主な研究概要2015年度から「情報セキュリティ・プライバシー研究会」、2016年度から「デジタル・ビジネスの現況と展望・課題に関する研究会」が活動を続けています。
<情報セキュリティ・プライバシー研究会>
Internet of Things(IoT)やM2M(Machine to Machine)の普及とともにさまざまなデータが得られるようになり、これらのデータ、いわゆるビッグデータを収集・分析することで、新事業・サービスの創出や日本を取り巻く諸課題の解決に大きく貢献することが期待されています。こうした状況を踏まえ、2015年から時代に即した法制度の在り方や、利用者のデータを保護しつつ、海外でビジネス展開する日本企業が不利にならないような、国際的な法制度のフレームについて検討を行ってきました。
研究テーマには、個人情報保護法の改正と匿名加工情報の取り扱いをはじめ、さまざまな内容が含まれています。2016年度からは、4次産業を支えるサービスの動向を調査するとともに、そうしたサービスのさらなる発展を阻害する要因についても検討を深めました。具体的に言えば、IoTの利活用について、災害対策・対応、復興支援、ゲームコンテンツを使った観光客の誘致や、地域の交流促進、製造業における高付加価値サービス(台湾企業との協力)、持続可能な社会、AIを使った新製品・サービスの分野を対象に検討を行いました。
2017年度は、創造力、批判的思考力、問題解決力、コミュニケーション力、プロジェクト力、ICT活用力といった「21世紀型スキル」に着目し、義務教育である初等中等教育におけるICT教育の現状および課題を調査するとともに、子供たちがこうしたスキルをきちんと身に着けるにはどうすればよいか検討しました。
<デジタル・ビジネスの現況と展望・課題に関する研究会>
この研究会では、デジタル・ビジネスの現況を把握し、今後起こり得る既存産業への影響と諸課題を抽出することと、当該課題を解決し、日本が国際競争力を維持・強化していくために必要な政策の方向性を検討することを目的としています。
近年みられる急速な情報技術の深化とその普及は、いわゆる従来の「情報サービス産業」とは一線を画した「デジタル・ビジネス」(digital business)の台頭をもたらしています。そして、2016年1月には閣議決定された第5期科学技術基本計画において「世界に先駆けた『超スマート社会』の実現(Society 5.0)」が掲げられました。それ以降、さまざまな政策が各省から打ち出されていますが、新たに描かれた未来の姿に向けた具体的な道筋はもちろん、ネットワークやIoTの浸透がもたらす社会経済的な影響についても必ずしも明らかにされているわけではありません。そこで2016年度は、研究会において特にデジタル・ビジネスを牽引する新興企業を中心にゲストスピーカーを招聘し、デジタル・ビジネスに関する事例ベースでの分析とデジタル・ビジネスの現況と展望・課題を検討するうえでの基礎的なフレームワークの構築を試みました。テーマには、シェアリングエコノミー、IoT/M2M、FinTech、自動運転、オープンイノベーション、AI(人工知能)が含まれています。
2017年度は、新興企業を対象とする昨年の研究をベースに、大企業に焦点を当てた検討を行うことにより、「情報サービス産業」に関する既存の事業者がどのようにしてデジタル・ビジネスをめぐる新たな潮流に適合しようとしているのか、その戦略的な対応と試行錯誤の過程について、いくつかの事例を観察・分析することを通じて明らかにしました。
主な成果<情報セキュリティ・プライバシー研究会>
- ICT利活用の先行事例からみる地方創生(基調講演 内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局 村上 敬亮 参事官)
- IoTが切り拓くオープン・イノベーションと新産業創出の展望(基調講演 株式会社村上憲郎事務所 村上 憲郎 代表取締役)
- ドローンの利活用促進と課題解決への展望(基調講演 ドローンテックラボ・コンソーシアム・仙台/(株)GENPAY 大西 清 COO)
- ビジネス最前線:医療分野におけるAIの利用(基調講演 東京大学大学院医学系研究科音声病態分析学講座 光吉俊二 特任講師/博士(工学))
- Global Discussion – New Data Protection Frame Keynote Speaker OECD Privacy Guidelines and future - Michael Donohue, Senior Policy Analyst, OECD/STI
- Innovation Ecosystem for Government IT: Case Study in a US Federal Healthcare System Keynote Speaker Seong K. Mun, PhD, President, OSEHRA Professor, Virginia Tech University Arlington, Virginia, USA
<デジタル・ビジネスの現況と展望・課題に関する研究会>
- 黒河昭雄「ライフサイエンス分野におけるオープン・イノベーションの現状と課題 ー政策動向とケーススタディ」『ファルマシア』53 巻 12 号 p. 1152-1156, 2017
国際シンポジウム等の主なイベント<情報セキュリティ・プライバシー研究会>
- MIGA共催、OMC (Open Innovation, Machine Device, Cloud Network) 2016(2016年2月9日)@明治大学グローバルホール
- MIGA共催、一般社団法人推進協議会利活用部会第6回研究会「東日本大震災の教訓は生かされたのか? ~熊本地震におけるICT利活用実態報告~」(2016年7月5日)@明治大学 グローバルホール