介護見守りをPepper君で-安心と楽しい時間を-

No.028
経済学部 経済学科 4年
野田 彩乃 さん
※所属・内容は取材当時(2025年7月)のものです。活動について
大学の「副専攻(AI活用エキスパートコース)(以下:AI副専攻)」の一環として、AIロボットPepper君を活用した高齢者向けの見守り・会話サービスを考案しました。介護現場では、ヘルパーさんが他の業務で手が離せない時、一時的に高齢者の方々を見守る時間が確保できないという声を聞き、高齢者の方が退屈しないよう、Pepper君が会話やゲーム、レクリエーションをして楽しませるサービス内容を考えました。人間同士では頭を急に触ったり握手したりはできませんが、Pepper君だからこそ新しい感覚や体験を提供でき、高齢者の方々が親しみやすく、簡単に打ち解けられると思いました。
※武蔵野大学は、AIが当たり前になる未来を見据え、AIを使いこなすための知識とスキルを学ぶ「副専攻(AI活用エキスパートコース)」という独自の教育プログラムを設けています。学部や学科の専門分野に加えて、AIをもう一つの専門として学ぶこのコースは、AIを「仕事を奪うもの」ではなく「仕事を創り出すツール」として捉えることを目指しています。
活動のきっかけ
この活動を始めたきっかけは、介護ヘルパーをしている友人との会話でした。AI副専攻の授業を履修していると話した際、友人に、「何か困っていることはない?」と尋ねたところ、介護現場の人手不足という課題について話してくれました。私自身、労働経済学ゼミで少子高齢化における労働力人口不足の問題を学んでいたこともあり、この課題に対し、Pepper君で何か形に残るものが作れないかと思ったのが、プロジェクトを始めた大きなきっかけです。さらに友人が「何かあったら協力するよ」と言ってくれたおかげで、実際に介護施設で働く介護ヘルパーの方々12名にアンケートを実施することができました。その結果、一時的な見守りのへ不安や、高齢者の退屈な時間が課題であると把握できました。友人の協力がなければ、ヘルパーさんへのアンケート実施は困難だったと思います。
活動の感想
Pepper君を動かすためのプログラミングには、試行錯誤を重ねました。Pepper君に元々入っている「Robo Blocks」という機能を使い、右手を触れたら話しかける、頭を撫でられたら喜ぶといったブロックを組み合わせていきました。最初にPepper君が利用者に使い方を説明して、実際に触れられたら反応し、その事象が起きるという、ちゃんとした流れを作るのが本当に大変でした。パソコンのプログラミングでは正常に動くものが、Pepper君に送ると動かなくなってしまったり、想定外の動きをしたりすることも多々あり、原因が分からず苦労しました。完成後、介護ヘルパーさんから「安心できる」「これなら高齢者の方も楽しめるのでは」といった前向きな意見をいただいた時は、これまでの苦労が報われ、心から嬉しかったです。このプロジェクトには夏休みも返上し、半年ほどこのプロジェクトに注ぎ込みました。
そして、迎えたAI副専攻の成果物発表会では、「高齢者に受け入れられやすく、業務の効率化にもつながる良いアイデア」と高い評価をいただき、ソフトバンクロボティクス株式会社が主催する「2024年度STREAMチャレンジPepper部門」での入賞を果たすことができました。この受賞は、私にとって大きな達成感と「本当に取り組んでよかった」という実感をもたらしてくれました。
今後の目標
今後の目標は、今回考案したPepper君のサービスを「実際に高齢者の方々に試してもらうこと」です。今回は介護ヘルパーさんへの紹介動画での評価に留まりましたが、今後は介護施設や、将来的には自宅など、もっと身近な場所で使ってほしいと願っています。実際に体験してもらうことで、どのようなフィードバックが得られるか楽しみです。人手不足が深刻化している社会において、Pepper君が、介護ヘルパーさんの役割の一部を担い、スタッフが安心して他の業務に集中でき、高齢者の方々が楽しく過ごせる時間を提供できればと思っています。レストランでの配膳や、メール作成など、ロボット技術やAIが様々な分野で活用されているように、高齢化社会においても、Pepper君が頼れる存在になってほしいと願っています。

野田さんと担当教員の先生(左:糸田先生、右:渡邊先生)

成果物発表会の様子

考案したPepper君
取材・執筆:経済学部3年 和田 みんみ