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数学を探せ!
第13回 「競争している生物の個体数を予測しよう」

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私たちが生きている地球上にはおよそ500万から3000万種の生物が生活しているといわれています。生活の中で環境の変化や天敵の出現などによって個体数を激減させる種や絶滅してしまう種がいることは皆さんご存じのことかと思います。身近な例だと、マグロやウナギの漁獲量が減ってきているといったことです。また、一定の周期で個体数が増えたり減ったりしている種もいます。例えば、サンマやイワシなどです。これらの種の個体数を調べ、予測し、自然環境維持に活用していくことは私たち人間にとって大切であることは明らかですが、どうやって複雑に相互作用しあう生物の個体数の増減を予測するのでしょうか?関係のありそうな生物の数を機械に定期的に数えさせたり、少しだけ捕まえて統計的手法で個体数を推測したり、いろいろな方法がありますが、ここでは数学を用いて個体数を予測する方法を紹介します。

これはどの領域の話か

使う数式は非線形連立常微分方程式です。常微分方程式とは自分が知りたい関数を未知として、その関数の微分を含んだ方程式のことです。非線形連立というのは未知関数が一次式のみだけでない2つ以上の方程式が連立されているものという意味です。大学では微分積分のあとの微分方程式という分野で学習します。(ちなみに生物の個体数の時間変化や分布の変化を調べることを行う学問を個体群動態学といいます。)

数式を用いた解説

いきなり関係している生物をすべて列挙して数式を立て、個体数を予測することはあまりにも無謀なので、第一歩は簡単に2種類の相互作用している生物の個体数を予測することを考えましょう。生物は自身の種の数を増やすことを目標に、成長したり、繁殖したりしていますが、その営みの中で互いに悪影響を及ぼしてしまうことがあります。このような場合、それらの種は競争関係にあると言います。競争関係にある2種の生物の個体数の時間変化を調べる数式は次のようなものです。
この数式はロトカ・ヴォルテラの競争系と呼ばれるものです。ここで、は競争関係にある2種類の生物の時刻 での個体数、はそれぞれの生物の内的自然増加率と呼ばれる正の数です。個体数が少なく、競争がほぼ行われない場合の個体の増加率を表します。はそれぞれの生物の種内競争率と呼ばれる正の数です。同じ種の中で繁殖に必要な資源をめぐって競争する際の競争の強さを表します。はそれぞれの生物の種間競争率と呼ばれる正の数です。2種の間で繁殖に必要な資源をめぐって競争する際の競争の強さを表します。はそれぞれの生物の時間変化を表しています。数式で書くとむずかしく見えますが、数を調べる方針は単純で
種の個体数の変化 = 個体が自然に増える量 ― 種の影響で個体が減る量
を計算しているだけです。単純な仕組みですが、ロトカ・ヴォルテラの競争系は初めの生物の個体数とからのパラメータ変化させることで、生物のみが生き残る場合、生物のみが生き残る場合、2種とも生き残る場合、初めの個体数に応じてどちらかが生き残る場合を表現することができます。すなわち、調べたい生物の初めの個体数、内的自然増加率、種内競争率、種間競争率さえ調べることができれば、ロトカ・ヴォルテラの競争系を使って、その生物が絶滅するか生存するか、ある時刻の個体数はどの程度なのか、おおまかに予測することができるということです。
ここまで、簡単のため2種類の生物で説明をしてきましたが、パラメータと変数を増やせば好きな数の種類の生物で競争させることができます。さらに、数式のパラメータや変数に少しの変更を加えることで様々な状況での予測を行うことができます。例えば、この数式のパラメータの値を時刻 ごと変化させれば、それは時間によって競争率や自然増加率が変化することに対応するので、日本のように四季がある場合での個体群の増減を予測することができたりします。
実際には、環境の要因、資源の空間的な配置など様々な要因が個体数の増減に関わっているので、現実を完璧に予測することは非常に困難ですが、単純な場合だけでも根拠を持って客観的に説明ができる予測ができるということは複雑な場合の予測への大事な第一歩です。

担当教員プロフィール

助教 森 竜樹

1988年滋賀県生まれ。高校生の頃、2次方程式が異なる2つの実数解を持つ場合、1つの実数解を持つ場合、実数解が存在しない場合があるということを2次関数のグラフの形状と一緒に勉強した際、1つの単純な方程式なのに3種類も場合があることを面白く感じたのを覚えています。今思うと、それが計算することを好きになったきっかけだったのだと思います。大学では数学に加えて情報を学び、手計算だけでなくパソコンによる計算の方法が習得できたので、パラメータを様々に変化させ数値計算を繰り返し、ときには数学的に解析を行ったりして方程式が持つ性質を調べることを楽しんでいました。現在は2種類の生物の棲み分け現象に関する数式の解析を行っています。

※この講座の著作権は著者にあります。無断引用や転載等はお断りいたします。

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第13回 「競争している生物の個体数を予測しよう」
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