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お知らせ

政治学科「選挙特殊研究」履修生が江東区選挙管理委員会の講座で1年半の研究成果を発表しました

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法学部政治学科では、2014年から「選挙特殊研究」の授業において、江東区選挙管理委員会と連携し、若者への選挙啓発や政治教育の影響を実証的に分析する研究・教育一体型のプロジェクトを推進してきました。最近の1年半の研究成果については、1月20日に開催された江東区選挙管理委員会主催の「明るい選挙推進委員・後期教養講座」で、2・3年生の履修生が約80名の推進委員である区民に向けて成果発表を行い、活発な質疑が交わされました。

3つの研究テーマの成果をチームで発表

2023年度後期から実施された『選挙特殊研究』第9期のプロジェクトでは、同学科の山崎 新講師と一條 義治教授の指導のもとで2年生9名と3年生8名の計17名が研究活動を進めてきました。
1月20日、江東区文化センターの大ホールで開催された「江東区明るい選挙推進委員・後期教養講座」において、成果報告会が行われました。学生の発表に先立ち、一條教授が1年半にわたる取り組みの一環として、文献研究や新有権者を対象としたアンケート調査を実施したこと、学生が提案した「投票済証」のデザインが2回の選挙で採用され、区内の投票所で配布されたこと、さらに区長選挙・都知事選・衆院選の3回の選挙で学生が開票所などの選挙事務を体験したことを紹介しました。【第9期の取り組み紹介はこちら】
次に、3つの研究テーマについて、それぞれのチームが成果発表を行いました。

① 有権者研究チーム「江東区有権者調査~江東区の地域ごとにおける投票率の中身」

このチームは、江東区の地域ごとの投票率に関する調査と、年代別人口構成が似通った他区の投票率と比較した分析結果をまとめました。
2023年4月23日の江東区の区長選挙における投票率は48.86%であり、前回比で2.14%増加しました。江東区は深川・城東・臨海部の3つのエリアに分かれますが、近年は豊洲や晴海などの開発により臨海部の人口が5年間で約4,500人も増加しています。
そして、臨海部は港区と人口構成が似通っているが、港区は高齢者層の投票率が高いのに対して臨海部は中年層の投票率が高いことなどから、臨海部の特に40・50代の人口の増加と高い投票率が、江東区全体の投票率を高めているとの考察の結果を発表しました。

② 候補者研究チーム「2023年度江東区長選分析~他自治体との比較からみえる傾向」

このチームは、2023年の1年間に2回実施された江東区長選挙に焦点を当て、2回目の選挙の投票率が大幅に低下したことに着目し、他の自治体の事例との比較分析を行い、江東区の特徴と投票率低下の背景や要因を分析しました。
2023年4月の選挙では投票率が48.86%でしたが、12月の再選挙では39.20%と9.66ポイント減少し、過去最低となりました。この要因として、①公職選挙法違反による区長の辞職による区政への信頼低下、②短期間での再選挙による選挙運動の低下を考えました。
他の自治体と比較すると、不祥事による辞職があった自治体では投票率の低下が見られ、江東区も同様の傾向が確認されました。また、単独選挙となり、他の選挙と同時に実施されなかったことも有権者の関心を下げた要因と考えられます。以上の分析から、江東区の投票率低下は複数の要因が重なった結果であるとの報告を行いました。

③ アンケート調査チーム「新有権者の投票行動~新有権者はがきのデータをもとに」

このチームは、区内の新有権者を対象に行ったアンケート調査の分析により、候補者の情報提供方法のあり方のほか、SNSやインターネットツールごとに内容や表現を変えることで、若年層の投票率が高まる可能性があることを発表しました。
本調査は、18歳となった江東区の新有権者を対象に、政治への関心や投票行動に影響を与える要因を調べるために実施したものです。調査では、候補者の情報提供方法を3つのパターンに分け、①意気込みのみ、②意気込み+個人の性格的情報(MBTIなど)、③意気込み+公約・政策を提示し、どの形式が投票行動に影響を与えるかを比較しました。その結果、具体的な政策を簡潔に示すことが、新有権者の関心を高める要因となることが分かりました。
また、新有権者の約半数がインターネットを主要な情報源としており、関心が高い層は能動的に検索し、関心が低い層はSNSなどの受動的なツールで情報を得る傾向がありました。これらの結果から、若年層の投票率向上には、SNSやインターネットを活用した戦略的な情報発信が重要であると報告しました。

選挙啓発活動に携わる委員との意見交換を今後の研究に活かして

各グループの発表後には、江東区明るい選挙推進委員の皆さんとの活発な質疑応答が行われました。参加者からは、「学生の視点からの発表が新鮮だった」「地域ごとの投票率の違いが具体的に分析されていて興味深かった」「他自治体との比較を通じた江東区の特徴がよく分かった」などの感想が寄せられました。
今回の発表を通じて、区内の選挙啓発活動に携わる委員の皆さんと直接意見交換を行うことで、学生たちはより実践的な視点を身につけることができました。今回の成果報告は、履修生にとって貴重な経験となり、今後の研究や活動に大いに役立つものと思います。
法学部政治学科は「市民の政治学」を志向していますが、今後も地域社会との連携を深め、研究や教育内容の充実を図り、より実践的で社会に貢献できる人材の育成を目指します。

担当教員コメント

山崎 新 講師(法学部政治学科)

「選挙特殊研究」はいわゆる専門知と実践知の融合という意味において希少且つ貴重な授業です。学問的な見地から実際の選挙に疑問を探し、それに対して追究し、それを社会に還元・共有するというプロセスは大学での学びの真骨頂ともいえると思います。そういった意味においても、学生にはこの貴重な経験を今後に活かしてほしいと思います。また、同時にこのような機会を提供していただいている江東区選挙管理委員会には多大な感謝を表したいと思います。

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