日本の多文化共生社会に向けた取り組み

No.019
大学院
言語文化研究科 2年
張 津瑞 さん
※所属・内容は取材当時(2024年5月)のものです。活動について
私は「NPO法人青少年自立援助センター」が運営する、YSCグローバル・スクールで日本語教育・学習支援担当として勤務しています。この活動を始めたきっかけは、去年「海外にルーツを持つ子どもたちが日本で暮らすことの難しさ」に関するニュース記事を見たことです。文科省のデータによると、日本語指導が必要な児童生徒は2021年度時点で5万8千人を超えていて、その数は増加傾向にあります。私自身も留学生として、来日後1年間日本語学校に通い、日本語習得に苦労した経験があります。その経験から「何か子どもたちの力になりたい」と考え、ニュース記事の関連リンクに記載されていた「YSCグローバル・スクール」の職員募集に応募しました。
YSCグローバル・スクールでは主に2つの活動をしています。
1つ目は子どもたちの進学サポートです。スクールには、対面・オンライン合わせて年間300名以上の子どもたちが通っており、レベル別に様々なクラスがあります。私はその中で高校進学を目指す生徒を対象とした「放課後プレップクラス」で、週に2回、国語と数学を教えています。
2つ目は中間支援事業です。日本全国のYSCグローバル・スクールと連携している教育団体や海外にルーツを持つ子どもに関する事業を展開しようと考えている方に向けて、子どもの受入れに必要な多文化対応研修や伴走型支援を行っています。前回の研修会では「日本語を教える教師の方に母語ではない言語で学ぶ子どもたちの気持ちを理解してほしい」と思い、講師として約100人の参加者に向けて、言語体験(韓国語での模擬授業)を行いました。この研修は私の持つ複言語能力を活かせたと自負しています。また研修会終了後には、参加者と情報共有を行いました。地方団体の経営状況や日本語学校を広めていくための広報施策についても話し合うことができました。
今後の目標
YSCグローバル・スクールでの様々な取り組みを通じて日本語指導が必要な子どもたちの成長を支援することには大変やりがいを感じます。特に自分のクラスの生徒が高校進学を決めた時は、生徒が社会で活躍するための第一歩を手助けできたことに喜びを感じました。
今後は、地域社会との連携を強化し、支援のネットワークを広げることで子どもたちにより多くの支援を提供したいと考えています。この活動を通じて、海外にルーツを持つ子どもたちの可能性を広げ、日本におけるインクルーシブ・ダイバーシティの構築に貢献できると嬉しいです。
また、私は現在大学院で「留学生への支援行動」について研究をしています。例えば、アメリカには留学生を指導する専門職「留学生アドバイザー」という職業がありますが、日本にはそのような専門職がありません。教員がその役割を担っていますが、研修やマニュアルが不十分で、最善の支援ができていないのが現状です。今後はこの研究を形にしていくとともに、大学院卒業後は教育機関で留学生の支援に携わりたいと思っています。自分の留学生としての経験やYSCグローバル・スクールでの活動、大学院での研究内容・成果を活かして日本の多文化共生社会に貢献していきたいです。
関連URL
- YSCグローバル・スクール
https://www.kodomo-nihongo.com/index.html

授業の様子

分からないところは個別に教える

お昼休みに日本のゲームに挑戦

近くの公園で日本の遊びを体験

卒業式の様子①

卒業式の様子②