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2018.6

新世代法学部の実績報告―受験生の皆さんへ

武蔵野大学法学部長『有明日記』その3―1期生の実績と最新入試結果について

法学部長(副学長) 池田眞朗

大教室双方向授業

 「新世代法学部」を標榜して2014年に誕生した本学の法学部は、今年2018年の春に最初の卒業生を出しましたが、その1期生がめざましい実績を挙げてくれたおかげで、入学試験においても、法律学科では前年比倍増に近い志願者を集めることができました。「ルール創り教育」のスタートアップコンセプトも徐々に世間に浸透し、教員・学生の一丸となった努力が、数字になって皆さんに報告できる段階になってきました。来年度2019年度の6期生を迎えるにあたって、私からのメッセージをお伝えします。

2018年度入試の総括―志願者180%増

 2018年度の法律学科の入試結果は、総志願者数が2017年度は1111名であったのに対して、2004名という大幅増となりました。これは、定員が150名から200名と増加したことも理由のひとつと思われますが、やはり1期生の挙げてくれた実績とそれに対するマスコミの評価(週刊朝日2017年12月8日号で「奇跡の大学」の記事にトップで紹介されました)などが大きな要因になっているかと思われます(ちなみに2019年度は、新学部増設の関係で、法律学科は定員190名で募集します)。全国の法学部の総志願者数は、前年比6パーセント程度の微増であったとのことですから、本学のような数字を挙げた法学部法律学科は、他にはほとんどないと思われます。また、偏差値情報としては、まだ一部ですが、河合塾の6月模試による情報では、50(全学部統一入試)まで上昇しています。
 また本学では、このたび6年ぶりに高校の先生方やメディアの方々をお招きして説明会を開きました。当日私は副学長として法律学科の上記の実績を紹介するとともに、法律学科のスタートアップ・コンセプトの新しさ(前述の「ルール創り教育」を基本とした、「4学期制対応民事基本法先行集中学習プログラム」「大教室双方向授業」等)を説明しました。

高校教員対象説明会

高校教員対象説明会

1期生の成果―法科大学院合格と宅地建物取引士合格

 法律学科は、「新世代法学部」として、「マジョリティのための法学教育」を標榜して、ビジネスや公務員を二大進路と考えて、「ルールを創れる人を育てる」ことを目標にしてきました。つまり、旧来の法律学教育が、いたずらに学説等の細かい解釈学にこだわっていたのを改めて、法律を学んだ諸君が、将来入って行くそれぞれの「社会集団」で、その構成員を幸福にするルールを創ることができる、そういう人を育てることを、わが法学部は第一義にしているのです。
 一方、全国の法学部生は13万6千人いるといわれます。一学年で約3万4千人というわけです。そうすると、毎年の司法試験合格者が約2000人、国家公務員総合職合格者(法律・行政関係)が約700人とすると、両者を合わせても、一学年の法学部生の1割にも満たないのです。それであれば、まずその9割以上の、法律専門家にならないマジョリティの法学部生に役に立つ教育を施し、そこから法律学に興味を覚えて、法律のプロになろうという人が出てくれば、その人たち向けのプログラムを用意する、というやり方を本学は採用したのです。これが、武蔵野大学法学部法律学科のスタートアップ・コンセプトの最重点であったわけです。
 その法律専門家養成プログラムとして、法律学科では2016年度から「法曹士業プログラム」を開設しました。入学後の法律科目の成績とTOEICのスコアで選抜して、弁護士による課外授業が受けられたり、外部予備校の費用についての奨学金を受けられたりするものです。それを、法科大学院や予備試験を目指す法曹コースと、一般企業の就職にも役立つ宅地建物取引士資格取得を目指す宅建コースに大きく分けました(これ以外の例えば司法書士についての書式の講座や、不動産鑑定士、社会保険労務士などの特殊な試験科目は、外部の予備校で補充をすればいいわけです)。
 そして今年2018年の春に卒業した法律学科一期生約150名のうち、法科大学院進学者は、慶應義塾大学2名、早稲田大学1名、中央大学2名、上智大学1名の計6名、また宅建士試験合格者は10名となりました(法科大学院入学試験合格者数は、慶應義塾2名、早稲田3名、中央5名、上智2名)。また、上級公務員関係についても、まだ少ないのですが、国家公務員一般職、特定職(国税専門官)に合格者を出すことができました。

法科大学院入試合格祝賀会

平成30年度 法科大学院入試 合格祝賀会
 この結果は、指導をしてくださった弁護士の先生方の、文字通り寝食を忘れるほどの献身的なご尽力の結果であるわけですが、これらの一期生が、母校の教壇で後輩を指導してくれる日が来るのも、そう遠くないと思われます。こうして「先輩が後輩を教える」という伝統が、武蔵野大学法学部法律学科に根付いていくことこそ、私の目指している理想でもあるのです。

就職に生かせる宅地建物取引士の資格

 法曹士業プログラムのもう一つの「士業」のほうでは、まず宅地建物取引士試験に法律学科として力を入れています。というのは、この資格を持って不動産業に就くのももちろん結構なのですが、この試験は、法学部法律学科の最大の基本科目である民法の比重が大きいので、この資格を得たということは、大学で民法をはじめとする民事の主要法律科目をしっかり学んだ、という一種の証明書になり、就職活動でも別扱いされるのです(そのことは、3年生までにこの資格を取った諸君が、今年の就職活動で実証してくれました)。さらに不動産以外に、金融、商社、損保、建設といった、法律を良く使う分野でもこの資格は「証明書」として有効です(なお、新聞報道では、本学の宅建士合格者も1名就職した大手不動産会社が、宅建士合格の学生に対しては今年から採用手続で一次試験を免除することを発表しています)。
 昨年2017年10月の宅建士試験では、法律学科から15名の合格者を出すことができました。これで、2015年度3名、2016年度7名、2017年度15名と、学年進行に従って、文字通り倍々のペースで合格者を増やすことができたわけです(その中には3年連続で1年生の合格者が含まれています)。ちなみに2017年の合格者は、1年生2名、2年生2名、3年生8名、4年生3名でした。今年も昨年を上回る合格者が出ることを期待しています。

TOEIC受験大作戦

 もう一つ大事なことは、英語の重要性です。民間の大企業では、新卒採用試験のいわゆる「足切り」として、TOEICという英語検定試験が良く使われます。これは、英検のように級の合否ではなくスコアが取れるもので、足切りに会わない一応の目安は650点です。さらに最近は、公務員試験でも、法科大学院入試でも、「英語加算」という制度が広く始められています。試験の持ち点に、一定の英語資格が加算されるものです。したがって、どういう進路に進むにせよ、TOEICのスコアが必要になるのです(資格を取るのだから英語はできなくて良い、という時代は終わったのです!)。そこで法律学科では、このTOEICのスコアを取ることを必須にしました。ゼミに入るにも、法曹士業プログラムなどを受けるにも、TOEICのスコアが判定に要求されるようにしたのです。そして一方でTOEICの公開テストの受験を推奨し、ことに年2回、6月と12月の公開テストには、大学から費用補助が出るので、これをほぼ全員で受けるように指導しています。実際、2018年6月の公開テストの学内申込者数は、全学で625名が申込み、そのうちなんと415名が法律学科(1年生から3年生までの合計)というデータが出ています。

プロフェッショナル志向の法律学科と、リベラルアーツの政治学科

 さて、本学の法学部は、法律学科と政治学科を持っています。受験生の諸君に、この両学科の大きな違いについて説明しておく必要があるでしょう。法律も政治も、ルール創りという観点からすれば、ルール自体や創り方を学ぶ法律学科と、そのルールを実現していく過程を学ぶ政治学科、というつながりはあるのですが、学問の性質や進路の選択の仕方は実は大きく異なります。
 分かりやすく言うと、法律学科は、「なりたいものを決めて」志望するべき学科であり、政治学科は、「入ってからなりたいものを探す」学科と言えるのです。実際、法律学科の場合は、上記の法曹や士業に就くには、1年生の時からそういう路線に自分を乗せて学修をする必要がありますし、就職でも公務員でも、それぞれの考える方向にあったカリキュラムを選択して学修をしていくべきものなのです。
これに対して政治学は、リベラルアーツの典型という人もいますが、「リベラルアーツ」というのは、まさに、さまざまな学びの中で自分の専門や進路を選択していくものなのです。

志を持った自分探しを

 政治学は、政治はどうあるべきかという「理論」と、現実の政治がどうなっているかの「実証」という両輪で成り立っている学問と言われています。ですから、それを学ぶ諸君にも「実証」「実践」「実験」の姿勢が大事なのです。
 本学の政治学科では、「志を持った人を育てる」ことを重視しています。その志の中身は、人によって異なるでしょう。日本を変える志、世界をリードする志、地域社会に希望を与える志、等々、いろいろ考えられると思います。
けれども私が重視し政治学科の諸君に求めたいと思っているのは、まず「自分を探す志、自分を変える志」です。本学の4年間で積極的にさまざまな経験をし、その中から自分の人生を賭ける目標を見出していただきたいと思います。

カンボジアでボランティア活動

カンボジアでボランティア活動

マルタ共和国での活動を認められて

マルタ共和国での活動を認められて

政治学科らしい1期生

 以前「有明日記」その2に書いた、1年終了時の成績が1番と2番だった政治学科1期生のお二人は、世界でさまざまな経験を重ねた上で、この春の卒業時もそのまま仲良く1番と2番で卒業していきました。就職、大学院進学とそれぞれの進路は分かれるようですが、お二人の今後の活躍が楽しみでなりません。これから入学される諸君も、ぜひこういう素晴らしい先輩をまねて、後に続いてほしいと思っています。
 政治学科のカリキュラムにおいても、国際関係や世界の地域研究に学生諸君がより目を向けられるように、2018年から、中東政治論やアフリカ政治論に、東京大学や慶應義塾大学から客員教授の先生方をお迎えして、講座の充実を図っています。

大学院法学研究科ビジネス法務専攻修士課程の開設

 もう一つお伝えしたいニュースが、2018年4月からの大学院法学研究科ビジネス法務専攻修士課程の開設です。これは、武蔵野大学法学部法律学科の先端的なカリキュラムを生かして、ビジネス法務に特化した独自の大学院を作ったものです。スタッフとしては、東京大学、一橋大学、慶應義塾大学から教授を新たに招聘し、わが国の5大法律事務所と呼ばれるところから、多数の弁護士教員も招聘しました。金融法務の世界では、FinTechやABL、電子記録債権などについての授業、企業法務については、再生可能エネルギー法、対東南アジア取引、Legal Writing、知財法務の関係では、情報法、IT関係法、エンターテインメント法など、最先端の法務知識を学んで、ビジネスの世界で活躍する人材を育てようとするものです。
 院生の構成としては、大学新卒者と、社会人と、留学生とを3分の1ずつに想定していますが、新卒者の場合は、司法書士や不動産鑑定士など、実際に学部4年生まででは合格が困難な資格に、この修士課程に在籍中に合格するという利用の仕方も想定しています。また、社会人については、学び直し教育のニーズにも応えていますが、現在企業や市役所等で活躍中の人材が、スキルアップを果たして職場に戻る、1年制のコースも設置しています。

整った陣容と教育体制―第6期生への期待

 このように、武蔵野大学法学部は、2014年4月の開設から4年半で、陣容と教育体制を整え、その教育効果を実証する成果を挙げつつあると申し上げられると思います。そして今、自信を持って、高校生・受験生の皆さんに、わが学部に来て下さい、とお誘いすることができます。
 ただ、私たちの奮闘は、まだ始まったばかりです。目指すのは、オンリーワンでナンバーワンの存在です。そこに行き着くために、一緒に頑張ってみませんか。2019年度入試では、(学部増の関係もあり)法律学科の定員は190名で、政治学科の定員は100名で募集します。この機会に、是非本学法学部の門をたたいてください。皆さんの入学を、楽しみにお待ちしています。

池田眞朗教授1

池田 眞朗 Masao Ikeda
【プロフィール】
1949年生まれ。博士(法学)(慶應義塾大学)。2020年3月まで、本学副学長・法学部長。現在本学大学院法学研究科長。専門は民法債権法、金融法。現在日仏法学会理事、ABL協会理事長。慶應義塾大学名誉教授。

フランス国立東洋言語文明研究所(旧パリ大学東洋語学校)招聘教授、司法試験(旧・新)考査委員(新司法試験民法主査)、国連国際商取引法委員会国際契約実務作業部会日本代表、日本学術会議法学委員長、金融法学会副理事長等を歴任。

動産債権譲渡特例法、電子記録債権法の立案・立法に関与。主著の『債権譲渡の研究』(全4巻)で全国銀行学術研究振興財団賞、福澤賞を受賞。2012年民法学研究功績により紫綬褒章受章。
【最近の論考】
「新世代法学部教育の実践―今、日本の教育に求められているもの①~⑥」 書斎の窓(有斐閣) 643号~648号(2016年1月~2016年11月)
「民法改正案債権譲渡部分逐条解説―検討と問題点」慶應法学(慶應義塾大学法科大学院)36号(2016年12月)
「日本法学教育史再考―新世代法学部教育の探求のために」武蔵野法学 (武蔵野大学法学部)5・6号(2017年2月)
「民法改正法の解説と施行までの留意点」税経通信(税務経理協会)72巻13号(2017年11月)
「日本の金融法制の現状と展望―金融イノベーションと規制の観点から」(中国清華大学国際シンポジウム講演記録)SFJジャーナル(流動化証券化協議会)16号(2018年2月)
※2017年度の国立小樽商科大学の入学試験では、池田先生の著書『民法はおもしろい』(2012年、講談社現代新書)が現代国語の問題に使用されました。

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