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令和7年度 卒業式・修了式式辞

学部卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。
大学院修了生の皆さん、修了おめでとうございます。
また、ご家族、ご関係の皆様にも、心よりお慶びを申し上げます。

本日、皆さんの門出をともに祝えますことは、学長として大きな喜びです。

皆さんが入学された頃、社会はコロナ禍の強い影響下にありました。不安と制限の中で始まった大学生活でしたが、その経験は決して空白ではありません。不確実な状況の中で学び続けたという事実そのものが、皆さんの内に確かな力を育てています。

本学では、「スチューデントサクセス」という目標を掲げ、皆さんが自らの成長を実感し、同時に社会とどう関わるかを考えられるようになることを大切にしてきました。

本日この場で、改めて自らに問いかけてみてください。
私は、この数年間でどのように変わったのか。
私は、社会とどのように関わろうとしているのか。

その問いに静かにうなずくことができるならば、皆さんは確かに前進しています。

さて、皆さんがこれから歩む社会は、大きな転換期にあります。

日本では人手不足が進む一方で、海外ではAIの急速な進展により若年層の雇用構造が変化し始めています。職業は固定的なものではなくなり、就職も転職も、再選択も、人生の中で自然な出来事となるでしょう。安定が前提の社会ではなく、変化が前提の社会です。

そのような時代において、私がとりわけ重要だと考える力は三つあります。

第一に、レジリエントであること。
予期せぬ変化に直面したとき、状況を冷静に見極め、自らの歩みを調整していく精神的柔軟性です。不確実性を抱えたまま前進する力と言ってよいでしょう。

第二に、現実に向き合う勇気と能力を備えること。
社会には複雑な課題があります。それらを単純化することなく、事実を確認し、背景を考え、構造を理解しようとする姿勢が求められます。向き合う勇気は倫理に関わり、向き合う能力は知性に関わります。その両方を兼ね備えてこそ、社会的責任を果たすことができます。

第三に、他者と協働する力を有すること。
今日の課題は、一人の能力のみで解決できるものではありません。異なる立場や専門を持つ人々と対話し、違いを創造へと転換する力が不可欠です。
協働とは同質化ではなく、相互の尊重に基づく創造的営みです。

これら三つの力の根底にあるのが、問い続ける力です。

自分は何を大切にするのか。
この選択は何をもたらすのか。

問いを持ち続ける人は、変化に流されにくい。問いを持ち続ける人は、思考を止めない。問いを立て続けることこそが、人間の自由の根拠であり、成熟の証でもあります。

技術が進歩しても、制度が変わっても、問い、考え、選択する営みは、人間に固有のものです。

本学は、皆さんの在学中に創立100周年という節目を迎えました。皆さんはその記念すべき時代を共に歩んだ卒業生です。その歴史を、これから未来へとつないでいく存在となります。

「響き合って、未来へ。」

卒業は完成ではありません。
未完成であることを引き受け、新たな問いの中へ進む出発です。

レジリエントであり、現実に向き合う勇気と能力を備え、他者と協働しながら問い続ける人として、それぞれの道を歩んでください。

皆さんが歩むそれぞれの場所で、新たな問いが生まれ、その問いが未来を拓いていくことを、心から願っています。

本日は誠におめでとうございます。

令和8(2026)年3月12日
武蔵野大学学長 小西 聖子