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「行動を決めるための数理工学」

3分でわかる数理工学9回_1

3分でわかる数理工学9回_2

高校生の皆さんが一週間後に大学の入学試験を控えているとします。残された時間をどの試験科目の勉強に充てるかについて、計画を立てることにしました。各試験科目の勉強時間をどのように決めれば、合格に近づくでしょうか?

入試の当日になりました。自宅から試験会場まで行く際に、電車とバスを乗り継ぐ必要があるとします。複数の移動経路が考えられる場合、どの経路を選んだらよいでしょうか?  
 
このように最適な行動を決めたいという場面は日々の生活で様々にあります。そのような最適な行動を決める際に、数理工学のアプローチを活用できるのです。

これはどの領域の話か

最適な勉強時間を決めたり、最適な経路を求めるこのような問題は最適化問題と呼ばれています。後に例を挙げますが、こうした問題を数式でうまく表わすことができれば、数学の問題として扱うことができます(これを定式化といいます)。最適化問題を定式化し、問題の解法を示すとともに、問題の性質を明らかにする分野は、最適化理論、あるいは数理計画と呼ばれています。そこでは微積分線形代数を基礎にして議論が展開され、また、実際に問題を解く際にはコンピュータも活用されています。

数式を用いた解説

ここで、冒頭の勉強時間を決める問題を定式化してみましょう。
入試科目は英語、数学、国語の3科目とします。試験までに15時間の勉強時間を確保できるとし、試験科目の合計得点が最大になるように勉強時間の配分を決めることにします。
定式化にあたって、科目ごとに何時間勉強したら何点がとれるかという勉強時間と得点の関係を把握しておく必要があります。
ここでは、勉強時間と得点の関係に
という特徴があると想定し、勉強時間と得点の関係が図2で表される関数で与えられているとします。数式で表現すると、英語・数学・国語の勉強時間を順にs,t,uとして
  3分数理#9_数式1
  3分数理#9_数式2
  3分数理#9_数式3
としました(現実にはこの関数を定めることは容易ではないと思われますが、ここでは関数がわかっているとします)。

勉強時間と得点の関係_図1

勉強時間と得点の関係_図2


図1:各科目の勉強時間と得点の関係

勉強時間と得点の関係_図3

以上の状況をまとめると、最適な勉強時間を決める問題は次の最適化問題として定式化できます。

  3分数理#9_数式4

  3分数理#9_数式5
 

以上のように「最適な行動を決めたい」という問題が定式化されれば、数学の問題として扱うことができるようになります。
最適化問題は社会の中で多く応用されています。企業の生産活動において製品の最適な生産量を決める問題も最適化問題の一種です。これは生産計画問題と呼ばれています。また、株や債券などへの投資の際に投資額の配分を決める問題はポートフォリオ最適化問題と呼ばれています。
このように、数理工学的なアプローチで社会の課題を解決する場面は数多いのです。

3分でわかる数理工学9回_3

3分でわかる数理工学9回_4

参考文献

山中卓教授

著者

山中 卓

1983年茨城県生まれ。高校生のころを振り返ると、数学の分野の中では特に確率に興味をもっていました。サイコロ投げや天気予報などの不確実な事柄を扱うことができることに面白さを感じていたのだと思います。今では金融分野の課題を数理工学の立場から解決することを目指して研究活動を行っています。

※この講座の著作権は著者にあります。無断引用や転載等はお断りいたします。
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