨床センターでは、被害などによるトラウマの影響に注目した治療法(たとえばPE療法)ばかりではなく、話し合いを中心としたカウンセリングを行っております。

事故や災害にあった、人から傷つけられた、恐ろしい目にあった、身近な人を突然失った…など、大きなショックを受けた後には次のようなことが起こってくることがあります。そして、それまで信頼していた友人や家族に話をしても、わかってくれない、かえって傷つけられた、というようになってしまうことも少なくありません。
  • その時のことが頭から離れない
  • 突然その時の光景がよみがえる
  • 家族や友人などとの付き合いがわずらわしい
  • ショックのあまり、何も感じない
  • 外出がこわい
  • 眠れない・食事ができない
  • 自分を責めてばかりいる
  • そのことばかり考えて、何も手につかない
  • 生きる意味を失った
被害者・被災者・遺族とのカウンセリングでは、まず、その出来事が起きたことによって、上記のような状態になることが自然なことであり、それらは時間とともに変化していくことをお伝えしていきます。そして、それぞれの方のペースにあった、自然な回復を手助けできるよう、じっくりとお話をうかがっていきます。また、相談に来られる方の中には、被害を受けたということの直接的な影響のみならず、被害をきっかけとして、その方ご自身が長年かかえてきた心の課題や、生きづらさがあらわになってしまい、困っておられるような場合も少なくありません。

何らかの被害をきっかけとして、対人関係や家庭内の問題、心身の悩み、将来についての不安、仕事や学校になじめない、などが表れてしまったような場合であっても、カウンセリングによって被害のことを忘れ去ることはできませんし、被害の前と全く同じ状態に戻ることもできません。しかし、カウンセリングによって、それまでその方が抱えてこられていた課題と向き合い、被害という視点にとどまらない回復や、さらなる発展的な心の成長につながる場合もあります。

何を目標に、カウンセリングを進めていくかは、相談にいらした方と、よく話し合ってから決めていきます。また、カウンセリングはどなたにも有効な方法とは限らず、状態によってはかえって具合が悪くなるなど、避けたほうが良い場合もあります。

このため、武蔵野大学心理臨床センターの一般部門では、まずお電話でご相談の概要をお伺いして、当センターがお役に立てそうかどうかを事前に検討させていただいた上で、ご予約を承っております。カウンセリングをご希望の方は、まずはどうぞお電話をください。
③トラウマ

トラウマ

「私にはこういうトラウマがある」というように、ある人が自分からトラウマという言葉を使うことがあります。そういうときには何か大きなストレスフルな出来事が過去にあって、それが現在に影響を及ぼしているというような意味で使われています。「小学生のときに失敗したのがトラウマになって」とか「その話は私にとってはトラウマなの」とか。後者の場合には、今も傷ついているためにそのことについて話したくない、という意味もこめられているようです。

では、大きなストレスのことをトラウマと呼ぶと考えればいいのでしょうか。

本当はトラウマとは、単なる「ストレス」とは意味が違うのです。日本語に訳せば、トラウマは「心的外傷(心の傷)」です。では心の傷とは何なのか。それを定義するのは、実は難しいことです。

交通事故で息子さんを亡くされたお母さんが自分の心の状態について話をして下さったことがあります。その方は、白い紙をクシャクシャに丸めて手のひらの上におき、自分の気持ちは、この紙のようなものだ、と言われました。紙の形ははじめとはまるっきり変わってしまいました。手の上に静かに置いていると、クシャクシャにした紙も少しずつはもとに戻ろうとしています。でも、急に広げてしまうと紙は破れてしまいます。そして、自分が息子を亡くしてから何年もずっとその状態が続いているのだ、とそのお母さんは言われました。

クシャクシャにした紙、それにはどういう意味がこめられているのでしょうか。

丸められたことによって紙の状態は目茶苦茶になってしまったわけです。文字を書いたり何かを包んだりすることができなくなって、紙の機能を果たせなくなってしまっています。さらに、クシャクシャになった紙というのは、どんなに丁寧に広げても折り目が消えることはありません。そうっと広げて何とかもとに戻そうと思っても、二度と戻ることのない傷が残ります。完全にはもとに戻らない不可逆性はトラウマの一つの特徴です。たとえば、子どもを事故で亡くした場合、子どもが生き返ることはないわけですから二度ともとに戻ることはない。あるいは、事故にあった場合、恐怖の経験をしたという事実は二度と消え去ることはないのです。

一言でトラウマを定義するのは実は難しいのですが、人間の対処能力を超えた出来事を経験して、それを経験したあとにいろいろな心身の不調が持続的にあらわれる状況と考えることもあります。

トラウマの精神医学的定義

トラウマについて現在よく使われている精神医学的定義は、米国精神医学会が作成する『精神疾患の診断・統計マニュアル』(Diagnostic and Statistical Manual: DSM)によるトラウマの定義だと思います。現在、この診断基準では、次の出来事の質の定義を満たすものがトラウマとされています。

そこでの記述には「実際にまたは危うく死ぬ、重症を負う、性的暴力を受ける出来事への、以下のいずれか1つ(またはそれ以上)の形による曝露」と定義されています。実際に誰かが死んでしまうか生命の危険を感じること、深刻な怪我、性的暴行がトラウマ的な出来事です。曝露とは、体験することを意味します。『診断・統計マニュアル』では、トラウマ的な出来事とその体験について特定されています。それが以下の4つです。
  1. 心的外傷的出来事を直接体験する。
  2. 他人に起こった出来事を直に体験する。
  3. 近親者または親しい友人に起こった心的外傷的出来事を耳にする。家族または友人が実際に死んだ出来事または危うく死にそうになった出来事の場合、それは暴力的なものまたは偶発的なものでなくてはならない。
  4. 心的外傷的出来事の強い不快感をいだく細部に、繰り返しまたは極端に暴露される体験をする(例:遺体を収集する緊急対応要員、児童虐待の詳細に繰り返し暴露される警官)。
これらの説明を見てすんなりと理解できる人はたぶんいないでしょう。つまり、生命の危険、重症を負うようなこと、性的暴力を一度でも直接体験したか、目撃したか、あるいは目撃していなくとも間接的に体験した場合をトラウマと定義しています。注意事項として(4)は、仕事に関連するものでない限り、電子媒体、テレビ、映像、または写真による暴露には適用されないと定義されています。たとえば、一視聴者としてテレビの映像を通じて繰り返し体験した場合には適用されないことになります。

実は、トラウマの定義は『診断・統計マニュアル』が版を改める度に変えられてきました。それだけ議論が行われている難しい問題なのです。
『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)は、それまで精神疾患の診断や呼称が学派や医師によってさまざまだった状況を是正するため、アメリカ精神医学会によって1980年に初めて制定されました。以来6回にわたって改訂され、最新の第五版のDSM-5は2013年に改定されたものです。前の版であるDSM-IV-TRでは、トラウマ的な出来事の定義に恐れ、絶望感、恐怖といった体験する側の主観的な感情が体験に伴っていることが必要とされていました。

トラウマとなる出来事

ではどういう出来事が実際にトラウマとなるのでしょう。トラウマをもたらすような出来事の特徴をあげてみましょう。
  1. 出来事が予測不能であること。予測できればそなえることができます。しかしトラウマとなるような出来事は、不意にやってく るし、そのあとどうなっていくかという見通しも立ちません。
  2. コントロールができないこと。自分の力では事態を操ることができません。圧倒的な出来事のなかで自分で対応できる余地はほとんどないことが普通です。
  3. 起こっている出来事が非常に残虐なものであったり、グロテスクなものであったりすること。図らずも死体や死体の一部を目にしてしまうことなどです。
  4. 自分が愛している人や大事にしている何かを失うこと。すなわち対象の喪失が起こることです。
  5. 暴力的な出来事。これは特にトラウマをもたらしやすいことがあげられます。
  6. その出来事によって起こってくる結果に対して、実際に自分に責任があると思われたり、あるいは、主観的に責任があるとどうしても感じられたりすること。
おもにこういったことがトラウマをもたらすような出来事の特徴であるといえます。
では、具体的に出来事の種類を考えてみましょう。

自然災害(地震や、台風や、洪水、竜巻など)
人為災害(航空機事故、鉄道事故、交通事故など)

このような体験は自分では予測不能であるし、事態を変えると言っても自分ではどうすることもできません。実際に生命の危険があり、残酷な場面を目撃することがあります。大事な人たちがたくさん亡くなることもあるし、自分が助けられなかった、あるいは、自分だけが助かってしまった、ということに強く責任を感じる事態もよく起こります。たとえば、阪神・淡路大震災のときに、家族と一緒に生き埋めになった人たちは、自分が家族を助けられなかったこと、あるいは、自分だけが助かってしまったことについて、今にいたるまで罪悪感を感じていると思われます。

生命に関わる大ケガ

大災害でなくても、家庭のなかで起こった事故、たとえば、沸き立ったヤカンをひっくり返して生命に関わる大ヤケドをした、といったこともトラウマの原因になり得ます。

毒物を用いた犯罪や毒物による事故の被害

松本と東京のサリン事件、和歌山の毒物カレー事件、このような犯罪の被害もトラウマ体験となり得ます。

暴力的な犯罪被害
誘拐、捕虜、監禁の体験

襲われたり、ナイフで脅されたり、からだを傷つけられたり、といった暴力犯罪の被害や、強姦や強姦未遂などの性暴力の被害、誘拐・捕虜・監禁の体験もトラウマとなり得ます。

児童虐待の被害

虐待は、現在、身体的虐待、性的虐待、ネグレクト(子どもの世話を放薬したり、子どもの感情を無視したりすること)、心理的虐待の四種類に分類されていますが、そのすべてがトラウマの体験となり得ます。

戦闘体験

実は米国における戦闘体験とその精神的後遺症の研究が、現在のトラウマ研究の基礎をつくったのです。ベトナム戦争の前線で戦った兵士の約15%にPTSDが起こったといわれています。

親しい人の突然の予期せぬ暴力的な死

犯罪事件で家族を殺されること、あるいは、交通事故やさまざまな事故で突然亡くすことなどもトラウマ体験となり得ます。
トラウマの原因となる出来事は身のまわりにかなりたくさんあるように見えます。しかし、普段の生活のなかで起こるストレスは、現在は医学的にはトラウマとは呼びません。たとえば、離婚したり、病気で家族を失ったり、失業したり、といった大きなストレスを多くの人が体験しますが、これらはトラウマとなるような出来事の範囲には含まれないということになります。
(小西聖子)
④自殺・事件・事故 遺族

自殺・事件・事故 遺族

愛する人を失った時

身近な人の死は多くの人が体験するものです。大人になっても親族や知人の葬式に一度も出たことがない人は稀でしょう。だから多くの人は、人を失う苦しみがどのようなものか自分も知っていると思っています。ここに多くの誤解が生まれます。

喪失に伴って起こる心理的過程を悲嘆(grief  グリーフ)といいます。悲嘆は流れをもった変化の過程です。流れの順序や期間に個人差がありますが、死を認めまいと心が麻痺する状態、亡くなった人に対してさまざまな感情を抱く状態、混乱と絶望の状態といった複雑な状態を経て、半年前後で落ち着くと言われています。

ところが、予期しない突然の喪失体験は人に深く打撃を与えます。ある人を失うことによって受ける打撃は、その失い方や、生前の関係や、その後の状態などによっても大きく違うのです。

悲嘆の反応は、大切な人を失った時には誰にでも起こるものですが、これまでに行われてきた悲嘆の心理の研究では、次のような時に悲嘆は深刻化したり長期化したりするといわれています。
  • 亡くなった人に強い愛情を持っていた。
  • 亡くなった人に強く依存していた。
  • 亡くなった人に対して怒りと愛情が相半ばしていた。
  • 若い人が亡くなった。
  • 同時に二人以上の人が亡くなった。
  • 突然の予期せぬ死亡だった。
  • 他の人の故意によって、あるいは悪意によって亡くなった。
  • 社会的に嘆くことが認められない亡くなり方であった。
  • 自殺の後の生活がストレスが多く大変である。
  • 自殺の後のサポートが得られない。

大事な人を自殺・事件・事故で亡くしたとき

身近な人の死は多くの人が体験するものです。大人になっても親族や知人の葬式に一度も出たことがない人は稀でしょう。だから多くの人は、人を失う苦しみがどのようなものか自分も知っていると思っています。ここに多くの誤解が生まれます。

喪失に伴って起こる心理的過程を悲嘆(grief  グリーフ)といいます。悲嘆は流れをもった変化の過程です。流れの順序や期間に個人差がありますが、死を認めまいと心が麻痺する状態、亡くなった人に対してさまざまな感情を抱く状態、混乱と絶望の状態といった複雑な状態を経て、半年前後で落ち着くと言われています。

ところが、予期しない突然の喪失体験は人に深く打撃を与えます。ある人を失うことによって受ける打撃は、その失い方や、生前の関係や、その後の状態などによっても大きく違うのです。

悲嘆の反応は、大切な人を失った時には誰にでも起こるものですが、これまでに行われてきた悲嘆の心理の研究では、次のような時に悲嘆は深刻化したり長期化したりするといわれています。

死が自分の責任であると自分を責める
死を止めることができなかった、自殺者の苦しみを分かってやれなかった、自分が信頼されていなかった、自分があの時間に送り出したからこうなってしまった、こういう気持ちが遺族には生じてきます。なすべきだったのにしなかったこと、なすべきでないのにしてしまったこと、この両方が強い罪責感をもたらします。実際には、外から見ると、そのような責めを負う必要はないにもかかわらず、です。

自殺の場合、なぜ死を選んだのか、そして事件事故の場合、なぜ死ななくてはならなかったのか――このことは遺族にとっては一番知りたいことでもあり苦痛の源でもあります。たとえ遺書が残されていたり理屈の通る説明があったりしても、死に至った本当の理由は分からない場合が少なくありません。時には亡くなった人に対して強い怒りを感じた後に、自分を責める感情が生じるときもあります。

中には、自分を罰したいために、異常に長い時間仕事に没頭したり、病気を治すことを拒否したり、生活の快適さを拒否する人もいます。自分をダメにするように、また苦しさから逃れるために、飲酒、薬物などに逃れようとする人も少なくありません。また自分も死を選びたいと思う人もいます。
家族の自殺や事故死は恥であり、その話はしてはいけないと感じる
自殺は触れてはいけないこと、と一般には受け止められます。自殺は精神的に弱い人のするものである、家族が死に追いやったのではないか、事件・事故で亡くなったのはその人に落ち度があったからではないかという見方がされることもあります。周囲に事実を伏せたまま葬儀が進行することも稀ではありません。周りの人も事情に触れるのを避けようとします。このため遺族としては死別後の悲しみについても、故人の思い出についても話せない状況が続き、孤立感、孤独感が募ります。
怒り
一方で、亡くなった人に対して、突然いなくなってしまったことに怒りを感じます。学校でのいじめとか会社における過重労働が自殺にかかわっているような場合や、事件事故に加害者がいる場合は、強い怒りがその原因へと向けられます。怒りは当然のことであると思われるかもしれませんが、怒りの気持ちがあまりに強く「こんなに人をうらんで、その気持ちをいつまでも持っている自分が嫌だ」とおっしゃる遺族の方も少なくありません。
不安と恐怖感
実際に自殺現場の第一発見者になったり、遺体を確認したり現場を目撃したりすることがあります。この場合にはその現場の光景が頭の中に張り付いて離れなくなったり、悪夢を見たりすることもあります。このような反応は、トラウマ反応と呼ばれるもので、恐怖や強い不安を感じるような体験のあと、生じてきます。記憶が繰り返しその時の感情を伴って蘇る、その場面を思い出すことが、恐怖や不安を感じさせるので、思い出させるものなどを避けたりする、自殺や事件にかかわる場所に行けなかったり、亡くなった人の持ち物などに触れることができない、などの症状が生じます。またその時の記憶が思い出せなくなることも起こります。不安が高まり過敏になります。反応の強さは人によりさまざまです。

では実際には、どんなことが起きてくるでしょうか。よくみられる症状をあげてみました。
  • 亡くなった人のことが思い浮かんで、眠れない。
  • 亡くなった人のことが思い浮かんで、仕事や家事が手に付かない。
  • 亡くなった人を捜し求めてしまう。
  • 食欲がない。体重が減った。
  • 自分の将来などどうでもよいと感じる。
  • 感情が麻痺したように感じる。
  • どうしても亡くなったことが信じられない。
  • 人の生に意味がないと感じる。
  • 自分の一部も死んでしまったと感じる。
  • 世の中が変ってしまったように感じる。
  • いらいらしている。
  • 亡くなったことにかかわるものを避けようとする。
  • 呆然としたままである。
  • 亡くなった人のいない人生など考えられない。
  • 自分を責めてしまう。
  • 強い怒りをもっている。
  • 悪夢を見る、夢のせいで夜中に目が覚めてしまう。
  • その時のある場面が突然生々しく、苦痛を伴って蘇る。
  • 思い出すのが怖いので事件にかかわる場所やものを避けている。
  • 自分も死にたいと思う
大事な人が突然亡くなった直後にこのようなことが起こるのは、実は正常なことです。症状はふつう、時間が経つにつれ軽減していきます。

しかし、あまりに長く続くときは早めに専門家に相談したほうがいいでしょう。大事な人を失った後、半年以上にわたって、ここに挙げた項目のいくつかが続いているようでしたら、専門家に相談することをおすすめします。最後の項目、自分も死にたいと思う気持ちがあるときには、まず誰かに相談してください。

周囲の人がきること

愛する人を失った人に対して、その周囲にいる人にできることがあるとしたらどんなことでしょうか。
悲嘆には時間がかかることを理解する
まずは、ここに書いてあるようなことを知ることです。事件・事故・自殺で愛する人を失う経験に人は深く傷つき、体験が整理されていくのに何年もかかるのが普通です。突然家族を奪われた人は「そこで時間が止まる」と言われます。あなたにとって、ある人の死がすっかり過去のことになったからといって、遺族にとってはそうではないのです。
情報を紹介し、孤立を防ぐ
このような危機を乗り越えるためには、「孤立を防ぐ」ことが大事です。遺族は自分の人生に意味がないように感じていて、支援を自分から求めたりする気力もないことがありますから、インターネットで自分を楽にするための情報を探すことなどはやれないという人も少なくありません。情報を探して教えてあげることは役に立ちます。地域の支援の資源をインターネットなどで調べてみる(保健所、児童相談所、自殺予防のNPO、遺族の自助グループ、精神科医療機関、弁護士など)、また本などの情報を紹介することが役立ちます。

最初に相談したところが適切だとは限りませんので、いくつか当ってみることが必要です。遺族の自助グループも各地にできてきています。メンタルヘルス領域だけでなく、法律や福祉の相談が必要なこともあるでしょう。
話を聞く―自責感を軽減する
遺族が喪失にかかわる体験について話したいときは、ゆっくり時間をかけて聞いてください。話す人はあなたに答えを求めているわけではなく、まずは気持ちを理解してもらいたいのです。話すことを無理強いしてはいけません。できたら「自分を責める必要はない」ことを伝えます。説得するのではありませんから、押し付けないように。またあなた自身がつらくなるときは無理をしないようにする必要があります。
他の人の助けを求める
周囲にいる人も突然の死によって傷ついていることがほとんどです。自分も傷ついているのに支える側に回って、無理をしてしまうということはよく起こります。そういうときにはほかの人の助けを求めましょう。あなたが誰かに相談するのもよいことです。

危険のサイン

遺族が「自分も死にたい」と言う
喪失の体験は、体験した人の自殺のリスクを高めます。

何も変わらないように見えても、時間が経つことで、悲嘆の反応は変わっていきます。悲嘆の過程を進んでいくために時間はとても大切です。一歩一歩進んでいくためにも、まずは自殺の予防が大事です。
現実とのつながりが失われる
一過性の精神病症状、重度の抑うつ症状、解離症状などで、現実とのつながりが失われているような場合です。事件の直後や、あるいは何かまたショックなことが重なった時などに、状態が悪くなることがあります。あまりに打撃が大きいような場合、幻覚や妄想が生じることもありますし、話が通じないような状態になることもあります。

このようなサインがあるときは、医療機関の受診が必要です。
参考になるホームページ
(独)国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所
自殺予防総合対策センターホームページ
⑤PE(Prolonged Exposure)法

 PE(Prolonged Exposure)法

PEとは

PEはProlonged Exposure法の略語、持続エクスポージャー法と訳されています。PTSD(外傷後ストレス障害)を標的とした治療法の中では最も確実に有効であると言われています。決まった手順で進める集中的な認知行動療法の一つです。

PEはアメリカの心理学者、エドナ・B・フォア先生によって開発された心理療法です。フォア先生は、ペンシルバニア大学不安障害治療研究センター長を長年務めておられ、本治療法を開発した功績は世界中に知られています。

武蔵野大学心理臨床センターでは2004年から条件が適合した方にPE治療を行っています。

PEの概要

PEを行う場合、基本は週一回から二回、90分くらいのセッションを10回から15回行います。また毎回、家でやってくる宿題が出ます。宿題はこの治療法の重要な一部分です。また治療前と治療後に症状の評価を行います。PEの各セッションはスーパービジョンを行いながら(指導者が録画されたセッションを見て、また治療者が録画された自分のセッションを見て治療をより良い方向に導いていきます)行われますので、セッションを録画するのが原則です。治療以外のことに録画が使われることはありません。

PEの考え方

ここでは、PTSDを治療する時のエクスポージャー法の基本的な考え方について説明します。PEが基本としているのは情動処理理論(emotion processing theory)です。この理論では「恐怖感」は、そもそも人が危険を回避して生き延びるために必要なもので、生得的に備わっているものだと考えます。例えば、歩いていて突然猛獣に遭遇したとしたら、恐怖を感じて逃げようとすることは、人の生命を守るのに役立ちます。またその時の状況を詳細に記憶することも、今後に役立ちます。現実的に脅威が持続するのであれば、恐怖は正常で役に立つものだと言えます。いわば恐怖、記憶中の刺激、意味づけ、その後の反応は、一つのプログラムのように作動します。次に猛獣に会う危険のある場所に行ったとしたら、このプログラムが発動すればすみやかに危険が避けられそうです。この恐怖のプログラムを恐怖構造と呼んでいます。

例えばある人から暴力を振るわれたということが、恐怖構造となっているとすると、その時の状況(恐怖感や、天気や、加害者の服装や、圧倒的な無力感等)がひとまとまりになっている訳です。雨が降っている、黒い服を着ている、自分は何もできない状況だ、こういう一つ一つのことが起こるたびにこの恐怖構造が呼び起こされます。恐怖の体験をした人の恐怖構造は、普通は時間と共に解消していきますが、いつまでも残っている場合にPTSDとなるのだと説明されています。

ではこの恐怖構造を解消していくにはどうしたらいいか?それには二つの過程が必要だと説明されています。
  1. 一度、その人の恐怖や不安が引き起こされ活性化すること。恐怖や不安が活性化されないことには、恐怖構造を修正することができません。
  2. それまでの非現実的な恐怖構造の情報を現実的な情報に置き換えること。
これを実際にやっていくのがPEの治療です。

PEの治療の対象

  1. どのようなタイプのトラウマでもよいが、その経験の後でPTSDや併存疾患を発症した人。完全にPTSDの基準を満たしていなくても、明らかなPTSD症状が存在しており、苦痛や生活への障害が生じている場合。
  2. トラウマ体験を十分記憶しており、語ることができること。
PE治療の対象はPTSD症状です。トラウマが一回か繰り返しなのかということは問いません。PTSDの症状があれば対象となります。ただ、PEはPTSDの治療法であって、トラウマの治療法ではないことは心に留めてください。ですからすべてのトラウマ反応やトラウマに関連する障害がPEで治るわけではありません。それぞれの症状に応じて、それぞれの治療が必要です。もちろんPTSDは合併症の多い疾患ですから、ほかの症状があっても治療できる場合もあります。PEを行うと抑うつ状態や解離症状も軽快することは知られています。PE治療の対象となるかどうかは、個別にご相談ください。

2.にあるように、今トラウマの記憶がない方にはこの治療法を使うことはできません。PEは記憶を取り戻す手段ではないのです。

さらに、週一回の長いセッションをやり、家で宿題をするのは大変なことです。今まだ被害を続いている場合などは、そこから抜け出し安全になるのが先決です。そのための支援を受けるべきで、この状態で治療を始めることはできません。

またお子さんの場合には、子ども用の様々な治療法がありますが、武蔵野大学心理臨床センター一般相談部門では14歳以上の青少年、成人の方を主なPEの対象としています。もっと小さいお子さんのPEは行っておりません。

PE治療ができない場合

治療の対象とならない場合をまとめてみました。
  1. 切迫した自殺や他害行為の恐れ
  2. 重度の自傷行為
  3. 現在精神病症状がある場合
  4. 現在も被害が続いている、そのリスクが高い場合
  5. トラウマの明確な記憶がない、もしくは記憶が不十分である場合
このような場合は、まず安全な生活ができるようにしてから、また他の治療法を用いて症状が安定してから、PTSDの治療に取り組むことが必要となります。PEの治療は、集中的で、治療を受ける方にも多くの努力を要求します。薬のように飲むだけで治る、と言ったものではありません。そのかわり治療を受ける方は、なぜ治ったのか、今後どうすればいいか、自分でもはっきり知ることができます。
(小西聖子)

ご相談の流れ

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※当センターでお引き受けすることが難しい場合には、お断りすることや、他機関のご案内をする場合があります。
まずお電話にてお申し込みください。なお、ご相談の内容によっては、より適当と考えられる機関をご紹介することもあります。
TEL 03-5530-7697

相談受付時間

月・水曜 14:00~20:00
火・木・金曜 11:00~17:00
※センターの開室日を、大学の学年暦に合わせております。詳しくは開室カレンダーをご覧ください。

相談料金

初回 4,000円~
2回目以降は、3,000円~(50分)
※心理検査等、内容によって料金が異なる場合があります。また、医療機関ではありませんので、健康保険の適用はありません