学問の地平から
教員が語る、研究の最前線
第40回 経営学
本学の教員は、教育者であると同時に、第一線で活躍する研究者でもあります。本企画では、多彩な教員陣へのインタビューをもとに、最新の研究と各分野の魅力を紹介していきます。
第40回 経営学経営学部 経営学科 宍戸 拓人 准教授
ビジネスの課題に0距離で向き合う経営学者として
今後の展望
現場で得た学びを教育に反映していきたい
これからもビジネスの現場で役に立つ経営学者でありたいです。それは、外部からアドバイスしたり講演したりするようなポジションではなく、ビジネスパーソンと一緒に苦しみながらビジネスの課題解決に0距離で携わっていく経営学者、という意味です。現在も副業の会社ではそういった働き方をしていますが、それを継続していくとともに、そこで学んだことを教育に反映していくことも大切にしていきたいと考えています。
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ただ、本音を言えば、今後の展望は「分からない」ですね。自分のこれまでを振り返ると一生懸命何かに取り組み、そこから新しい道やチャンスが生まれ、その積み重ねで今があるように思います。今やっていることに一生懸命取り組む中でまったく別の重要なことが見えてきたら、それをやり始めるかもしれませんが、とにかく今は大学での教育と副業を一生懸命やっていきます。
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▲宍戸先生の著書

教育
学生の多様な経験は教育の大きなリソース
経営学では「教科書に書かれていること」と「実践」の間にかなり大きなギャップがあると思っていて、私の授業はそのギャップを埋めるものにしたいと考えています。
 
たとえば、職場での権限委譲については、よく「上司が細かくマネジメントするより、権限委譲をした方がチームのパフォーマンスが上がる」ということが言われています。しかし、自分が現場に立つと人に仕事を任せるのは難しく、つらいものです。また、権限委譲をしたチームは初めに学ぶ時間が必要なので、上司が細かく指示を出すチームと比べてパフォーマンスが上がるまでに時間がかかることも研究で分かっています。「権限委譲するリーダーシップが良いのか」という問いには唯一の答えはありません。そうした答えの分からない問題を学生と話し合いながら考えていくのが私の授業スタイルです。

授業をする中で、学生自身のアルバイトや部活動の“具体的な経験”が活きています。学生の中には、権限委譲が進んでいるスターバックスコーヒーやディズニーランドでアルバイトをしている学生もいれば、野球部でピッチャーだった学生もいます。同じ「権限委譲」というテーマでも、スタバでバイト中の学生は「店のルールの中でどこまで自分流の接客が許されるか」をイメージするし、野球部の学生はコーチと選手の関係について考えるかもしれません。全く違う経験をしてきた学生が同じ問題について議論するのを聞くのは私も新鮮で面白く、多様な経験がとても大きな教育のリソースになっていると感じます。

教室で学生が「経験」を振り返り、経営学者の私がその経験を抽象化して「知恵や知識」に変え、学生は学んだ知恵や知識を実践してまた次の経験をする。そうした経験学習のプロセスを回し、教科書的な理論を「前よりもちょっとだけ使えるもの」にしていくことが私の授業の役割だと考えています。
人となり
おいしいもの探しが息抜きに
教員の仕事と二つの副業で忙しくしていて、じっくり取り組むような趣味をなかなか作れないのですが、おいしいものを食べたり、おいしいお酒を飲んだりするのは大好きです。以前、スペインのバスク地方でおいしいものを食べまくってから、フランスのボルドーでワイナリーツアーをしたことがあって、その旅は最高でしたね。

最近は出張先でその土地のおいしそうなお酒を買って家で楽しんでいます。この間はカナダのスーパーで見知らぬ現地の女性に「絶対おいしいから!」と勧められたクラフトジンを買ったのですが、めちゃくちゃおいしかったです。妻とそのお酒にあうアテを探っていくのも楽しいですね。ほかに、甘いものも好きでホテルのアフタヌーンティーに行ったりもします。都内のホテルは結構行きましたけど、一番気に入っているのはマンダリンオリエンタル東京のアフタヌーンティー。味に隙がなくて、すごくおいしかったです。
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40代になって美容にハマる
実は最近ハマっているのが、美容です。自分で使うのはプチプラのスキンケアばかりですが、化粧水とかフェイスマスクとかめちゃくちゃ詳しいですよ。学生とも「宍戸先生ってイエベっぽいよね」「え、イエベかな?」みたいな話で盛り上がっています(笑)。
 
朝起きて元気な顔じゃないとその日1日コンディションが上がらないタイプなんですが、仕事で徹夜が続いて朝ひどい顔になったことがあって。その時、妻の勧めでスキンケアを使ったらすごく肌つやが良くなったのがハマったきっかけですね。元々オタク気質なのでランキングを調べたり、美容系のSNSや動画を見たりして、かなり詳しくなりました。ただ、学生の方がずっと情報が早いのでいろいろ教えてもらうことも多いです。スキンケアの“研究”に関しては、学生たちの方が上ですね。
―読者へのメッセージ―
ビジネスで解決したい課題に直面した時、私たち学者やコンサルタントに「解決法を教えてもらおう」と思うのではなく、「一緒に考えましょう」という態度を持つことは、とても大切です。真面目な人ほど「先生、教えてください」とおっしゃるのですが、社会の不確実性が高まっている今、私もすぐには答えが分かりません。しかし、その人と話して、現場の様子を思い浮かべながら一緒に考えていくうちに、解決に必要なものが見えてくることがあります。これからのビジネスパーソンには、ぜひ学者や周りの人とフラットに話し、力を合わせて課題解決しようというマインドを持っていただきたいですね。
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取材日:2023年10月