学外成果展「座けんちく展」を開催
工学部建築デザイン学科の水谷 俊博研究室および同学科の授業「プロジェクト(木デつくる)」に参加した学生が、12月2日~7日の期間にキチジョウジギャラリー(三鷹市)にて学外成果展「座けんちく展」を開催しました。




水谷研究室と「木デつくる」授業の学外成果展
本展は、工学部建築デザイン学科における、座学と実践を組み合わせた学びの具体的な成果を発表する場として企画され、学生は作品制作から、展示計画、設営、会期中の運営までを主体的に行いました。展示では、水谷研究室の取り組みに加え、木材を用いて制作を行う同学科の授業「プロジェクト(木デつくる)」の成果作品が揃いました。また、学外ギャラリーでの開催により、建築や展示を専門としない来場者とも直接対話する場が生まれ、作品を「見てもらう」「伝える」ことの重要性を実感する機会となりました。 キチジョウジギャラリーは、井の頭公園駅から徒歩約1分、井の頭公園のそばに位置する貸しギャラリーです。白い壁と木の温もりを感じられる空間で、多様なジャンルの展示が行われており、地域に開かれたアート発信の場として親しまれています。
自我が生まれる前に立ち返る

「in child」
制作者:工学部建築デザイン学科4年生 榎本 陽菜さん
テーマ:胎盤のような優しい揺れを感じられるイス
村上 春樹氏の小説「街とその不確かな壁」の中に出てくる「壁の中に入るには、自分自身の本体と影が離れなければならない。離れた影は自我を持ち始める。」というシーンに焦点を当て、本体自身に自我がない状態に戻ることで、自我が生まれる影と離れ離れにならずに壁を通り抜けられるのではないかと考えました。自我が生まれる前の乳児に立ち返るため、胎盤のような優しい揺れを感じることができるイスを制作しました。 素材にはスタイロフォーム、キルト綿、サテンを用い、スタイロフォームを重ねて成形し、座面にキルト綿を敷いたうえで、サテン生地をカバーのように縫って包んでいます。 制作にあたっては、胎盤のような揺れと、座った際に包み込まれるような印象を大切にし、スタイロフォームをなめらかになるよう丁寧に成形しました。
コメント
工学部建築デザイン学科4年生 榎本 陽菜さん
実寸サイズで制作をすることがなかなかないため、イスを製作する際も、できあがっていくイスにわくわくしていました。展示も同様に、図面や写真を見て想像しながら展示エリアや配置を考え、考えた通りに展示会場ができあがったときに、自分の頭の中のものが現実のものになる感覚がとても印象に残っています。現場では事前に頭で考えていたこととの違いもありましたが、それを手作業で直していく過程も、実寸で作り上げる面白さだなと感じました。
一方で、普段は絵などを展示しているギャラリーの広さに対して大きな作品を展示したため、作品の配置計画や動線を考えることが難しかったです。また、計29人の作品を集めたため、それぞれの作品を楽しんでもらえるよう、作品に合わせて展示方法を変え、パターンを多く持たせました。展示配置を考える中で、お客さんの視線や展示の統一感など、さまざまな視点から動線を考える大切さを改めて感じました。特に、イスの大きさに差があったため、なるべく視線がなめらかに動くよう配置を意識するなど、立体物を展示する際ならではの視線で考えることが難しく、とても面白いところでした。
普段は学内で発表・展示をしているプロジェクトですが、何も知らない人がふらっと立ち寄ってくれたり、楽しみにしていた人が足を運んでくださったりしました。お客さんに作品の説明をすると、みなさんが面白いと興味を持ってくださり、私たちがやってきたことへの自信につながりました。また、知ってもらう機会を設けることで関心を持つ人が増え、新たな人とつながるきっかけになることを実感し、発表する場があることの大切さを改めて感じました。
今回の展示を通して、作品を見てもらうにはどうしたらよいのか、展示動線をどのように配置するとそれぞれの作品を見てもらえるのかを考えました。模型ではなく、実際に人が入る空間で実践できたことで、これまでパターンを考えながら動線を考えてきたことに対する解像度が上がり、これからの制作や設計にも活かしていくことができると思います。
工学部建築デザイン学科 水谷 俊博教授
学生の活動成果の発信は、どうしても学内で閉じてしまいがちではあります。特にコロナ禍以降は、学生の動きが内向的になってきている傾向がみられます。研究室の活動の一環で、実際にモノ(建築的な制作物)をデザインして、セルフビルドでつくっていくことに取り組んでいるので、第三者の方々にその成果に触れていただくということが、学生にとっても非常に大切なことではないかと思い、今回の展示会を企画しました。 会場の手配からはじまり、展示計画・設営、展示期間中の運営と、すべてを学生がてづくりでおこなったので、今回の一連のことが大きな体験となったのではないかと思います。今後の学生の活躍に期待しています。


社会で活躍する次世代建築家の育成へ
「座けんちく展」の成功は、学生たちが建築デザインの専門性を高めると同時に、自らの成果を外部へ発信する重要な機会となりました。水谷研究室および「プロジェクト(木デつくる)」での実践的な制作経験は、学生たちが卒業後、社会の様々な課題に対して創造的に貢献していくための、貴重な基盤となることが期待されます。
関連リンク
- 工学部建築デザイン学科
https://www.musashino-u.ac.jp/academics/faculty/engineering/architecture/ - 工学部建築デザイン学科 特設サイト
https://www.musashino-u.ac.jp/environment/design/ - 水谷俊博ゼミ学生ダイアリー(Instagram)
https://www.instagram.com/mizutani_lab/?hl=ja - 座けんちく展