言語聴覚士養成課程(専攻科および人間社会研究科人間学専攻 言語聴覚コース[修士課程])の取り組みが、12月20日付の産経新聞(朝刊23面)に掲載されました。本学の言語聴覚士養成課程は、開設から10年を迎え、全国でも珍しい総合大学における言語聴覚士養成コースの特色とその成果が評価されました。特に、言語聴覚士国家試験*合格率が2年連続100%を達成したことが注目され、全国平均の合格率72%を大きく上回る成果が報じられました。
*第25回言語聴覚士国家試験(2023年2月18日実施)、第26回言語聴覚士国家試験(2024年2月17日実施)コメント
北 義子 専攻科長
■本課程が開設から10年を迎えたことへの気持ちと、これまでの成果について
本コースが開設されて10年の歳月が経ちました。武蔵野大学という素晴らしい環境にあって、教員も学生も日々さまざまな刺激を受けてまいりました。国内で唯一総合大学に属する大卒2年制の言語聴覚士養成コース(専攻科)と大学院での言語聴覚士養成コースを併設する、大変ユニークな存在として地歩を固めた10年だったと思っています。
現役の言語聴覚士が1年間で修士号を取得するというコースも着実に修了生が増え、一人は武蔵野大学の教員となりました。研究のテーマも武蔵野ならではの視点を取り上げる者が多く、今後が楽しみです。
年に1回の「武蔵野言語聴覚カンファレンス」では言語聴覚療法に医学のみならず、哲学や社会学、あるいは国外の専門家の視点で切り込み、ユニバーサルな気づきをもたらしてきました。また、「聴覚フェスティバル」や「甘えと間主観性研究会全国大会」など障害当事者に寄り添う視点のイベント開催は「世界のしあわせをカタチにする」武蔵野大学にあってこそ、の当コースの面目躍如とするところで、毎年学生と教員一同で取り組み、独自な成果を上げてきました。 しあわせ研究所との研究員として学外の先生方や修了生、あるいは企業とのコラボレーションや共同研究も活発で、今年度は基礎から臨床調査まで、専門学会等で本学関係者は14本の研究発表を行うことができました。
なにくれとなく修了生が大学に立ち寄ってくれるのも「武蔵野サンガ」の顕れ、当コースの自慢のひとつです。さまざまな臨床現場や学会、都士会や県士会で活躍し、多忙な先輩方ですが、臨床実習のスーパーバイザーとして、あるいは就職説明会やオープンキャンパスにOBとして参加してくれ、学生たちのよき指南役となってくれています。学生が苦手とする国家試験の領域を特別講師として教えにきてくれる先輩もいます。
■特に注目されている2年連続国家試験合格率100%の成果について
国家試験の勉強は授業で教えられるものではなく、結局は本人が自分でやらねばなりませんが、興味と関心と意欲を大事にする教育プログラムと上に述べたようなOBなどによる手厚い支援、そしてその中で学生達がお互いに支え合い、教え合う伝統が可能にしたのでは、と思っております。
■今後の展望や、地域貢献や小児領域の強化に向けた取り組みについて
開設以来の10年で特に、小児や聴覚障害領域で優秀な専門家を求める声が大きくなっています。当コースではこのような声に応えるべく、教育学部や幼稚園等とのコラボレーション、聴覚障害当事者との対話など特色のある教育プログラムを揃えています。将来的に地域の子どもたちの発達や教育に貢献できるよう、今着実に準備を進めているところです。
■学生たちへの期待やメッセージ
「言語聴覚士」は医学知識をもった医学・教育・福祉の領域にわたるコミュニケーション支援のプロフェッショナルであり、医学的専門知識と実際のコミュニケーション能力が必要です。アメリカでは日本の言語聴覚士にあたる専門職は2つに分かれており、言語病理の専門家(Speech Pathologist)は修士、聴覚の専門家(Audiologist)は博士号が必要な資格です。日本では「言語聴覚士」免許だけで、この2つのどちらの領域でも働くことができます(そのため、国家試験の範囲が広く、授業も一つとして聞き逃してはならないものばかりです)。どちらの専門家になるにしても日進月歩の医学的な専門知識が必要であり、資格を取ったら終わり、ではなく、一生学び続けねばなりません。また、対人援助職として他者と向き合うということは自己と向き合うことでもあり、自らを省察し続ける努力も必要です。とても難しいことなので、誰でもができるわけではないかもしれません。
覚悟をもって、他者と学び、自己を見つめ、変わる努力をしてみよう、そして「医学知識をもった」コミュニケーション支援のプロになろう、と思う方はぜひ受験をご検討ください。学部は問いません。さまざまな経験が言語聴覚士に必ず役に立ちます。