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Vol.32

「ポジティブ心理学」

7月にポジティブ心理学の国際会議(IPPA (International Positive Psychology Association) World Congress)がバンクーバーで行われました。妻の前野マドカの発表など、私が連名で研究した結果もいくつか発表されていましたし、日本からも20名以上が参加していました。

ポジティブ心理学というのは、もともとうつ病の研究者であったセリグマンが、心のネガティブな状態だけに着目するのではなく、ポジティブな状態にある人がよりポジティブになるにはどうすればいいかを検討すべきだ、という考えのもとで命名した研究分野です。

ポジティブ心理学が目指すものはwell-being(幸せ、健康、心と体の良い状態)やflourishing(繁栄した心の状態)であると明言されていますから、幸福学と非常に親和性の高い分野というべきでしょう。

よく話題になるのは、「では、ネガティブはいけないのか? ポジティブにならなければいけないのか?」という議論です。

皆が間違った方向に進みそうな時に、きちんと耳の痛い辛口の意見を言うことは重要ですし、ネガティブな気持ち(怒り、いらだち、自信の喪失、やる気のなさ)などが生じた時にそれを単に押し殺すのは適切ではないと言われています。ですから、ネガティブな事柄にも一定の効用があると言うべきでしょう。

これに対してポジティブ心理学は答えます。その通り。ポジティブ心理学のポジティブとは、単にポジティブとネガティブの対比としてのポジティブではなく、ネガティブとポジティブの両方を認め、それを包含するようなポジティブである、と言われます。図に描くと以下のようになります。

ポジティブ心理学

ちなみに、ポジティブ心理学に対してはある種の議論があります。歴史をさかのぼって私の考えを説明しましょう。

かつて、心理学は哲学の一分野でした。フロイト、ユング、マズロー、アドラーなどが活躍した時代には、人の心理とは何かを哲学的に考えることが行われていました。20世紀になってコンピュータが出てきてから、アンケートを取ったり実験したりした結果に対して統計解析をするような研究が行われるようになりました。科学的・実証主義的な心理学です。ここでは、哲学・思想は排除され、科学的に再現可能であることが重視されるようになりました。

ところが、ポジティブ心理学は方向性を持っています。ウェルビーイングで繁栄した心の状態こそがよい状態である。こちらを目指すべきである。これに対し、一部の心理学者は反発します。科学的研究は方向性を持つべきではないから、幸せや繁栄を目指すのは科学者ではなく哲学者がやるべきことではないか?

私は工学系出身です。工学とは、科学的に明らかになったものごとを、世の中の役に立てるためにデザインすること目指すという、ある種の方向性を持った分野です。もちろん、医学、看護学、経営学、商学など、実用的な学問分野は他にもありますし、人々のウェルビーイングや繁栄のために貢献する学問分野があってもいいと思っています。いや、あるべきだと思います。みんなが幸せな世界を構築するために。
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