グローバル学部日本語コミュニケーション学科の志賀 玲子教授とゼミ生30名が、10月5日に江東区の豊洲文化センターで、江東区内在住の方約20名とともに「みんなで話そう!やさしい日本語リーフレットを作るワークショップ」を実施しました。
地域住民と多文化共生について話し合う~外国籍住民が約4万人暮らすまち江東区を、暮らしやすいまちにするために~

この取り組みは、外国人住民が増え、多様な文化や価値観を持つ人々が暮らす江東区において、言葉や文化の違いがあっても、誰もが安心して地域で暮らせる環境をつくることを目指すものです。江東区には外国籍区民が約4万人暮らしており、これまでも、「やさしい日本語」の普及や外国人住民への日本語学習支援など、多文化共生に向けた取り組みを進めてきました。
今回、江東区と本学が連携し、グローバル学部日本語コミュニケーション学科の志賀 玲子教授とゼミ生、江東区民が「多文化共生」をテーマに話し合うワークショップを開催しました。 本ワークショップでは、日々の生活で感じる日本と母国の生活習慣やルールの違い、困りごとなどを抽出し、これから作成するリーフレットに盛り込むべきメッセージやテーマについて意見を交わしました。ここで出された意見をもとに、志賀ゼミで意見をまとめ、制作会社を交えて江東区と共同で制作を進め、令和8年度末(2027年3月)のリーフレット完成を目指します。
「目玉焼きに味付けをするとしたら、何が好き?」─「多文化共生入門」から、身近な「違い」を考える

ワークショップに先立ち、志賀教授が「多文化共生入門」と題して約40分の講演を行いました。 講演では、参加者同士の交流を取り入れながら、身近な「違い」について考えました。日本人と外国人がペアになり、「過去と未来、どちらに行きたい?それはなぜ?」という志賀教授からの問いかけに、隣り合った参加者同士で意見交換を行いました。さらに、身近な食品である「卵」を例に、母語では卵はなんと発音するのか、どのように調理して食べるのか、母国にも同じような食べ方があるのかを話し合った後、志賀教授から「目玉焼きに味付けをするとしたら、何が好き?」という問いが投げかけられました。
塩、しょうゆ、マヨネーズ、ケチャップなどさまざまな選択肢から参加者が各自の好みを選択しましたが、国籍による偏りはありませんでした。志賀教授は、「文化の違いとよく言いますが、結局はひとりひとりに違いがあるんですよね」と説明しました。
また、異なる文化を受け入れていく過程についても触れ、「違い」を拒否する段階から、自分の基準で理解しようとする段階、さらに相手との違いを受け入れ、相手の立場や見方を想像しその言動を捉えようとする段階へ進んでいくことを説明しました。
「母国では当たり前」が、日本では「違う」? 身近な生活の中にある文化の違い

講演後のワークショップでは、参加区民と学生が7つのテーブルに分かれ、テーマに沿って意見を交わしました。 テーマは、「交通ルール」、「ごみの出し方」「休暇の過ごし方」「暮らしの中の音」「日本の住まい」などテーブルごとに異なり、各テーマについて母国と日本との生活習慣やルールの違いを、参加者自身の経験をもとに話しました。「交通ルール」については、「中国は監視カメラがつくようになってからルールを守るようになった。日本はカメラもないのにルールを守っている。」「日本は車が人に道を譲る」という意見がありました。
「暮らしの中の音」については「音楽やテレビの音量、日常生活の中で出る音など、母国では普通だと思っていたことが、日本では『うるさい』と言われることがある。どこまでが普通なのか、その基準が分からない」という声が上がりました。
また、ごみの分別についても、国による違いが話題になりました。燃えるごみと燃えないごみの分け方や、ペットボトルの扱いについて、「ベトナムでは都市ごとにルールが違って、分類しない都市がある」「台湾ではキャップと本体を分ける」「日本ではキャップやラベルを外して分別する」など、それぞれの国で異なるルールや習慣が紹介されました。言葉として明確に示されているルールだけでなく、「これくらいは普通」「これは当然」と多くの人が無意識に共有している生活上の常識にも、文化による違いがあります。参加者は、自分にとっての「当たり前」が、必ずしも相手にとっての「当たり前」ではないことを、具体的な経験を通して考えました。
ワークショップを通して、誰にとっても「もっと伝わる」リーフレットに
今後、志賀ゼミの学生が今回の意見を整理し、制作会社と共有しながら、リーフレットに盛り込む内容を検討していきます。言葉を「やさしく」するだけではなく、外国人住民が地域で暮らす中で「何が分かりにくいのか」「何に戸惑うのか」に目を向けることで、誰にとっても「もっと伝わる」リーフレットの制作につなげていきます。
学生コメント
- 自分の国では当たり前だと思っていたことも、ほかの国の人にとっては違う場合があり、お互いの文化について知ることの大切さを改めて感じました。
- 今回の交流を通して、自分とは異なる考え方を知ることができ、異文化理解についてさらに考えるよい機会になりました
- 日本語を勉強する外国人の方々と直接交流することで、日本語を勉強する時どのような部分に躓くのかなどを知ることができ参考になった
- 参加者同士が母語に関係なくコミュニケーションを取れていることができていて良かったと感じた。
- こうした交流は、お互いの国への思い込みを見直し、距離を縮めるよい機会だと感じました。さまざまな国の人が共に暮らす社会につながる、すごく意義ある活動だと思います。
- 他の参加者の意見を聞き、新しい視点を得られてとても勉強になりました。
江東区担当者コメント「相互理解と地域での交流のきっかけとなるリーフレットの作成を目指す」
江東区地域振興課多文化共生担当 蛭田 彩佳さん
今回、武蔵野大学の皆様のご協力により、充実したワークショップを実施することができました。参加者の皆様に経験や考えを共有していただき、相互理解を深めるとともに、私たちも多くの学びを得ることができました。講演では、教授が参加者に「ご起立ください」と呼びかけ、外国籍の方にはその意味が伝わらない場面がありました。日本人には当たり前の言葉でも伝わりにくいことがあると気づき、やさしい日本語の大切さを改めて実感しました。
文化や言語が異なっても、同じ地域に暮らす住民としてお互いを認め合い、誰もが安心して暮らせるまちにしていくためには、お互いを知り、交流を深めることが大切だと考えています。「やさしい日本語」と身近な生活の話題を通じて、相互理解と地域での交流のきっかけとなるリーフレットの作成を目指してまいります。
担当教員コメント「多文化共生を進めていくには、言葉に出して伝えあうことが大事」
グローバル学部日本語コミュニケーション学科 志賀 玲子教授
今回のワークショップで参加者のコメントに「基準が分からない」という言葉がありました。まさに、何となくの常識、文になっていないルールが外国籍の人を困らせている一番の要因です。多文化共生を進めていくには、自分の常識で安易に判断しないで、言葉に出して伝え合うことが大事です。そしてその際、言葉や表現を調整することによって、より多くの人にメッセージを伝えることができます。今回のワークショップで出された「困っていること」を、今後「やさしい日本語」リーフレットで、伝わりやすい日本語を使って解説できればと考えています。
関連リンク
- グローバル学部日本語コミュニケーション学科
https://www.musashino-u.ac.jp/academics/faculty/global_studies/japanese_communication/ - 研究者紹介─学問の地平から─ 第92回 日本語教育学 グローバル学部 日本語コミュニケーション学科 志賀 玲子 教授
https://www.musashino-u.ac.jp/research/interview/92_shiga/index.html - 江東区ホームページ 江東区を「もっと伝わるまち」にする『やさしい日本語リーフレット』
https://www.city.koto.lg.jp/101034/yasanichileaflet.html - グローバル学部日本語コミュニケーション学科の神吉ゼミが、豊洲場外マルシェで地域防災のイベントを実施(2026年6月3日掲載)
https://www.musashino-u.ac.jp/news/detail/20260603-8351.html - 日本語教育の新たな可能性を現地で実践 -グローバル学部日本語コミュニケーション学科生12名がタイ・台湾での海外インターンシップを実施-(2026年5月25日)
https://www.musashino-u.ac.jp/news/detail/20260525-8263.html