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近赤外光は1800年,英国のWilliam Herschelによって発見され,当時は太陽光に含まれる輻射線と考えられていた.
近赤外分光法は,物質による近赤外光の吸収あるいは発光に基づく分光法である.その吸収は,基準振動の倍音または結合音によって生じるため,近赤外光の波長域は,可視光の上限およそ800 nmから,O-H伸縮振動の基準振動がある2600-2700 nm までの間,800 - 2500 nm (12500 - 4000 cm-1)とされている.
また,赤外分光法と比較してその特徴を述べられうことが多い.その大きな違いは,赤外吸収が分子の基準振動に起因するのに対して,近赤外の吸収は,それら基準振動の倍音や結合音に関係している点である.それ故,いくつかのメリット,デメリットが存在する.
それらの特徴は,振動の非調和性に基づいている.赤外吸収は,分子の振動を調和振動として取り扱うが,近赤外の倍音,結合音は,振動の非調和性によるものである.つまり,振動のポテンシャルエネルギー(V)を級数展開したときの高次の項を非調和項といい,赤外吸収では無視されるが,近赤外では,この非調和項によるΔv = ± 2, ± 3, などの遷移が起こる.これを非調和性といい,基準振動の基本音(Δv = ± 1)と比べ,その強度は弱くなる.
水の場合,近赤外のモル吸光係数は赤外の10-3程度まで小さくなる.通常,赤外では水による吸収が非常に大きいため,水系の測定は困難であるが,近赤外ではモル吸光係数が低いため,水系における測定が容易になる.
もう一つの特徴として,非調和性は分子間相互作用による影響を受けやすいことが挙げられる.つまり,Δv = ± 2, ± 3, などの遷移による,倍音,結合音は,分子間相互作用によって大きく変化し,水の場合,水素結合による振動数シフトは,赤外領域に比べて2倍ほど大きくなる.したがって,環境変化によるバンド成分,分子種が分離される可能性が高く,弱い相互作用に対しても感度が良いと言える.このことは,モース関数を用いた振動のポテンシャルエネルギーからも説明される.
ここまでは,近赤外分光のメリットを述べたが,デメリットもある.それは,複数の倍音,結合音によるバンド間の重なりが大きいため,スペクトルが複雑であり解析が困難な点である.そのため,差スペクトルや微分スペクトル,赤外やラマン分光との相補的な解析を始め,統計的手法(ケモメトリクス)や一般化二次元相関法や摂動相関二次元相関法など,様々な解析法が提案されている.そのため近赤外分光法の有用性は,各解析手法を慎重に用いて必要な情報を抽出することで,格段に向上すると言える.