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Vol.20

「物質主義(マテリアリズム)は幸せか?」

昔、マドンナの「マテリアル・ガール」という歌がありました。1984年発売ですから、今から40年近くも前の歌ですね。マテリアル・ガールとは、宝石やお金が好きな女性という意味です。

心理学の世界にも、物質主義(マテリアリズム、materialism)という言葉があります。ベルクによると、物質主義とは、消費者が世俗的な所有物を重視することです。物質主義が最も高いレベルでは、所有物が人の生活の中心的な位置を占め、満足と不満の最大の要因となりうると、ベルクは述べています。

皆さんは、物質主義的でしょうか? そうではないでしょうか? 物やお金が欲しいというのは人類固有の欲求なので、しかたがないと感じる方もいるかもしれません。しかし、物質主義は、人類二十万年の歴史の中では極めて最近出てきた概念です。西洋で現代型の幸福追求パターンとしての「消費」が初めて出現したのは,15~16世紀のヨーロッパ、18世紀のイギリス、19世紀のフランス、19~20世紀のアメリカあたりだろうと言われています。つまり、物質主義とは、ここ数百年くらいの間に出てきた概念なのです。

物質主義と性格特性の関係についての研究の結果、物質主義傾向が高いグループでは神経症傾向が高いことが知られています。また、物質主義は若い人ほど強い傾向があるという研究結果もあります。さらに、物質主義は各種ウェルビーイング指標と負の相関関係があることも知られています。つまり、物質主義的な人は、幸せではない傾向があるということなのです。

私がいろいろなところで述べてきた、地位財(地位として他人と比較できる財。金、モノ、地位)とも近い概念ですね。地位財による幸せは長続きしないこともわかっていますので、やはり、物質主義的だとあまり幸せにはなれないようです。

それなのに、マドンナの「マテリアル・ガール」が流行ったり、そのモデルであったと言われるマリリン・モンローの映画「紳士は金髪がお好き」(1953年)など、物質主義的な人間観は繰り返し話題になります。なぜなのでしょうか?

ひとつには、「金銭的・物的な欠乏状態は不幸である」という研究結果があるので、その逆も成り立つように思えるからかもしれません。実感としても「貧しさを脱出したら幸せになったので、さらにお金持ちになると幸せなはず」と考えられそうにも思えます。しかし、人間の心は非線形です。金銭的・物的な欠乏状態は不幸ですが、金銭的・物的に満たされてもさほど幸せにはならないのです。購買型の消費よりも体験型の消費の方が幸福度は高まるという研究結果もあります。物質主義に陥りすぎず、いろいろな体験を楽しみましょう!
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