法学部政治学科の一條 義治ゼミでは、自治体の政策形成や市民参加のあり方を理論と実践の両面から学び、公務員志望の学生を中心に、現場に根ざした教育・研究を進めています。2025年度の公務員試験では、国家一般職や東京都庁、県庁、特別区など、法学部で過去最高となる1ゼミから8名の合格者を輩出しました。
学びをさらに深め、特に4月から公務や実務の現場に就く4年生にとって実践的な知見を得るために、12月13日、東邦大学(千葉県)で開催された「日本ミニ・パブリックス(※)研究フォーラム」に2~4年生のゼミ生のうち24名が参加し、様々な市民参加の先進事例を学びました。
市民参加×AIによる民主主義の質の向上を学ぶ
「ミニ・パブリックス」のあり方を研究する今回のフォーラムの第1部では、「民主主義の再生を日本から〜自分ごと化会議×AIの試み」と題して、シンクタンク「構想日本」による住民参加型の政策討議(自分ごと化会議)や、そのAI活用の最新事例が紹介されました。続く第2部では、福岡県大刀洗町の住民協議会や、東京都三鷹市における長期的な市民参加の取り組みなど、日本各地でミニ・パブリックスがどのように政策決定へ活かされてきたかが報告されました
一條教授は、第2部の報告者として「三鷹市の市民参加戦略とまちづくりディスカッションの展開」と題し、自身が同市の企画部企画経営課長として統括した総合計画策定において、無作為抽出による市民参加やワークショップ、パブリックコメントなどを組み合わせて、多元・多層の合意形成をめざしてきた三鷹市での実践を報告しました。あわせて、ミニ・パブリックスを単に「小規模な熟議の舞台」として終わらせるのではなく、より大きな市民参加戦略の中に位置づけることの重要性について問題提起を行いました。
参加したゼミ生は、講演やパネルディスカッションを通じて、自治体が直面する政策課題に対し、市民参加やAI技術をどのように組み合わせれば、民主主義の質を高めつつ実効性のある意思決定が可能になるのかについて、多くの示唆を得ました。こうした学びは、特に4年生が4月から公務や実務の現場において住民と向き合いながら政策を担っていく際の活用策として、大きな財産になるものと期待されます。
学生の夢を叶え地方自治の現場で活躍できる人材を輩出するために
今回のミニ・パブリックス研究会への参加以外にも、一條ゼミでは学生が地方自治やまちづくりの最先端の現場から学ぶ、多様な機会を設けています。
4月から実務に就く4年生ほか、一條ゼミの3年生については、6月にお台場にある東京都港湾局の展示施設「ミナトリエ」で館長から臨海副都心のまちづくりのレクチャーを受け、その後、東京都が所有する視察船「みなと丸」に乗船し、海上から東京港や有明キャンパスを含むベイエリアを視察しました。
2年生については、11月に東京都庁の指定金融機関であるみずほ銀行新宿オフィスを訪問し、金融機関による地方創生を学びました。続いて東京都庁を訪れ、港湾局の担当職員から臨海副都心の開発計画についてレクチャーを受けるとともに、フリーアドレス制が採用されている同局の職場を見学しました。
また、5月の3・4年生の合同ゼミでは、国内外から注目を集める宇都宮市のLRT(次世代型路面電車)による「ネットワーク型コンパクトシティのまちづくり」を学ぶために、一條教授が3月に視察調査したご縁で同市の担当課長に往復5時間をかけてゼミに来ていただき、レクチャーと活発な意見交換を3時間行いました。
さらに一條ゼミでは、一條教授が三鷹市の総務部部長職として採用面接に従事してきたことから、ゼミ生に対して実践的な採用試験対策の指導も行っています。
学生のキャリア形成の夢を叶え、地方自治やまちづくりの現場で活躍できる人材を輩出するために、今後も自治体や地方自治を支える人たちとの連携を深め、研究や教育内容の充実を図っていきます。
ゼミ生コメント
法学部政治学科4年生 山本 翔大さん(東京都庁内定)
今回参加したミニ・パブリックス研究フォーラムでは、様々な活動に取り組む方々の報告を伺い、「他人ごと」を「自分ごと」へと転換していく重要性を改めて実感しました。また、政治や行政の動向を主体的に捉え、自ら情報を取りに行く姿勢が不可欠であることを痛感しました。とりわけ、住民説明の場で事業を「自分ごと」として受け止めてもらえるよう工夫することの大切さは、4月から東京都庁の職員として住民説明を行う際に、ぜひ活かしていきたいと感じました。
法学部政治学科4年生 瀬川 なつみさん(世田谷区役所内定)
ミニ・パブリックス研究フォーラムでは、無作為抽出という制度設計を通じて、住民が行政課題を「自分ごと」として内面化していくプロセスが印象に残りました。また、参加経験が主体的な行動や継続的な市民参加へと波及している事例から、住民参加施策の有効性について多くの示唆を得ました。4月から世田谷区職員として働くにあたり、こうした理解を踏まえ、住民参加型の政策形成や事業実施に積極的に取り組んでいきたいと考えています。
担当教員コメント

法学部政治学科 一條 義治教授
「事件は会議室で起きてるんじゃない。現場で起きてるんだ!」。これは有明キャンパスがある臨海副都心を舞台とした警察ドラマ「踊る大捜査線」で、主人公が叫ぶ決め台詞です。私はゼミ選考の説明会では、「地方自治も『踊る大捜査線』と同じで、教室の中で書籍だけで学ぶんじゃない。自治の現場から学ぶんだ」と語ってきました。私のゼミには、それに共感してくれた個性的な学生が集いました。
第1期のゼミ生は4年生となり、ゼミで培った経験を力に採用試験でも奮闘し、公務員志望者全員が合格することができました。4月から社会人としてスタートする公務やまちづくりの職場では、今回の研究フォーラムの学びの成果も発揮して、一人ひとりが活躍してくれることを大いに期待しています。
関連リンク
- 法学部政治学科
https://www.musashino-u.ac.jp/academics/faculty/law/political_science/ - 地方自治を学ぶ政治学科のゼミ生が西東京市議会議員と意見交換を行い『議会だより』に掲載されました(市議会から本学への依頼に一條ゼミが協力)〈2024年11月29日掲載〉
https://www.musashino-u.ac.jp/news/detail/20241129-5806.html - 臨海副都心メタ観光プロジェクト(東京都の本事業に一條ゼミで参加・協力し、ゼミ生と教員の参加動画もあり)
https://metatourism.jp/rinkai/