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2017.10

新世代法学部の実績報告―受験生の皆さんへ

武蔵野大学法学部長『有明日記』その2―続々と出て来た「結果」について

法学部長(副学長) 池田眞朗

大教室双方向授業

お待たせしました。「新世代法学部」を標榜して2014年に誕生した本学の法学部は、今年完成年度を迎え、4年生となった1期生が、次々と結果を出してくれています。教員・学生の一丸となった努力が、数字になって皆さんに報告できる段階になってきました。来年度2018年度の5期生を迎えるにあたって、私からのメッセージをお伝えします。

有力法科大学院に続々合格―法曹士業プログラムの成果

まず法律学科です。「新世代法学部」は、「マジョリティのための法学教育」を標榜して、ビジネスや公務員を二大進路と考えて、「ルールを創れる人を育てる」ことを目標にしてきました。この場合の「ルール」は、法律に限りません。地方自治体の場合は条例であり、会社で言えば定款であり就業規則であり、もっと言えばマンションなら管理組合の規約であり、同窓会や町内会の決め事も「ルール」です。つまり、法律を学んで、ご自分が入って行く「集団」の構成員を幸福にするルールを創ることができる人、をわが法学部は育てようとしているのです。
けれども、その中で法律をもっと深く学んで職業にしようとする学生たちが出てくるのは当然でしょう(魅力的な授業ができていればなおのこと、と書くこともお許しいただけるでしょうか)。
その人たちのために、法律学科では2016年度から、「法曹士業プログラム」を開設しました。入学後の法律科目の成績とTOEICのスコアで選抜して、弁護士による課外授業が受けられたり、外部予備校の費用についての奨学金を受けられたりするものです。法科大学院や予備試験を目指す法曹コースと、宅地建物取引士を目指す宅建コースに大きく分かれています(これ以外の例えば司法書士についての書式の講座や、不動産鑑定士、社会保険労務士などの特殊な試験科目は、外部の予備校で補充をすればいいわけです。
そして昨年は、まず半年ほどの成果で宅地建物取引士に7名合格しましたが(1年生1名、2年生1名、3年生5名)、ようやく1期生が4年生となった今年、まず法曹コースで、最有力私大法科大学院の入試で、慶應義塾大学2名、早稲田大学3名、中央大学5名の合格者を出すことができたのです。

法科大学院入試合格祝賀会

平成30年度 法科大学院入試 合格祝賀会
これは、学生諸君の努力はもちろんですが、指導をしてくださった弁護士(兼子弁護士、角田弁護士)の文字通り寝食を忘れるほどの献身的な尽力があったことも特記しておかなければなりません。それに加えて、法科大学院を修了して司法試験の結果を待っている数名の諸君の補助もありました(実はこの弁護士や補助者の諸君は、すべて私のかつての教え子なのです。こうして「先輩が後輩を教える」という伝統が、武蔵野大学法学部法律学科に根付いていくことこそ、私の目指している理想でもあるのです)。

就職に生かせる宅地建物取引士の資格

法曹士業プログラムのもう一つの「士業」のほうでは、まず宅地建物取引士試験に学部として力を入れています。というのは、この資格を持って不動産業に就くのももちろん結構なのですが、この試験は、法学部法律学科の最大の基本科目である民法の比重が大きいので、この資格を得たということは、大学で民法をはじめとする民事の主要法律科目をしっかり学んだ、という一種の証明書になり、就職活動でも別扱いされるのです(そのことは、3年生までにこの資格を取った諸君が、今年の就職活動で実証してくれました)。不動産以外に、金融、商社、損保、建設といった、法律を良く使う分野でこの資格は「証明書」として有効です。今年2017年の宅建試験は10月15日で、今年から武蔵野大学有明キャンパスも試験会場の一つになっています(本学の一部の学生は、「ホームグラウンド」で受験できるわけです)。11月末の発表が今から楽しみです。

プロフェッショナル志向の法律学科と、リベラルアーツの政治学科

さて、本学の法学部は、法律学科と政治学科をもっています。受験生の諸君に、この両学科の大きな違いについて説明しておく必要があるでしょう。法律も政治も、ルール創りという観点からすれば、ルール自体や創り方を学ぶ法律学科と、そのルールを実現していく過程を学ぶ政治学科、というつながりはあるのですが、学問の性質や進路の選択の仕方は実は大きく異なります。
分かりやすく言うと、法律学科は、「なりたいものを決めて」志望するべき学科であり、政治学科は、「入ってからなりたいものを探す」学科と言えるのです。実際、法律学科の場合は、上記の法曹や士業に就くには、1年生の時からそういう路線に自分を乗せて学修をする必要がありますし、就職でも公務員でも、それぞれの考える方向にあったカリキュラムを選択して学修をしていくべきものなのです。
これに対して政治学は、リベラルアーツの典型という人もいますが、「リベラルアーツ」というのは、まさに、さまざまな学びの中で自分の専門や進路を選択していくものなのです。

志を持った自分探しを

政治学は、政治はどうあるべきかという「理論」と、現実の政治がどうなっているかの「実証」という両輪で成り立っている学問と言われています。ですから、それを学ぶ諸君にも「実証」「実践」「実験」の姿勢が大事なのです。
本学の政治学科では、「志を持った人を育てる」ことを重視しています。その志の中身は、人によって異なるでしょう。日本を変える志、世界をリードする志、地域社会に希望を与える志、等々、いろいろ考えられると思います。
けれども私が重視し政治学科の諸君に求めたいと思っているのは、まず「自分を探す志、自分を変える志」です。本学の4年間で積極的にさまざまな経験をし、その中から自分の人生を賭ける目標を見出していただきたいと思います。

カンボジアでボランティア活動

カンボジアでボランティア活動

マルタ共和国での活動を認められて

マルタ共和国での活動を認められて

政治学科らしい1期生

具体的に、政治学科についても1期生の「実績」を書きましょう。これは、私自身が、法学部開設1年目の前期の「法学1」を法律学科生と政治学科生全員に教えて(現在は分かれているのですが、初年度だけは両学科全員約250名を同一科目・同一教室で教えました)、そのときに見出した、前途有望と思った二人の政治学科女子学生の物語です。
大学に入りたての1年生が250人いる教室でも、私が実践している大教室双方向授業で、教室の中をぐるぐる回りながら話をし、学生たちを観察していると、反応の素晴らしい学生、ノートの取り方の見事な学生、などは、2、3か月もたつと歴然とわかるものなのです。
6月の段階で私は、法学の共同担当の先生(法律学科金尾講師)に、二人の政治学科の女子学生の名前を「この二人が将来有望」と伝えました。そして1年経ったところで、金尾先生が飛んできました。政治学科1期生の1年終了時の成績が出て、この二人が1番と2番だったというのです。それから3年、二人は、成績が良いだけでなく、見事に「自分探しの志」を実証してくれました。
一人は、ボランティアでカンボジアに行き、また国内政治の現場も体験し、一人は、マルタ共和国に留学し、大統領に謁見する機会まで得ました。就職、大学院進学とそれぞれの進路は分かれるようですが、お二人の今後の活躍が楽しみでなりません。

大学院法学研究科ビジネス法務専攻修士課程の開設

もう一つお伝えしたいニュースが、2018年4月からの大学院法学研究科ビジネス法務専攻修士課程の開設です。これは、武蔵野大学法学部法律学科の先端的なカリキュラムを生かして、ビジネス法務に特化した大学院を作るものです。スタッフとしては、東京大学、一橋大学、慶應義塾大学から教授を新たに招聘し、わが国の5大法律事務所と呼ばれるところから、多数の弁護士教員も招聘します。金融法務の世界では、FinTechやABL、電子記録債権などについての授業、企業法務については、再生可能エネルギー法、対東南アジア取引、Legal Writing、知財法務の関係では、情報法、IT関係法、エンターテインメント法など、最先端の法務知識を学んで、ビジネスの世界で活躍する人材を育てようとするものです。新卒の大学生だけでなく、社会人のスキルアップ教育も考えています。

整った陣容と教育体制―第5期生への期待

このように、武蔵野大学法学部は、2014年4月の開設から3年半で、陣容と教育体制を整え、その教育効果を実証する最初の成果を挙げつつあると申し上げられると思います。そして今、自信を持って、高校生・受験生の皆さんに、わが学部に来て下さい、とお誘いすることができます。
ただ、私たちの奮闘は、まだ始まったばかりです。目指すのは、オンリーワンでナンバーワンの存在です。そこに行き着くために、一緒に頑張ってみませんか。2018年4月から、法律学科の定員は150名から200名に、政治学科の定員は100名から120名に増加します。この機会に、是非本学法学部の門をたたいてください。皆さんの入学を、楽しみにお待ちしています。

池田眞朗教授1

池田 眞朗 Masao Ikeda
【プロフィール】
1949年生まれ。博士(法学)(慶應義塾大学)。2020年3月まで、本学副学長・法学部長。現在本学大学院法学研究科長。専門は民法債権法、金融法。現在日仏法学会理事、ABL協会理事長。慶應義塾大学名誉教授。

フランス国立東洋言語文明研究所(旧パリ大学東洋語学校)招聘教授、司法試験(旧・新)考査委員(新司法試験民法主査)、国連国際商取引法委員会国際契約実務作業部会日本代表、日本学術会議法学委員長、金融法学会副理事長等を歴任。

動産債権譲渡特例法、電子記録債権法の立案・立法に関与。主著の『債権譲渡の研究』(全4巻)で全国銀行学術研究振興財団賞、福澤賞を受賞。2012年民法学研究功績により紫綬褒章受章。
【最近の論考】
「新世代法学部教育の実践―今、日本の教育に求められているもの①~⑥」 書斎の窓(有斐閣) 643号~648号(2016年1月~2016年11月)、
「民法改正案債権譲渡部分逐条解説―検討と問題点」慶應法学(慶應義塾大学法科大学院)36号(2016年12月)41頁以下、
「日本法学教育史再考―新世代法学部教育の探求のために」武蔵野法学 (武蔵野大学法学部)5・6号(2017年2月)45頁以下。
※2017年度の国立小樽商科大学の入学試験では、池田先生の著書『民法はおもしろい』(2012年、講談社現代新書)が現代国語の問題に使用されました。

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