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"行ってみたい"が"また帰りたい"に変わるまで。甘夏風呂プロジェクトin尾鷲

No.046

教育学部幼児教育学科2年

髙木 海弥子 さん

教育学部教育学科2年

横山 晃翔 さん
丸 将太 さん

※所属・内容は取材当時(2026年5月)のものです。

地域課題から生まれた「甘夏風呂」企画

私たち3人は「SDGs発展3」の授業の一環で、三重県尾鷲市を舞台に地域活性化プロジェクトを行いました。この授業では、島田由香先生のもとで「地方創生2.0」の内容を活用しながら、石川県能登町、和歌山県みなべ町、三重県尾鷲市の3つの自治体が抱える課題を学びました。「地方創生2.0」とは、デジタル技術や新たな人とのつながりを活用し、地域が自立して発展できる仕組みづくりを目指す考え方です。授業では3つの地域の中から尾鷲市を選択した21名の学生一人ひとりが地域課題の解決策を提案し、自治体関係者へのプレゼンテーションを実施しました。その中で最優秀案として採用されたのが、私たち3人の中の髙木が考案した「甘夏風呂」です。

アイデアのベースは、尾鷲市の人口減少や高齢化、地元の銭湯減少という現状を授業で知り、「まずは地元のお年寄りを大切にして地域コミュニティを元気にすることが、結果的に外の人を引きつける魅力に繋がるはず」という視点でした。そこで、尾鷲市の名産であり大切な地域資源である「甘夏」に着目し、見た目のインパクトがあり高齢者にも喜んでもらえる企画として「甘夏風呂」を考えました。

そして、「自分たちの目で現地の課題を見た上で甘夏風呂を実現したい」と手を挙げたのが丸と横山でした。将来は自然豊かな地域で教員として働きたいと考えている丸は海と山が共存する環境に惹かれ、事前に尾鷲を深く調べていた横山は豊かな自然と美味しい食べ物に惹かれて参加を決めました。こうして同じ教育学部で同学年の3人のメンバーが集まり、プロジェクトが本格的に始動しました。

地域と自然に飛び込んだ、4日間の挑戦

私たちは、授業で提案した地域課題の解決アクションを実際に尾鷲市で形にするとともに、地域の方々との交流を通して尾鷲市の魅力や課題を深く理解することを目的に、3泊4日のフィールドワークを行いました。

1日目は到着後すぐに、地域の方が車に乗せて案内してくださるミニツアーに参加しました。地元の人しか知らない隠れた名所を巡ったり、これから3泊4日を過ごす上で深く関わっていく大切な場所の数々を説明したりしていただきました。事前に調べただけでは知らなかった尾鷲のリアルな街並みや魅力に直接触れ、地域の方々の温かさをさっそく肌で感じる最高のスタートとなりました。夜には熊野古道センターで環境活動家・坂田昌子さんから、生物多様性や森と海を持続可能にするための考え方について講義を受けました。翌日の実践につなげるため、山・川・海が互いに支え合う自然の仕組みについて理解を深めました。

2日目は九鬼町の伝統行事「九鬼のぶり祭り」に参加し、地域の方々との交流を通して、祭りは文化を守るだけでなく、人と人とのつながりを支える大切な場であることを学びました。午後からは坂田さんの生物多様性ワークショップに参加し、山の環境改善活動に取り組みました。1日目の坂田さんの講義で学んだ「森林環境の変化は川を通じて海にも影響し、林業や漁業などの地域産業にも関わる」を実践するために、雨水による土壌流出を防ぐ石積みや川の流れを整える作業を行いました。この活動を通して、森林を守ることが海や地域の暮らしにつながることを体感しました。

3日目は平山農園で甘夏を収穫し、生産者の方から甘夏への思いや地域資源としての価値を学びました。午後にはデザイナーの方と協力しながら甘夏風呂のPRチラシを制作しました。初めてのチラシ作りは難しさもありましたが、地域の魅力を分かりやすく発信する方法を学ぶ貴重な経験となりました。夜には植樹に向けた穴掘りを行いました。

4日目は早朝から「夢古道の湯」の露天風呂へ3本の甘夏の木を植樹し、実際に甘夏風呂を実施しました。今回のメイン企画である「甘夏風呂」は、当初は甘夏をお風呂に浮かべる企画として考えていました。しかし、地域の方々との話し合いを重ねる中で、「一度きりのイベントではなく、地域に長く残る取り組みにしたい」という思いが生まれました。そこで、甘夏風呂を実施しつつ、温浴施設「夢古道の湯」の露天風呂に甘夏の木そのものを植樹するという新たなアイデアへと発展しました。露天風呂に甘夏を浮かべるだけでなく、脱衣所には甘夏の果皮を使ったアロマストーンを設置し、施設全体で甘夏の香りを楽しめる空間を演出しました。私たちも風呂を体験し、甘夏の爽やかな香りや彩りに包まれた尾鷲ならではの魅力を五感で感じることができました。

尾鷲で出会った、人の温かさとつながり

現地での4日間を通して、私たちは尾鷲の自然や人の温かさに触れただけでなく、「地域づくりは人とのつながりによって支えられている」ということを実感しました。宿の目の前に広がる穏やかな港や美しい朝日の景色に癒やされるとともに、九鬼のぶり祭りでは地域の方々との交流を通して、近所同士で自然と支え合う地域コミュニティの深い絆を感じました。
また、島田先生や市役所の皆様、地域の方々が尾鷲を盛り上げようと主体的に活動する姿にも大きな刺激を受けました。東京から来た私たちを家族のように迎え入れてくださった温かさは、丸にとって忘れられない経験となりました。髙木は、自分が提案した企画が多くの方々の協力によって実現したことで、人とのつながりが地域づくりの原動力になることを実感しました。もともと人と関わることに苦手意識があった横山も、地域の方々との交流を通して、人との関わりを大切にしたいという思いを持つようになりました。

この経験を、次の一歩へ

私たち3人は全員が教育学部に所属しており、将来は教育関係の仕事に就きたいと考えています。現地での4日間は、私たちが目指す将来への明確な一歩を踏み出すきっかけとなりました。

髙木は「少しでも多くの人に尾鷲市のことを知ってもらえる活動をしたい。今回限りの繋がりにせず、これからもお互いに協力できることを考えたい」という思いを持っています。今後は東京のアンテナショップの活用やメンバー間で「オリジナルTシャツの制作なども挑戦してみたい」というアイデアが出るなど、継続的な関係人口づくりに向けた模索を続けています。
丸は「子どもたちが個性を生かせる環境を提供できる教員を目指すために、大学在籍中にもっと様々な実践を重ねたい」と向上心を燃やしています。また横山も、森の再生ワークショップで実践的な知識を得ただけでなく、「もともと人と関わることが苦手だった自分が、地域の方々の温かさに触れて、今後は人との関わりを大切にしたいと思えるようになった。ここで得た経験を将来子どもたちに伝えたい」という目標ができました。私たちは、植えた甘夏の木が実をつける姿を見に、大好きな尾鷲の皆様にまた帰る日を心から楽しみにしています。

一日目の晩御飯の時の集合写真
ポスター制作の様子
甘夏の木の植樹
甘夏風呂

取材を終えて

大学の授業でのアイデアが、市役所の皆さんや地元の方々のたくさんの優しさに支えられて、こんなに素敵なプロジェクトとして形になったお話を聞いて、私自身もとても温かい気持ちになりました。インタビュー中の3人の笑顔や、尾鷲が大好きだという言葉から、地域を元気にすることの本質は、こうして「目の前の人を大切に想う心」から始まるのだなと深く学びました。
ただ楽しかったという思い出だけで終わらせず、次へのステップに変えようとする前向きな姿勢や、自分たちが学んでいる教育に結びつけて未来を考えている姿は、同じ学生としてとても刺激になりました。東京と尾鷲という離れた場所であっても、3人がこれから新しく紡いでいく温かい繋がりや、来年の夏に実るという甘夏の成長が、これからどのように広がっていくのかとても楽しみです。

取材・執筆:経済学科 4年 和田 みんみ

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