後輩たちの未来のために。学生主体でつなぐ支援の輪

No.037
人間科学部
社会福祉学科4年
岡瀬 愛良 さん
※所属・内容は取材当時(2025年11月)のものです。後輩たちの未来を支える学生スタッフとしての役割
私は、親を亡くした子どもたちや、障がいがあり働くことが困難な家庭の子どもたちを奨学金、教育支援、心のケアで支援する民間非営利団体「あしなが育英会」のあしなが学生募金事務局の局員(学生スタッフ)として活動しています。主な活動は、奨学金を支える「街頭募金活動」の運営と、遺児家庭の現状を伝える「出前授業」です。街頭募金では、どの駅に立って募金の呼びかけを行うかといった作戦会議から、当日参加してくれるボランティアさんのケア、警察署への挨拶回りといった安全管理や募金の趣旨説明など拠点の“責任者”として責任ある活動をしています。また、出前授業では都立高校や武蔵野大学で授業を行い、私の経験も交えながら遺児家庭の現状や、街頭募金の意義をより多くの人に知ってもらう機会としてお話しています。これらの活動を通じて、支援の輪を広げ、後輩たちへバトンをつなぐことが私たち局員の役割です。
「支えられる側」から「支える側」へ
この活動を始めたのは、私自身が高校3年生の時に親を亡くし、あしなが育英会の奨学生として支えられてきた経験があるからです。活動に参加し始めた当初は、ただ街頭募金に参加しているだけでした。正直「やらなければいけない」という義務感で立っていたのが本音です。当時は、人前で大きな声で募金を呼び掛けたり、自分の経験を話したりすることがとても苦手でした。しかし、活動を重ねるうちにその気持ちは少しずつ変わっていきました。募金をしてくださる方から、「頑張ってね」や「応援してるよ」といった温かい言葉をかけていただいたり、「実は自分も、以前募金活動をしていたんです」と話しかけていただいたりする中で、この活動が多くの人の温かい心のもとで成り立っていることを肌で感じ、だんだんと楽しいなと思えるようになっていきました。
この募金は、今すぐ自分のためになるのではなく、これから奨学金を必要とする後輩たちのためのものです。大学で福祉を学ぶ中で感じた「助けられるだけの存在ではなく、誰かを支えられる人になりたい」という想いが、自分と同じように困難を抱える後輩たちの力になりたいという気持ちと重なり、募金の運営を担う「局員」として主体的に関わることを決めました。
活動の中で感じた“誰かの未来につながる”という実感
この活動を通して得られた一番の喜びは、自分の行動が誰かの未来に繋がっているという実感です。少し前に、甲府駅での募金活動が地元のテレビ番組で放送されたのですが、慣れない取材に緊張しながらも精一杯想いを伝えたところ、翌週に同じ場所で活動しているときに「テレビを見て来たよ」と募金に来て下さる方が何人もいました。街頭募金の成果が、翌年度の奨学生の採用人数や給付額にそのまま反映されるため、前年度よりも採用者が増えて困っている後輩たちの助けになれたとき、本当に続けてきてよかったと思います。また、同じ境遇にある仲間と出会えたことも、私にとってかけがえのない大切な経験です。普段はなかなか話せない家庭のことも、ここでは安心して打ち明けられます。励まし合える仲間がいるからこそ、困難も乗り越えられました。
一方で、学生主体だからこその大変さも常にありました。街頭募金では、2人で30人以上のボランティアをまとめることもあり、責任者の立場として万が一の事態に備えた細かい準備も欠かせません。出前授業では、他のスケジュールと並行して準備を行い試行錯誤を重ねて何度も構成を練り直しました。しかし、こうした困難な経験こそが、私を大きく成長させてくれました。もともと人前で話すのが苦手だった私が、今では大勢の学生の前で堂々と話せるようになり、義務感から始まった活動がいつしか自分自身の自信とやりがいを見出す大切な場所に変わっていきました。これが、この活動を通じて得た一番の成長だと感じています。
支援の経験を未来へ。後輩たちに「選択肢」を届けたい
私は現在大学4年生で、先日最後の街頭募金活動を終えました。大学卒業までの残り数か月は、これまで以上に「出前授業」に力を入れていきたいです。高校生の中には、経済的な理由で進学を諦めてしまっている子や、奨学金制度の存在自体を知らない子もいるかもしれません。そうした子どもたちに、未来への選択肢があることを知ってもらう機会を作りたいです。そして、卒業後は社会福祉領域で働く予定です。この活動を通じて学んだ経験や、支援を受ける側の気持ちと支える側の視点、その両方を大切にしていきたいです。また、私は「自分が幸せでなければ、人を心から助けることはできない」と感じています。今後は、まずは自分の軸をしっかり持って、そこから活動で得た広い視野を活かして困難を抱える人に寄り添うことのできる支援者として成長していきたいと考えています。
取材を終えて
今回、取材をしていく中で岡瀬さんの言葉一つひとつから伝わってくる深い優しさに同じ学生として心を打たれました。特に印象的だったのは、「助けられるだけの存在ではなく、誰かを支えられる人になりたい」という想いです。ご自身の経験を原動力に変え、後輩たちの為に活動をされている姿は力強さと誰かのことを思いやることのできる温かさが満ちていました。学生という立場で社会に働きかけることはとても難しいことですが、真摯に向き合い活動された岡瀬さんのお話を聞いて、私自身も誰かのために自分に出来ることから一歩を踏み出す勇気をもらえたような、そんな貴重なお話でした。
取材・執筆:経済学科 3年 森 まや