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令和6年度 卒業式・修了式式辞

卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。
大学院修了生の皆さん、修了おめでとうございます。
また、ご家族、関係者の皆様にも、心よりお慶びを申し上げます。

本日は、学校法人武蔵野大学の長野理事長をはじめとした理事者の皆様、学校法人武蔵野大学後援会の工藤会長、武蔵野大学の同窓会むらさき会の平山会長、名誉教授の先生方をはじめとしたご来賓の皆様、教職員各位のご臨席をたまわり、令和6年度の卒業式、大学院修了式を挙行できますこと、大変ありがたく存じております。

さて、卒業生、修了生の皆さん、皆さんは大学生活の前半をコロナ禍において過ごしてきました。後半については、制限も解け、キャンパスライフも平常に戻っていったように思いますが、全体を振り返って、充実した大学生活になりましたでしょうか。(以下、大学院の修了生の皆さんも含めて、卒業生という言葉を使わせていただきますので、お許しください)
まずは、入学した頃のことを思い出してみてください。多くのみなさんは、コロナの感染拡大がまだ続いていた2021年4月に入学されたことと思いますが、その年の入学式は前年度に中止になった2年生の入学式も含めて3日間にわたり13回の入学式を行いました。そのことだけでも、大変困難な状況の中での入学だったことと思いますが、皆さんはそのような状況の中で、どのような思いで本学に入学されたでしょうか。どのような夢や希望、目標を抱いて本学での大学生活をスタートされたでしょうか。本学の有明、武蔵野両キャンパスの正門脇の聖語板には月々の言葉が書かれていますが、毎年、4月には次のような言葉が書かれています。

「ここに学ぶと 初めて立ちし校庭の 花の四月の初心忘るべからず」

これは、今から60年前、1965年に文学部が設立された時の初代の文学部日本文学科主任であった土岐善麿先生の詠まれた歌です。皆さんは、入学から数年を経て、今、卒業の時を迎えています。入学時の初心を大切にされながら、大学生活を送られましたでしょうか。初心で掲げた目標に近づくことができましたでしょうか。

本学では、卒業時において、学生の皆さん一人一人が、次の2つの点を実現していただきたいと願いながら、教育に取り組んでいます。そして、その2点について、卒業の時点で皆さんの成長実感、達成感、納得感、満足感が得られる状況に至ることを、スチューデントサクセスと呼んでいます。2つの点と申しますのは、その一つは、皆さん一人一人が、目指す将来像(なりたい自分)や目標達成等の自己実現に向けて、成長実感、達成感、納得感が得られることです。これを個としてのサクセスと呼んでいます。もう一つは、本学の建学の精神に基づく、本学での特色ある学びを通して、未来のウェルビーイング社会の創造及び形成に貢献するスキル、能力、マインドを修得することです。こちらは社会におけるサクセスと呼んでいます。改めて、大学生活を振り返ってみて、いかがでしたか。いろいろ困難もあり、悩んだり悔んだり悲しんだり、つらいこともいっぱいあったのではないかと思います。そのような中でも、武蔵野大学の学生としての本分を忘れることなく、ゼミや卒業研究、実習、就職活動、資格試験、大学院進学などの諸活動に懸命に取り組んでこられました。その甲斐あって、本日、晴れて卒業の日を迎えられました。困難にくじけることなく学業に専念され、卒業を迎えられましたこと、コロナ禍での懸命なチャレンジも含めて、心より敬意を表します。

皆さんの中には、当初思い描いていた大学生活とはずいぶん異なった大学生活になったことを、残念に思っている方もおられるかもしれません。せっかくの大学時代、あれもしたかった、これもしたかった、けれども、あれもできなかった、これもできなかった。しかし、できなかったことをカウントして、後悔し、不満を抱き続ける人生と、困難な状況に直面したけれども、それに必死で向き合うことのできた、その自分の歩みをしっかりとかみしめ、共に歩んだ仲間たちとその労苦をたたえ合い、また、ささえてくれた様々な力に感謝しながら生きていく人生と、どちらがしあわせな、ウェルビーイングな人生といえるでしょうか。私は人生への向き合い方として、ぜひ後者のような向き合い方をしながら、人生を歩んでいっていただきたいと思います。

本学は、仏教精神に基づく人格教育を建学の精神に掲げて設立・運営されている大学です。仏教において大切にされている言葉に、「恩」という言葉があります。「心」という字の上に原因の「因」という字を書きます。その言わんとするところは、この私のいのちを生み出し、育み、ささえてきてくださった様々な働きに対して深い感謝の念を抱くことにあろうかと思います。本日卒業される皆さんも、本学の人格教育にふれる中で、親御さんを始め、ご家族、友人、先生方、職員のみなさん、お世話になった多くの方々に対し、深い恩を感じながらこの卒業式に臨んでいることと思います。いただいたご恩を、いただいた方にそのまますべてお返しすることは難しいけれども、恩を感じた皆さんがこれからの人生において、世界の幸せを生み出す新たな因となって活躍されることを心から願っています。

本日、卒業されるみなさんは、本学が創設されて100周年の記念すべき年度の卒業生となります。1924年、世界的な仏教学者であった学祖高楠順次郎博士によって創設されて、2024年度に創立100周年の記念すべき年を迎えました。それでは、武蔵野の100年とは、一言でどう表現できるでしょうか。私は、100年の間に卒業していった卒業生たちの人生すべてだ、と答えたいと思います。本学で学び、経験し、成長したことを糧に、卒業生たちが一人一人の人生を歩み始める。その一人一人の人生の営みの集大成が、武蔵野の100周年です。その100周年を締めくくる年に、皆さんは巣立っていくことになります。100周年のキー・メッセージは、「響き合って、未来へ」です。卒業生たちが、本学のブランドステートメント「世界の幸せをカタチにする」という目標を卒業後も抱き続け、響き合い、協力しあいながら、未来へとつなげていく。過去に卒業した方々と、今、卒業していく皆さんと、これから卒業していく未来の卒業生、みんなが一つの願いでつながっています。キャンパス内の各所に、100周年の取り組みとして描かれた人物画のごとく、多様な人々が、老いも若きも、性別も、職業も、民族も国籍も超えて、つながっていく。ともに生きていく。ともに、世界の幸せをカタチにしていく。武蔵野大学は、そのような大学であり続けたいと思います。

本日の式典は時間が限られていますので、十分に思いをお伝えすることがかないませんが、皆さんが慣れ親しんだキャンパスに、張り巡らされている100周年の記念ポスター、「響き合って、未来へ」を読み上げて、卒業の餞にいたします。

約一世紀にわたり、多くの生徒、学生、教員、職員、
そして卒業生を含む学外からの協力者が、
さまざまな境を越え、高め合い、笑い、涙し、響き合ってきた軌跡。
それが学校法人武蔵野大学です。
しかし、この道はまだ途中。
世界は、幸せか。私たちが学問し、実践し、挑み続けてきたこの問いに、
そうだと答えられる状況はまだ遠いのが現実です。
これまで以上に、ひとりよがりを超え、異なる力を響き合わせて、
世界の幸せをカタチにする未来へ向かうときです。
100周年記念事業メッセージ「響き合って、未来へ。」には、
そのような決意を込めています。
想いはつながる。世界は変えられる。
学校法人武蔵野大学の創立100周年は、
もっと大きな理想を実現する第一歩です。

これから、卒業して諸方面で活躍していく中で、あなたが学んだ大学はどういう学校か、尋ねられることがあるかと思います。その時は、「世界の幸せをカタチにする。」をブランドステートメントに掲げている大学に学んだこと、自分が専門にしていた学問もその大きな目的のための学問であったこと、そして多くの仲間が同じ思いで大学生活を送ってきたこと、それらのことを胸張って語っていただきたいと思います。

さて、最後に一つ卒業生となる皆さんにもご紹介させていただきたいことがございます。2016年に学長に就任して9年間にわたり学長職を務めさせていただきましたが、この3月で退任となり、4月からは新しい学長が就任されます。現在副学長として学生支援や国際化を進めていただいている小西聖子先生が新しい学長として就任されます。武蔵野大学にとってもこれまでの100年の歴史の中で初めての女性の学長の誕生であり、次の100年に向かってスタートを切るにふさわしいすばらしい学長の誕生となります。精神科医として臨床にも従事されており、被害者支援、PTSD(外傷後ストレス障害)治療に関する分野の研究など日本における第一人者としてご活躍の先生です。小西新学長のリーダーシップのもとで武蔵野大学がいよいよ発展をしていくこと、卒業生の皆さんにとってもさらに誇らしい大学となっていくことを念じています。

本日、式典終了後に、有明キャンパス立ち寄られると思いますが、改めて、正門脇の3月の聖語版に書かれている言葉を味わっていただきたいと思います。学祖高楠順次郎先生の次のような言葉です。

「我々が努力して成し遂げたものは
そのままで終わりを告ぐべきものと思ふのは間違いである
この後に成すべきものの第一歩である」

これまで武蔵野大学において身に付けた、他者の幸せを願うしなやかな感性、問題解決に取り組むアクティブな知性、そして未来の価値を生み出す豊かなクリエイティビティ、創造性、これらを力に、2050年の未来に向かって、さらに100歳になる22世紀に向かって、世界の諸課題に向き合い、「世界の幸せをカタチにする。」ハピネス・クリエイターとして活躍されることを心から念じ、令和6年度武蔵野大学卒業式、大学院学位授与式の式辞といたします。

改めまして、ご卒業、大学院修了おめでとうございます。

令和7(2024)年3月13日
武蔵野大学学長 西本 照真