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Vol.29

「幸せは目指したほうがいいが目指さないほうがいい」

ウェルビーイング(幸せ、健康、心と体の良い状態)についてお伝えしてきたこの連載ですが、今回は、「幸せは目指したほうがいいが目指さないほうがいい」ということについて述べましょう。

ウェルビーイングという言葉がメジャーになるにつれ、ウェルビーイングに対する意外な主張や、ウェルビーイングへの批判を耳にする機会が増えてきました。

ハーバードで教鞭をとっていたタル・ベン・シャハーは「幸せは目指さないほうがいい」と言っていますし、書籍『ハッピークラシー』では幸せを目指す学問であるポジティブ心理学が批判されています

いずれも、幸せになること自体への批判ではなく、そのやりすぎへの警鐘というべきでしょう。心の行き過ぎに注意、ということです。

たとえば、自己肯定感・自尊感情は高いほうが幸せですが、高すぎたり不安定だったりすると必ずしも幸せではないことが知られています。外交性も、高いほど幸せですが、高すぎると落ち着きがなくなります。情緒安定性も幸せに寄与しますが、安定しすぎると無表情・無感動・無関心になってしまいます。利他的な人は幸せですが、利他だけを追求しすぎると自己犠牲になって疲れてしまいます。

このように、幸せについての研究結果は、幸せの目指しすぎは要注意であることを教えてくれます。

また、そもそも、「幸せになる」という表現自体が、「今は幸せではない」ことを暗に表しています。今が幸せであれば、幸せになるとは言わず、幸せを維持するという表現になるはずだからです。

幸せの条件はありありなんやっ(ありがとう、ありのままに、なんとかなる、やってみよう)だと前に述べました(第四回)が、どれも、大雑把にいうと高いほど幸せであるものの、高すぎると先ほどの理由により幸せではありません。

また、もっと感謝すべき、もっとありのままの個性を磨くべき、もっとなんとかなるとチャレンジすべき、もっとやってみようと行動すべき、というふうに考えると、負担になってしまいます。

では、どうすればいいのでしょうか?

山登りと同じです。遠い山の頂は把握しつつ、目の前の一歩一歩を目指すべきだと思います。遠い山の頂ばかり見ていると、その遠さに途方に暮れてしまいます。目の前ばかり見ていると、間違ったところに行くかもしれません。幸せも同じです。遠くばかり見ていると辛くなったりやりすぎになったりします。しかし、遠くを見ないと間違ったところに歩んでいくことになりかねません。

つまり、遠くを見るけれども遠くばかり見過ぎないこと。近くを見るけれども近くばかり見過ぎないこと。幸せを、目指しすぎず、目指さなすぎず、です。バランスと、ほどほどですね。あなたは、どんなふうに幸せの道を歩みますか?
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