年間2万頭の「流通中死亡」をなくしたい。SNSと心に寄り添うサポートで繋ぐ、新しい家族のかたち

No.029
アントレプレナーシップ学部 アントレプレナーシップ学科 4年
鈴木 瑠花 さん
※所属・内容は取材当時(2025年8月)のものです。活動について
私は、サポート型ブリーダー直販サービス「わんこの窓」を運営しています。この活動は、生まれてから飼い主さんの元に届くまでの流通過程で、年間約2万頭もの犬が亡くなっているという「流通中死亡数」の課題を解決したいという想いから始まりました。
「わんこの窓」は、ブリーダーと飼い主を直接つなぐサービスです。特徴は、Instagramを中心としたSNSでの発信と相談対応に特化している点です。既存のブリーダー直販サイトがなかなか広まらない原因として「認知度の低さ」と「飼い主が自分に合う一頭をどう選べばいいか分からない」という不安があると考えています。そこで私たちはDMなどを活用してお客様一人ひとりの相談に乗り、犬種選びから飼った後のことまでをサポートしています。
また、私たちのチームは、動物看護を学ぶ学生やペットショップでの勤務経験があるスタッフなど、専門的な知識と経験を持つメンバーで構成されています。飼い主さんへのサポートはもちろん、ブリーダーさんに対してもSNSでの新しい販路の確保や広報のお手伝いをすることで、業界全体の持続可能な仕組みづくりを目指しています。
活動のきっかけ
私が動物に関心を持ったのは、獣医師だった祖父や、幼い頃から一緒に過ごしてきた愛犬のミニチュアダックスフンド「ハリー」の存在がきっかけです。物心ついた時から「動物がいるのが当たり前」という環境で育ち、いつの間にか動物全般が好きになっていました。本やインターネットで日本の動物の殺処分の現状を知ってからは、ボランティアに参加したり、関係者の方にインタビューをしたりするようになりました。
活動を続ける中で、殺処分の問題だけでなく、その前段階である「流通中死亡」という形で多くの命が失われている事実を知りました。NPO法人ピースワンコ・ジャパンでのインターン中にその問題に関する記事を読んだとき、自分が解決したい課題はここにあると強く感じました。この命が失われないために何ができるかを考え、様々なサービスを模索した結果、現在の「わんこの窓」という形に行き着きました。
活動の感想
この活動を通して、嬉しかったことは、同じ志を持つ仲間に出会えたことです。私の想いに共感し、応援してくれる友人や教授、そして社会課題の解決を目指すプログラムで出会った仲間たちの存在が、今の私の大きな原動力になっています。特に、私が最初に声をかけ、今も一緒に活動してくれている同級生の存在は、一人で始めたこの活動をチームとして前に進めるための大きなきっかけとなりました。
一方で、大変だったのは、サービスを形にして、実際にわんちゃんがお迎えされる「成約」に至るまでの道のりです。特に、事業の方向性に悩んでいた時期は、多くの人に意見を求めるほど情報が増え、かえって何が正解かわからなくなってしまいました。この経験から、ただがむしゃらに動くだけでなく、溢れる情報の中から真実を見極め、自分の目で「リアル」を確かめることの重要性を学びました。
また、元々は自分のことをあまり話すタイプではありませんでしたが、活動や想いを伝えるためにプレゼンやピッチを重ねるうちに、人に考えを伝える力が身につきました。これも大きな成長だと感じています。
今後の目標
私たちの今後の目標は、まずブリーダー直販という選択肢をもっとたくさんの人に知ってもらい、「わんこの窓」を通してお迎えしてもらうわんちゃんを一頭でも多く増やすことです。そのために、現在はわんちゃんとの出会いをより身近に感じてもらえるような診断コンテンツの開発などを進めています。
そもそも「流通中死亡」とは、子犬がブリーダーからオークション、ペットショップへと渡る複雑な流通過程で、心身の負担により命を落としてしまう問題です。私たちのブリーダー直販は、この中間プロセスを省き、わんちゃんへの負担を直接減らすことで、この流通中死亡数をなくすことに貢献できると考えています。
そして、この活動を通して私が最終的に目指しているのは、「すべてのわんこが、愛してくれる家族の元で一生を終えられる社会」です。ブリーダー直販が当たり前になることで、飼い主さんはわんちゃんの親や兄弟を知ったうえで安心して家族に迎えることができ、質の高いブリーダーさんだけが選ばれる健全な業界環境が育っていくと信じています。ペットを迎えるときには、ペットショップだけでなく、保護犬やブリーダー直販など、さまざまな出会いの形があります。この活動を通じて、一人でも多くの人にその「選択肢」を知ってもらいたいです。

ブリーダーさんの元のわんこと

参加していたプログラム、経産省×JETRO主催「ゼロイチ」でのピッチで

ブリーダーさんの元での撮影の様子

譲渡センターのわんこと
取材・執筆:経済学科3年 森 まや