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令和8年度大学・大学院入学式 式辞

新入生の皆さん、ようこそ武蔵野大学へ。ご入学おめでとうございます。
ご家族の皆様にも、心よりお祝い申し上げます。
またご参列の皆様、本日はご参加くださいましてありがとうございます。

感染症の世界的流行や国際秩序の揺らぎ、さらにAIをはじめとする情報技術の急速な発展によって、社会はこれまでになく速い変化の中にあります。

最近、若い世代の間で「2016年ごろの世界が懐かしい」という話題があると聞きました。
今からわずか10年ほど前のことですが、あの頃は確かにまだパンデミックもなく、世界政治の緊張も今ほど高くなく、AIも社会の中心的な存在ではありませんでした。
もちろん当時にも課題はありましたが、振り返ってみると、あの頃はある意味で一つの時代の終わり、穏やかな時代からより不確実な時代への転換点だったのかもしれません。

しかし、歴史を振り返れば、若い世代はいつもこうした時代の入り口に立ってきました。
変化の時代は不安も伴いますが、同時に新しい社会が生まれる時代でもあります。

大学とは、その新たな世界に入っていくための場所です。
単に知識を受け取る場所ではありません。
問いを立て、考え、議論し、人間と社会を深く理解する力を育てる場所です。
変化の時代を生きるために必要なのは、目先の情報ではなく、物事の本質を見抜く知性だからです。

本学は、関東大震災の翌年1924年に創立され、今年は103年目を迎えます。
最初の校舎は、築地本願寺の庭に建設された、被災者の救護所を用いたものでした。
そして2004年の共学化以降、急速に発展し、現在では1万人を超える学生が学ぶ大学となりました。
その中で変わらないものは仏教による本学の建学の精神です。
仏教は、人間の苦しみや不安に向き合いながら、人が生きることを考えてきた長い知の伝統です。
そこには、自分だけの幸福ではなく、他者とともに生きることを願う思いがあります。

本学が目指しているのも、そのような学びです。
専門的な知識を身につけるだけでなく、それを社会の中でどのように生かすのかを考える力を育てること。
社会に貢献する志とともに知性を磨くことです。

私自身、精神科医として人の心の問題、とりわけ被害を受けた人の問題を研究してきました。
その経験から言えることがあります。
それは、人間は困難な状況の中で戸惑い、打撃を受けますが、一方その中でともに学び、成長し、新しい可能性を切り開いていく力を持っているということです。
未来が不確実であるということは、同時に未来はまだ開かれているということでもあります。
そして人間は、そのことを不安であると同時に希望としても受け止めてきました。

本学もまた、この変化の時代に応える大学であるために、教育や学びの環境を新しくしていく努力を続けています。
皆さんがここで過ごす時間が、これからの社会を生きる力となるよう、教職員一同、力を尽くしてまいります。

最後に皆様にお知らせがあります。
大学は学びの場であると同時に、生活の場でもあります。
そのため本学では、キャンパスをより良い学びと出会いの場とする取り組みを進めています。
その方策の一つとして、武蔵野・有明両キャンパスで4月16日より100円朝食を開始します。
ただ、栄養的、経済的な補助となるだけではなく、食事をきっかけに、新しいつながりが生まれることを期待しています。

どうかこの大学で、多くを学び、多くの人に出会い、そして自分自身の可能性を大きく広げてください。
これからの社会を形づくるのは、まさに皆さん自身です。
皆さんの前途が豊かに開かれていくことを心から願い、入学のお祝いの言葉といたします。

令和8(2026)年4月3日
武蔵野大学学長 小西 聖子