このページの本文へ移動

お知らせ

AI時代に問いを投げかける建築的アート制作 ─工学部建築デザイン学科の水谷研究室が「トロールの森2025」に出展─

学部・大学院
  • 工学部
  • 建築デザイン学科

建築とアートの融合を探る水谷研究室の取り組み

工学部建築デザイン学科の水谷 俊博研究室が、杉並区を拠点に開催された国際野外アート展「トロールの森2025(Trolls in the Park 2025)」に出展しました。水谷研究室ではセルフビルドによる木造建築の設計・制作を、さまざまなパブリック・スペースで継続的に取り組んでいます。今回の「トロールの森2025」への出展は、建築デザインの知見を応用し、地域社会や自然との関わり方、そしてアート表現の可能性を深める活動に基づいています。

まちと自然を舞台にした国際野外アート展「トロールの森」

「トロールの森(Trolls in the Park)」は、杉並区を拠点に毎年秋に開催される国際野外アート展です。「日常生活のなかでアートと出会う」を題材に、JR西荻窪駅から都立善福寺公園を舞台に約3週間にわたり実施されています。屋外空間でのインスタレーションやパフォーマンスを通し、自然やまちの魅力を新たな視点でとらえる試みとして知られています。

2025年のテーマは 「抗(RESISTANCE)」。環境・社会・テクノロジーの中で生じる“抵抗”を出発点とし、新しい対話を生み出す作品が展示されました。

AI時代に問いを投げかける作品

「Planet Waves」

本作品では「過去の知識から導かれた答えに頼らず、AIに抗う」というテーマを掲げました。素材には木材、ロープ、チェーン、布、偏光版などが用いられています。第三者の手によるモノの加減乗除を通じて、“リアルタイムで変化する一度きりの風景”を立ち上げることを試みました。風や光の揺らぎによって変化し続ける作品を通して、来場者に“今”と静かに向き合う体験を来場者に提供しました。

学生コメント:出展を通して考えた「AIに抗う」ことと、人の感覚の可能性

「トロールの森」への出展では、国内外のアーティストがそれぞれに“抗う対象”を持ち、自然や社会、制度、時間など多様なテーマに向き合う姿に強く刺激を受けました。私たちは「AIに抗う」というテーマを掲げ、情報があふれる社会のなかで、“今この瞬間を自分の感覚で確かめる”ことの意味を改めて問い直しました。
制作では、研究室の4年生全員で意見を出し合い、形や構造を何度も検討しました。木工作業や工具の扱いに不慣れなメンバーも多く、互いに学び合いながら作り上げた過程そのものが、まさに「第三者の手による再構成」という作品テーマを体現していたように思います。屋外展示ならではの強風や気温差などにも対応し、昼と夜で異なる姿を見せる作品が自然と呼応して変化していく様子に、環境そのものが作品の一部になる感覚を得ました。
また、来場者との関わりも印象的でした。特に子どもたちが作品を自由に動かし、こちらの想定を超えた新しい形を生み出していく姿に、創造の可能性とアートの開かれた力を感じました。今回の経験を通して、AIやテクノロジーと対立するのではなく、人の手や感覚、偶然性を活かしながら共存する表現や建築のあり方を今後も探求していきたいと考えています。

建築的アート制作が探る未来と社会貢献

「Planet Waves」は、AIをはじめとするテクノロジーの発展が進む時代において、人間の直接的な関与や、二度と再現されない「今」の価値に焦点を当てるという、建築的アート制作の新しい可能性を示しました。水谷研究室は、今後も地域や自然を舞台に、建築と社会の接点を探る実践的な教育研究活動を継続していきます。

関連リンク

一覧に戻る