人間科学部社会福祉学科では2年次に「発展ゼミナール」という必修授業を行っています。発展ゼミナールでは、学生全員が「ソーシャルアクション」に取り組みます。
ソーシャルアクションとは、人々の生きづらさを生み出す原因となっている社会構造そのものに働きかけを行うメゾ・マクロレベルのソーシャルワークの活動です。各クラスで3~4人の小グループを作り、夏休み前から準備をはじめて、身近な社会問題の解決、軽減に向けた活動を実際に行ってきました。
今年度は、全クラス合わせて43のアクションを起こしました。一部の活動を、全5回の連載で紹介していきます。第1回は渡辺 裕一教授のクラスの「過疎地域・限界集落の課題発見」の活動を紹介します。
「何かしたい」から始まった地域との出会い ――過疎地域・限界集落と向き合った学生たちの挑戦
人口減少や高齢化が進む過疎地域・限界集落について、ニュースや統計で目にすることはあっても、実際にそこに暮らす人々の声に触れる機会は多くありません。渡辺先生のクラスのメンバーは、「過疎地域・限界集落で起きている困りごとを解決したい」という思いから、ソーシャルアクションをスタートさせました。
過疎地域:長期にわたり著しい人口の減少が生じ、学校や商店などが閉鎖され地域の活力が乏しくなった地域のこと
限界集落:65歳以上の高齢者が集落人口の50%を超え、集落の共同活動の機能が低下し、社会的共同生活の維持が困難な状態にある集落のこと
課題を“知る”ため、意識調査を実施
「社会課題を変える」といっても、何が課題なのかを明らかにしなければ、アクションの方向は定まりません。学生たちはまず、SNSを通じて大学生や若者世代を対象に過疎地域や限界集落に対する意識調査を行いました。100名近くからの回答の結果、「問題が多い地域」というイメージが先行して印象づいている一方、実際の暮らしや地域の魅力については十分に知られていない現状が見えてきました。
現地での気づき――すでにある魅力を引き出し、住み続けられる地域づくりへ
意識調査を経て「限界集落に住んでいる地域の人たちはどんなことに困っているのだろう」という問いを立て、アクションのフィールドに選んだ山梨県笛吹市芦川町に足を運ぶ中で、学生たちの考えは変わっていきました。
当初は「困りごとを解決する」という視点が中心でしたが、実際に地域の方々と話す中で気づいたのは、「外から解決策を持ち込む」のではなく、地域にすでにある魅力を引き出し、尊重することの大切さでした。そこで、最初に考えていたアクションプランから、「住み続けられる地域づくりに向けたアクションを行うこと」にシフトしていきました。


私たちにできることは、つながること
学生たちは発展ゼミの担当教員だけでなく他学科の教員や学生とも意見交換を重ね、「今、自分たちにできることは何か」を模索しました。そして導き出した答えは、まずは地域の人とつながることでした。
芦川町で開催された農産物直売所の感謝祭に参加し、住民の方々と直接交流を行いました。イベントの準備や運営を手伝いながら、地域の歴史や日常、想いを聞く時間を重ねました。その中で見えてきたのは、地域の方々の誇りや、土地に根ざした暮らしの豊かさでした。


小さなアクションから、大きな未来へ
「住み続けられる地域づくり」とは、特別な大型プロジェクトだけを指すものではありません。日常の中での対話や交流、地域の魅力を発信することも、大切な一歩です。学生たちは、小さなアクションを積み重ねることが、やがて地域の未来につながると実感しました。
大学での学びが、地域と結びつく
このソーシャルアクションは、学生たちが自ら問いを立て、調査し、現地に足を運び、関係性を築きながら学びを深める実践的な活動となりました。過疎地域・限界集落の課題は、決して縁遠い場所の話ではありません。これからの社会を担う世代にとって、地域との向き合い方を考えることは、自分たちの未来を考えることでもあります。
「何かしたい」という小さな思いから始まった挑戦。その一歩が、地域と大学をつなぐ新たな関係づくりへと広がっています。