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数学を探せ!
第12回 「対称性と周期性」

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三角定規を使っていますか?三角定規の形は、直角2等辺三角形と、正三角形の半分です。この2つの三角形はプラトンの要素三角形(ストイケイア)と呼ばれます。
この2つの三角形から正三角形と正方形を作り、それから4つの正多面体、正4面体、立方体、
正8面体、正20面体を作ることができます。プラトンは大胆にも、それらを「火」、「土」、「空気」、「水」に対応させ、5つめの正12面体には「宇宙」を対応させたと言われています。

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正多面体は3次元空間にある非常に対称性の高い図形ですが、平面上にはたくさんの種類の正多角形(正三角形、正方形、正5角形、正6角形、正7角形、正8角形…)があります。

次に平面の周期的な模様を見てみましょう。卜部東介氏のウェブページ http://tsuboiweb.matrix.jp/urabe/public_html/urabe/「文様の幾何学」には、日本の着物の柄には以下の17種類があることが記されています。

平面の周期的な模様は2つの方向の方向の平行移動で重なります。

この17種類を眺めていると、特にリストの下半分の模様には、90度、120度、60度という角度が良く出てきます。周期性と対称性をもつ図形には三角定規の形(ストイケイア、要素図形)が隠れています。

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これはどの領域の話か

この周期性のある対称な模様から見えてくる数学は何でしょうか?
周期性も対称性も平面の図形を移動して重ねることができるかどうかという問題です。ひとつの移動は、回転と平行移動で記述されます。ひとつの移動で重ねることができ、つぎに別の移動重ねることができるとき、それを続けて行った移動で重ねることができることになります。これらの移動の全体は、「群」と呼ばれる構造を持っているものになります。その群が17種類だということですし、その中に現れる回転に出てくる角度は、90度、120度、60度にならなければいけないということがわかります。

数式を用いた解説

平面の移動を定義することから始まります。
【定義】平面13_01の「移動」とは、写像13_02で2つの点の間の距離(2点を結ぶ線分の長さ)を変えない13_03もののことである。

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ここで、13_04はベクトルの大きさ、すなわち、13_05に対し、13_06である。
平面の移動は、ベクトルと行列を用いて書かれます。

【命題】 平面の移動は、

13_07または13_08
13_09として、13_10の形に書かれる。
平面の移動全体は、次の性質をもちます。

平面の2つの「移動」13_11を続けておこなったもの13_12は「移動」である。
3つの移動13_13に対し、13_14
「移動」13_15した後、逆向きの「移動」13_16をおこなうと「移動しない移動」13_17(恒等写像)になる

13_18

この性質を持つことを群をなすといいます。

図形の対称性は、図形13_19を自分自身に映す「移動」が、どれくらいあるかで決まります。
図形13_19を自分自身に映す「移動」の全体を13_19の等長変換群と呼び、13_20と書きます。
合同変換群と呼ぶこともあります。

周期的に繰り返す図形13_19は周期だけの平行移動が図形を自分自身に映します。

格子模様は、2つの方向の平行移動で模様が重なります。すなわち、周期的な図形(模様)とは、等長変換群が格子を含むような図形です。

格子とは、2つの平行ではないベクトル13_21の整倍数の和で表される集合です。

13_22

格子の形状にもいろいろなものがあり、平坦トーラスのモジュラスにより分類されます。
より直観的に説明すると、格子に対して次のようなディリクレ領域あるいはボロノイ領域と呼ばれる図形13_24が定まります。

13_23

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図形13_24は円に内接する、対辺が平行で長さが等しい6角形で、2つの頂点が近づいて合わさったとき4角形(長方形)となります。

このことから、格子が回転で自分自身に移るとき、この図形13_24は、長方形、正方形、正6角形でなければならないことがわかります。

格子が回転対称性を持つとき、それは180度回転、90度回転、120度回転、60度回転のいずれかです。

このことが、周期性と対称性をもつ図形に三角定規の形(ストイケイア、要素図形)が登場する理由です。

参考:http://ocw.u-tokyo.ac.jp/course_11377/
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担当教員プロフィール

特任教授 坪井  俊

1953年広島生まれ。中学で出会ったユークリッド幾何に感じた面白さが大学での研究の原点になったのかもしれません。これまで曲面を一般化して考えられる多様体という空間の対称性を記述する微分同相群を中心に研究してきました。2019年から本大学の授業の中では、「折り紙と数学」や「平面幾何と数学のあゆみ」というテーマを取り上げています。

※この講座の著作権は著者にあります。無断引用や転載等はお断りいたします。

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