これまでは、医療インフラとしての医療制度、医療機器をグローバルな規模で製造販売する企業の動向について調査を進めてきた。医療産業の国際展開を進める上では、引き続き、国や地域を超えてグローバルに活動している企業とともに、国や地域における医療提供を担う医療機関や各国政府、とくに保健省/厚生省の動向を把握することが重要である。医療機関や各国政府は、医療機器をはじめとする医療関連製品を購入するユーザーであると同時に、介護を含む医療関連サービスの規制や制度の運営も担っている。今年度は大学等の研究機関や各種学会で情報収集や調査を行うとともに、研究を円滑に進めるために、 一般財団法人機械振興協会経済研究所で開催している医療関連の研究会から情報提供を受けることとし、必要に応じて合同研究会を開催する。
本研究では、医療政策が当然としてきた「健康」という概念を再検証し、医療政策の基礎的価値と企業の動向を把握することを目的とする。コロナ禍を経験し、リモート診療やデジタルヘルスを含め医療政策をとりまく環境は急速に変容しつつある。これまでは、医療インフラとしての医療制度、医薬品や医療機器等の医療関連製品をグローバルな規模で製造販売する企業の動向、さらに医療提供を担う医療機関や各国政府、とくに保健省/厚生省の動向について調査を進めてきた。これまで医療政策では、「疾病」に罹患した患者を治すという大枠の価値を大前提としていたものの、これまでの調査から分かったのは、「健康」という概念自体が変容しつつあり、医療政策の目標や対象自体が変容を迫られはじめているということである。また、既存の医療制度、医療提供体制が実は新しい感染症の蔓延に必ずしも十分に対応できないことも明らかになりつつある。今年度は、医療機器メーカーをはじめとする医療関連製品メーカーがイノベーションを実現できるように、近年進化を遂げているデジタルヘルスに注目し、将来の戦略を検討していく上で有用な資料を作成することを目的とする。具体的には、海外の主要な医療政策を司る政府機関の実態や動向について、特にデータ利活用やシェアリングの観点から収集・整理する。本研究では、神奈川県立保健福祉大学ヘルスイノベーション研究科並びに同大学の付属機関であるヘルスイノベーション政策研究所とも連携し、同大との関係が緊密なカリフォルニア大学サンディエゴ校での情報収集や調査を行うとともに、研究を円滑に進めるために東京大学や機械振興協会で開催している医療関連の研究会および医療政策研究会から情報提供を受けることとし、必要に応じて合同研究会を開催する。