「自分への思いやり」をゲームで形に。アプリに込めた、自分と向き合うヒント

No.031
人間科学部 人間科学科 3年
加藤 杏奈 さん
※所属・内容は取材当時(2025年10月)のものです。「優しい言葉」が花の栄養に。ゲームで始める心のセルフケア
私は、「副専攻(AI活用エキスパートコース)(以下:AI副専攻)※」の学びの集大成として、セルフ・コンパッション、つまり「自分への思いやり」を育むためのアプリ「BlooMe(ブルーミー)」を開発しました。これは、画面の中でバーチャルなお花を育てる、とてもシンプルなゲームです。特に、日々学校生活を頑張っている子どもたちに、遊びを通して自分を大切にする感覚を育んでほしいと考えました。ユーザーが種に「思いやりのある言葉」をかけると、それが水や栄養となり、少しずつ芽吹き、やがて綺麗な花を咲かせます。実はこの一連の体験こそが、「自分に優しく声をかける練習」になるという仕掛けです。このアプリが、ゲームという親しみやすい形で心と向き合う温かい時間を提供できればと願っています。最後に咲く6種類の花には素敵な花言葉が託されており、プレイするたびに新しい自分と出会えるかもしれません。子どもから大人まで、幅広い世代にとって自分自身をいたわるきっかけになれば嬉しいです。
※武蔵野大学は、AIが当たり前になる未来を見据え、AIを使いこなすための知識とスキルを学ぶ「副専攻(AI活用エキスパートコース)」という独自の教育プログラムを設けています。学部や学科の専門分野に加えて、AIをもう一つの専門として学ぶこのコースは、AIを「仕事を奪うもの」ではなく「仕事を創り出すツール」として捉えることを目指しています。私自身にも足りなかった視点。「セルフ・コンパッション」との運命的な出会い
「アプリを作ってみたい」という漠然とした憧れが全ての始まりでした。プログラミングは未経験でしたが、挑戦するなら主専攻の心理学を活かしたいと考えていました。心のケアについて調べる中で、特に子どもたちの自己肯定感の低さという課題に強い関心を抱くようになりました。子どもの頃の経験がその後の人生に大きく影響することを心理学の学びで実感していたからです。
そんな中、偶然「セルフ・コンパッション」という概念に出会いました。それは、苦しい時には自分に優しく接し、うまくいった時には祝福する「自分への思いやり」を持つという考えでした。そのルーツが仏教にあると知り、仏教精神を大切にする武蔵野大学で学ぶ私にとって運命的な出会いだと感じました。そして何より「自分を思いやる」という視点が、当時の私自身にも欠けていたことにハッとさせられたのです。子どもたちが幼い頃から自然な形で自分を肯定できるよう、その手助けをしたいという思いが、開発の大きな原動力となりました。
支えてくれたのは、AIと「人」の優しさ。未経験からの挑戦
プログラミング未経験の私にとって、開発はまさに格闘の日々でした。特に、ユーザーがかけた言葉に応じて咲く花が変わる仕組みは複雑で、何日も頭を悩ませました。そんな時、作業が停滞するたびに頼ったのが、最高の相棒であるChatGPTです。とにかく質問を重ね、試行錯誤を繰り返すことで少しずつ前に進んでいきました。しかし、どうしても自分では解決できない壁にもぶつかりました。5時間以上も悩んだエラーに途方に暮れていた時、思い切ってアプリ開発に使用していたツールの公式サポートに助けを求めたところ、返ってきたのは「10秒処理を遅らせてみて」という意外な一言。このアドバイスで問題は驚くほどあっさり解決し、この経験を通して、一人で抱え込まずに人を頼ることの重要性を痛感しました。
また、発表練習に何度も付き合ってくださった先生方の存在も大きな支えでした。「ここをこうしたらもっと良くなるよ」という温かいフィードバックが、常に私を導いてくれました。まさに、テクノロジーと人の優しさの両方に支えられて乗り越えられた壁だったと思います。この経験は私にとって何物にも代えがたい財産となり、最終的に成果発表会で優秀賞をいただき、企業の方からもお褒めの言葉をいただいた瞬間は、これまでの全ての苦労が報われたように感じ、大きな感動と自信につながりました。
このアプリを、自分を大切にする「第一歩」に。テクノロジーで心に寄り添う未来へ
この「BlooMe」が、誰かにとって自分自身を大切にする第一歩になってくれたら、これほど嬉しいことはありません。今後は、音声読み上げ機能を追加するなど、より多くの方にこの体験を届けられるよう改良を重ね、当初のターゲットであった子どもたちに実際に遊んでもらう機会を作りたいです。教育現場やご家庭で、子どもたちが自分を大切にする心を育むツールとして活用していただけたら、本当に嬉しいです。将来的には公認心理師の資格を取得し、新しい時代の心のケアを模索していきたいと考えています。仏陀は「あなたの思いやりにあなた自身を含まないなら、その思いやりは不完全である」という言葉を残しました。この記事を読んでくださった皆さんも、どうかまず、ご自身のことを一番に思いやってあげてください。自分自身に、もっともっと優しい言葉、思いやりのある言葉をかけていいんだよ、ということをお伝えしたいです。

アプリ画面①

アプリ画面②

開発画面①

開発画面②

ポスター発表
取材・執筆:経済学科3年 森 まや