ウェルビーイング学部では、ウェルビーイングの多様なあり方を体感的に学ぶことを目的に、3年次の必修科目として「地域・ビジネスプロジェクト」を開講しています。本プロジェクトでは、学生が各地域の生活や産業の現場に身を置き、地域に根ざした産業や文化活動、福祉、地域共生などさまざまな営みに参加しながら、人々の暮らしや価値観、社会をより良くする仕組みとしてのビジネスについて実践的に学びます。
本プロジェクトは6月中旬から3週間にわたり、和歌山県みなべ町、千葉県浦安市、岐阜県郡上市、埼玉県熊谷市の計4地域で実施しました。プロジェクトによっては滞在も伴いながら、地域の日々の生活に触れることで、よりよく生きるとは何か、自らの生き方や価値観について問いを立てる機会となりました。
7月22日に学内で行われた成果発表会では、学生たちがそれぞれの実習で得た学びや気づきを発表しました。本記事では、4地域で行われたプロジェクトと成果発表の様子を前編・後編の2回に分けてご紹介します。前編では、和歌山県みなべ町と千葉県浦安市の取り組みと発表内容をお届けします。
【和歌山県みなべ町】世界農業遺産と伝統産業を学び、繋いでいく2050年のウェルビーイング
日本一の梅の産地であり、世界農業遺産「みなべ・田辺の梅システム」で知られる和歌山県みなべ町で、地域の農業や文化、行政について学びを深めました。
滞在中は、農家の方々の家族のような温かい支援のもと梅の収穫や選果(選別)、梅ジュース作りを体験しました。また、紀州備長炭振興館や製炭士の方の炭窯での紀州備長炭の製炭技術体験や、豊かな海業、ウミガメの保護活動など、自然と人が共生する地域の魅力を肌で実感しました。
成果発表会では、滞在中に取材に訪れたテレビ和歌山のニュース映像も交えつつ、ミツバチや薪炭林が支える梅システムの仕組みを共有しました。さらに「2050年のみなべ町がウェルビーイングであるための施策」をテーマに、現地での体験やヒアリングをもとに考案した9つのビジネスアイデアを発表しました。人口減少や空き家増加といった課題に対し、学生視点で対話と議論を繰り返し行い、空き家を「他大学との研究ラボ」や「多文化共生の日本語教室」「アパレル等のポップアップショップ」として活用する案などを提案しました。学生ならではのフレッシュな提案は地域の方々から高く評価されました。
提案されたプロジェクトは、本実習に参加した学生が主体となり今後実現に向け検討が進められる予定です。地域の方々との深いつながりや温かな交流を通して得た学びは、学生たちにとっても自身の生き方や幸福を見つめ直す、大変貴重な経験となりました。
【千葉県浦安市】医療・福祉と音楽ケア「ブンネ」による、多角的な地域共創
浦安市を舞台に、「ウェルビーイング」の普及と可視化を目指す地域実習に取り組みました。
実習の前半では、高齢者施設などを訪問し、人生会議(ACP※)や認知症ケア、タッチケアといった医療・福祉の現場における実践的な学びに触れました。さらに地元の不動産会社「明和地所」、ケーブルテレビ「J:COM」、サッカーチーム「ブリオベッカ浦安・市川」といった多様な地域事業者とも連携しました。
後半にはこれらの学びを実践する場として、J:COM浦安音楽ホールにて約370名の応募を集めた「私って、いいネ。音楽でひらく、こころのウェルビーイング」というイベントを企画・開催しました。当日は、楽譜が読めなくても誰でも簡単に美しい音色を奏でられるスウェーデン発の音楽ケア楽器「ブンネ」を使った合奏や合唱を行い、医師や歌手の方、高齢者施設の方々、そして地域事業者や住民が会場全体の一体感と幸福感を共有しました。
成果発表会では、活動紹介に加え、現地での活き活きとした活動風景を収めた自作映像や写真が上映されました。また、イベント実施後に行われた約300名を対象としたアンケートや「幸せのひまわり」のデータ分析結果から、世代ごとの幸せの要素の違いや高齢層の幸福度の高さなどが示されました。
さらに、現場でのケアの学び、多様な主体との共創、ブンネのような音楽療法を通じた心の解放といった多角的な地域での体験を通じ、ウェルビーイングとは単なる抽象概念ではなく、身近な繋がりや日常の肯定から生まれる「個人の生の実感」そのものであるという学びを得たと発表されました。
※アドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning)の略称で、もしものときのために、あなたが望む医療やケアについて前もって考え、ご家族や医療・ケアチームなどと繰り返し話し合い、共有する取り組みのこと。地域との出会いが広げたウェルビーイングの視点
みなべ町では自然や伝統産業の営みを通じて地域の未来を考え、浦安市では医療・福祉や音楽ケア、多様な主体との共創を通じて人と人とのつながりの価値を学びました。活動内容は異なるものの、学生たちはそれぞれの地域で暮らす人々との対話や実践を重ねるなかで、ウェルビーイングとは一人で完結するものではなく、人や地域との関係性の中で育まれるものであることを実感しました。また、自ら地域の人々の営みに参加し、その背景にある思いや価値観に触れることで、地域課題を「自分ごと」として捉え、多様な立場の人とともにより良い未来を考える視点を養いました。
関連リンク
- ウェルビーイング学部ウェルビーイング学科
https://www.musashino-u.ac.jp/academics/faculty/well-being/well-being/