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「はちみつ愛」が育む都市の循環ー有明キャンパス屋上発のサステナブルな「都市養蜂」

No.033

工学部 サステナビリティ学科 2年

比嘉 琉哉 さん

※所属・内容は取材当時(2025年9月)のものです。

都市の眠れる蜜源を活かす!都市養蜂が生み出す多角的な活動の輪

私は、有明キャンパス3号館で屋上での養蜂活動に取り組んでいます。活動内容は幅広く、屋上でのミツバチの飼育を中心に、近隣のかえつ有明高等学校で養蜂活動支援を行ったり 、有明まつりやサステナビリティ学科主催の「じゅんぐりマーケット」などの地域イベントに参加したりと、蜂蜜を通じて地域と交流しています。さらに、2006年からビルの屋上で養蜂を始めた「都市養蜂」のパイオニアである銀座ミツバチプロジェクトが主催するイベントへの参加や養蜂家の方との交流を通じて知識を深めたり、テレビ東京『種から植えるTV』に出演して活動を紹介したりと、積極的な情報発信も行っています。

屋上での養蜂活動の一番の特徴は、「都市の未活用資源を活かし、環境循環を促す」ことです。都市には、景観維持のために整備された街路樹や花が豊富にありますが、その蜜を吸いに来る動植物が少ないため、貴重な蜜源が眠ったままになっています。ミツバチを呼び込むことで、この蜜を資源として活用できるだけでなく、ミツバチがポリネーター(花粉媒介者)として機能し、都市の緑化にも貢献してくれます。

純粋な好奇心から確信へー循環の理念が変えた都市養蜂の捉え方

私の活動の原点は、何よりもまず「はちみつが好きだから」という想いです。武蔵野大学への進学が決まったとき、サステナビリティ学科の前身である環境システム学科の明石 修先生のラボが、以前から屋上養蜂プロジェクト「Rooftop bee」に取り組んでいることを知りました。「これこそ私がやるべきことだ!」と感じ、入学後、活動に参加しました。

活動を始めて3〜4ヶ月ほど経った頃、明石先生から「パーマカルチャー」という理念を教わったことで、都市養蜂への捉え方が大きく変わりました。パーマカルチャーとは、permanent(永続的な)、agriculture(農業、農耕)、culture(文化)を組み合わせた言葉で、人と自然が共に豊かになれるよう、持続可能な環境・社会を作り出すためのデザインをしていくことを意味します。この学びを通して、ミツバチは、パーマカルチャーにおける環境循環の輪に非常に入りやすい存在だと感じ、都市養蜂が「環境へのアプローチの一つとして有用である」と確信しました。

また、近隣のかえつ有明高等学校に初めて巣箱を設置した際の生態系の変化は、特に印象的でした。ダニ対策で巣箱から取り除いた幼虫を土に返すと、それを食べに鳥が明らかに増えたのです。これは、私たちの活動が周辺の生態系にも好ましい影響を与えている証拠であり、環境への貢献を肌で感じ、熱意がさらに深まる出来事でした。

知識ゼロから特別賞へー命の重さを知る内検作業と成長の軌跡

活動を通じて、最大の壁となったのはミツバチに関する知識でした。ミツバチの習性について無知な状態からスタートしたため、全てを理解しないとお世話すらできないという状況が非常に大変でした。特に、巣の状況を確認する「内検」作業は、やるべきことが多く、ミツバチや巣の異変、寄生虫などを一度でも見逃してしまうと、群が全滅してしまう」リスクや、分蜂(巣分かれ)を引き起こしてしまう事例があるため、常に大きな緊張感が伴いました。例えば、小さすぎて見逃しやすい女王蜂の卵を目視で確認しなければならないのですが、この感覚を覚えるのは大変でした。難しさを感じましたが、その困難を乗り越えた後の成果は、格別の喜びでした。蜂蜜の収穫はもちろん、一緒に取り組んできたかえつ有明高等学校の採蜜やイベントの成功を聞く時、さらにはこの活動のおかげで様々なイベントに誘っていただける時も、大きな達成感を感じます。そして、活動が認められた瞬間こそが、「一番やっててよかった」と感じる瞬間です。特に、学科のプロジェクト最終発表会で特別賞を受賞し、審査員として参加していた企業の方に、「一番熱意があった」というコメントをいただけたことは、自分が積み重ねてきた努力が社会的に認められたと実感できました。

蜂蜜を「鍵」に、経済循環を加味したプロジェクト構想

今後の目標は、現在の活動をさらに発展させ、都市養蜂を広く社会に広めていくことです。都市で環境貢献に取り組む人を増やしていくために、今後は、「経済循環」も意識してプロジェクトを展開していきたいと考えています。そのためには、都市養蜂の活動だけでなく、その成果物である蜂蜜をどう上手く利用するかが鍵になります。企業と協力してはちみつを使った加工品を作り、販売まで実現できれば、経済循環の面も加味した持続可能なプロジェクトにできると考えています。また、普及活動においては、サステナビリティ学科の最終発表に来ていただいた方や、3号館屋上を訪れてくれた方など、すでに都市養蜂に興味を持ってくださった団体に積極的にアプローチをすることで、より多くの人に都市養蜂の価値を届けて行くことを目指しています。

はちみつの販売風景(無印良品様)

かえつ有明高等学校での養蜂作業の様子


訪花しているミツバチ
足に大きな花粉玉を付けているのが特徴

ダブルツリーbyヒルトン東京有明様でのはちみつの販売風景

はちみつの採蜜風景
遠心分離機を使ってはちみつを巣から取り出す

屋上ツアーの様子
都市養蜂についての説明をする比嘉さん

取材・執筆:経済学科3年 和田 みんみ

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